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ヒナ日記

作者 ユーマさん


それは、兄が妹の雛子を呼ぶために、部屋を訪れた時の事だった。
「ヒナー、俺のゲーム知らないかな……って、あれ? いないのか」
部屋の中には雛子の姿はなく、仕方なく兄は部屋を後にしようとして…ふと、机の上に置かれたノートに目をとめた。
「何だろう…『えにっきちょう』。あ、これ絵日記か」
机の上にはノートの他に、二十四色入りの色鉛筆も置かれていた。
ヒナが戻ってこない事を確認すると、兄はついつい好奇心から、雛子の絵日記を広げる。
「なになに…○月×日…」


○月×日 はれ。

きょうは、おにいたまと四葉ちゃんといっしょにデパートに行きました。
ヒナはおにいたまに、レインコートと長ぐつをかってもらったの。
四葉ちゃんも、くつをを買ってもらって、とってもよろこんでたよ。
ヒナ、とってもとっても嬉しかった。
その帰りにね、おにいたまはヒナにプリンをごちそうしてくれたの。
わーい、おにいたまだーい好き。


日付は丁度五日前。
確かにその日は、雛子と四葉を連れて買い物に出かけていた。
「あらあら、雛子ちゃん良かったですわね」
「お兄様ったら…先週の日曜、ヒナ達と出かけてたのね…」
いつの間にか、春歌と咲耶の二人がそれぞれ兄の両隣から、絵日記を覗き込んでいた。
「わわっ! ふ、二人ともいつの間に!」
驚く兄。
「いつの間に…って、ついさっきからですわ、兄君様」
「ヒナの部屋の前を通りかかったら、お兄様がいたんだもの。…うふふ、それよりお兄様、勝手にヒナの日記なんか見ちゃっていいのかしらね〜」
ぬふふふ…と咲耶が含み笑いを漏らす。
「いや、えっと、あの…これはその」
「まぁまぁ、兄君様。褒められた事ではありませんが、私達も少し興味がありますし…ご一緒に読みましょう」
「そうそう、バレなきゃ大丈夫よ、お兄様」
「…仕方ないなぁ。えーと、○月△日…」


○月△日 くもり

今日、おにいたまのおへやにいくと、おにいたまはいなくて、咲耶ちゃんと春歌ちゃんがいました。
ヒナがなにしてるの? ってきくと、二人ともびっくりして、ヒナのほうを見たの。
そのあと、ごにょごにょ…って、ないしょばなしして…それでね、いきなりにこにこ笑ってこう言ったの。
「ヒナ、わたしたちがおにいさまの部屋にいたことは秘密よ。プリンをあげるから、この事はお兄様には黙っていてね」って。
ヒナ、プリンがもらえるから、咲耶ちゃんと春歌ちゃんのことは言わないよっていいました。
えへへ…。今日のおやつはプリンが二つも食べられました。


「…あ、あら、ひ、雛子ちゃんったら何を書いているのかしら…」
「…そ、そうね。私も何のことだか…」
明らかに狼狽する二人。目が泳いでいる。
故人曰く『目は口ほどに物を言う』。
その行動が全てを物語っていた。
「お前達、一体、俺の部屋で何をやっていたんだ…」
「あ、あれはその…四葉ちゃんが…お兄様の着替えをチェキしたいって言うから…その、カメラを…」
「…兄君様の部屋の壁に…ちょっとセットしただけですわ…」
「何だって? 四葉は兎も角、何で咲耶と春歌がそんな事するんだよ?」
「え、えっと…そう、春歌よ。春歌がお兄様の隠し撮り写真が欲しいって言うから仕方なく…」
「さ、咲耶さんっ! 咲耶さんだって、四葉ちゃんに兄君様の着替え隠し撮りVTRを頼んでいたじゃありませんの!」
責任の擦り付け合いをする二人だったが、証言から推察するに二人とも同罪であった。
「…後で、四葉も呼んで詳しい話を聞かせてもらうからな」
咲耶、春歌「「…は〜い」」


○月○日 くもり

今日は、鈴凛ちゃんにめーるのやり方を教えてもらいました。
やり方はわかったけど、何だかめんどくさいの。
鉛筆でそのまま書けたらいいのにな。
でもね、その後に、鈴凛ちゃんがいろいろやってくれて、ピンクのくまさんがおにいたまからのめーるを届けてくれるようになったの。
くまさんすごいんだよー。
それでね、鈴凛ちゃんがヒナにないしょですごい事を教えてくれたの。
何でも、おにいたまに発信機かいうのが付いてて、おにいたまが何処にいるのか、すぐわかるんだって。
それでね、鈴凛ちゃんが言うには、おにいたまは今、レンタルビデオ屋さんにいるんだって。
だから、ヒナ、おにいたまが帰ってきたら、ヒナもビデオ一緒に見たいな―って言いました。そしたらね、おにいたまびっくりして…ヒナには面白くないビデオだからって、見せてくれなかったの。
ぶー。
でもね、後でヒナこっそりとおにいたまのお部屋で、ビデオの題名を見てみたの。
『悶絶個人授業〜女教師は義母〜』
って書いてあったんだけど、何だか漢字が多くてヒナ読めなかった。
明日、衛ちゃんにでもきいてみよっと。


「…まさか、この前、衛が俺の事『不潔だよっ!』って言ったのは…このせい?」
「あ、兄君様…私というものがありながら…」
「うわっ、ま、待てっ、春歌。その右手のギラギラ光るものは何だ!? やめてっ、お願いっ、斬らないでーっ!!」
「ご安心を兄君様…峰打ちですわ! その性根を春歌が叩きなおして差し上げます!!!」
「うっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
その一方で、
「…成程、お兄様は年上系、それも理知的な女性が好み…っと」
咲耶は冷静に分析していた。 


○月□日 晴れ

ヒナは今日、千影ちゃんのお部屋にあそびにいきました。
千影ちゃんの部屋はくらくてちょっと恐いけど、ヒナがいくとね、よく動物さんをよんでくれるの。今日はヒナ、ケロちゃんといっぱい遊んだよ。

「…? ケロちゃん? 千影の奴、ペットなんか飼っていたっけ?」

ケロちゃんは頭が三つもあって、ときどき火をふくの。ガオーッってほえて、まるでライオンさんみたい。

「お、お兄様…。もしかして…ケロちゃんって…」

千影ちゃん、こんどはヒナのために、おくちをひもでしばったオオカミさんをよんでくれるんだって。なまえは、フェンリルって言うんだって。
えへへ、ヒナすっごくたのしみ。

「…フェ、フェンリルって…まさか…じょ、冗談ですわよね? 兄君様」
「そ、そうだな。いくら千影でも…なぁ?」

「「「あははははははははははははは…」」」

何処か寒々しい笑い声が、三人の間に響いていた。


○月○日 くもり
今日ヒナは、学校から帰るとちゅうで、写真のおじさんにあいました。
写真のおじさんは、いつもかくれてヒナの写真をとっているの。
それにね、ヒナにすっごくそっくりなお人形をいつももっていて、聞いてみたら、大事なおともだちなんだって。
ヒナも、ココちゃんとおともだちだから、いっしょだねっていったら、おじさんよろこんでた」

「こ、これって…まさか」
「え、ええ…。ヒナちゃんでしたら、考えられますわね…」

そのおじさんがね、ヒナにおうちにあそびにこないかっていったの。
いっぱいおかしをくれるっていうから、ヒナ行きたくなっちゃったけど、おにいたまに、知らない人に付いていっちゃダメって言われているから、「おにいたまといっしょに行っていい?」ってきいたら、
「おにいたまはもう呼んでいるから大丈夫だよ、ボクはおにいたまのおともだちなんだよ。おにいたまをびっくりさせたいから、内緒にして一人で来てね」って言ったの。
おにいたまって、おじさんのおともだちもいるんだね。
ヒナ、びっくりしちゃった。
明日、おじさんのお家にいくの。
くししし、ヒナがいたらおにいたまびっくりするぞー。


そこで日記は終わっていた。日付は丁度昨日。

「おっ、お兄様、こんな危ない友達がいたの?」
「ちっ違う、断じてそんな奴は知らない!」

「「「…まさか」」」

三人は互いに顔わ合わせると、頷きあい…

「春歌、急いで警察に連絡だっ!」
「解りましたわ!」
「咲耶、鈴凛か千影に知らせてくれ! 鈴凛ならヒナにも発信機を付けているだろうし、それか千影に占ってもらうまでだ!」
「ええ、お兄様!」
「無事で…無事でいてくれよー、ヒナー!」


○月★日 はれ

今日、ヒナは写真のおじさんのお家に遊びに行きました。
おじさんの部屋は、ヒナのお写真でいっぱいだったの。
おじさんはヒナの事がだいすきなんだって。
でもヒナはおにいたまが、だいだいだーい好だから、おじさんの事はだい好きじゃないよってちゃんと言いました。
そうしたらね、おにいたまが来たの。
おじさんはおにいたまを見て、とってもビックリしてたよ。
そのあと、おにいたまとおじさんは、プロレスごっこをして、おにいたまが勝ったの。そしたらね、おじさんがおまわりさんに連れてかれちゃった。
何か、悪い事したのかな?
あとで聞いたら、おじさんは、おにいたまのお友達じゃなかったんだって。
ふーん。
あ、それでね。帰りにおにいたまと咲耶ちゃんと春歌ちゃんが、ヒナにプリンをご馳走してくれたの。
それも、大きなプリンパフェ!
わーい。


END

あとがき
雛子メインのギャグ…のつもりだったんですが、
何だかほのぼのした話になってしまいました(笑)。
またしても、中途半端な作品になってしまいましたけど、
読んでいただけたら、幸いです。
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