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下手くそなちょうちょむすびで二つの糸は結ばれる
愛のリボン、哀のリボン
二つは交わる。結ばれる。いつも、どこか、誰かの手で・・・・・・
ヒナちゃんのリボン
作者 渡り鳥ユウさん
足を踏み出すたびにカサカサと音が鳴る。乾いた落ち葉が絨毯のように敷き詰められていた。そこは、誰も侵してはいけない絶対領域。このルールを決めた人間の言葉を借りれば、しみつ基地。そう呼ばれていた。
もっとも今となっては過去の遺物だ。ここが本当に綺麗だったのは、もうかれこれ2年ほど前のことだから。
(あーあ、おにいたまは今、どこにいるんだろ?)
そんな落ち葉の真ん中にぽっかりとくりぬいたような空き地がある。そこには二つ、ロッキングチェアが置かれていた。
ロッキングチェアに腰掛けた少女は、足をブラブラさせながらため息をついた。
「おにいたま、ヒナ、制服を新しくしたんだよ?」
言葉が風に霧散する。
小学校5年生になった雛子は、さも自慢げに喋り始めた。
「あのね、だから一緒におクツも新しくしたんだよ! 見て、ピッカピカでしょ? ヒナ、明日からこれで登校するんだよ、イイでしょ〜?」
そして、笑う。なるほど良く見れば制服もクツも確かに新品のものだけが放つ輝きを放っている。
でも、でもね・・・・・・。と、雛子は内心で付けたした。
(おにいたまがいないと、ヒナちっとも嬉しくないよ・・・・・・)
一番お祝いして欲しかったのに。最後までこの言葉は口を出ることはかなわなかった。言えば悲しくなるから。直感で禁句〔タブー〕となっていたのだ。
雛子の兄――おにいたまは、高校を卒業すると同時に親と同じ外交官を希望、今は海外留学の真っ最中だ。逢おうと思ってもかなわない相手なのである。社会の勉強で地図帳を開くたびに雛子は憎しみとも、嫉妬ともいえない感情を抱くのだ。今、おにいたまはどこにいるのかな? そう思いながら見る地図帳は、ひどく残酷なものだった。
この場所だってそうだ。最初はおにいたまに喜んで欲しくて、廃棄処分寸前のイスを持ってきたり、自分のお気に入りの物をおいた。そのたびに笑顔で自分を褒めてくれるおにいたまの顔が大好きだから。最初はちっぽけなこの場所も、気が付けば一晩中いても飽きなくなっていた。でも、今は――
(なんだかいるだけで寂しくなっちゃうんだもん・・・・・・)
赤や黄色の木の葉が足下を舞った。秋独特の色の薄い蒼い空が見えた。ロッキングチェアのうす茶色が見えた。
雛子の目には、それらすべてがにじんで見えた。
「・・・・・・」
その場所に背を向けると、雛子はその場所を後にしようとした。
肩まで届くようになった彼女の髪が何度か左右にたなびくと、雛子は絞り出すように言葉を吐いた。
「おにいたま、きっと帰ってくるよね・・・・・・?」
☆ ★ ☆
季節は巡り冬になった。この街でも既に何度か雪が見られている。昨日も雪が降ったため、屋根の上や道路の脇には白い固まりが積もっていた。それをわざと踏むかのように道の端を長靴で歩く少女、ベージュのコートに白い手袋をした雛子だ。頭には可愛らしい毛糸の帽子をかぶっている。
(これをかき氷にしたら、お腹いっぱいになるかな?)
けれども泥で汚れた雪は、とても食べられそうにない。雛子はガッカリして、肩を落とした。
足の裏の雪独特の感触を味わいながら、雛子は今日も"しみつ基地"に向かっていた。
公園の一番奥にある林を突っ切って、そこを抜けたらでる海に面した街道を進んでいくと大きな一本の木にぶつかる。そこの死角になっている茂みのさらに先に"しみつ基地"はある。もっとも基地とは名ばかりで唯の空き地ではあるのだが。
「ぷはぁ〜!」
茂みの間の抜け道は、もう既に雛子の体には小さくなっていた。この季節は落ち葉の量が多いので水の中に潜るような格好になってしまうのだ。抜け穴からでた雛子の髪の毛には落ち葉と、それに混じった雪が絡みついていた。
雛子も想像したとおり、しみつ基地にはやはり雪が残っていた。もっとも想像していた以上の量の多さに雛子は本来の目的を忘れそうになった。
(・・・・・・今日は遊びに来たんじゃなくて、ここの雪かきをしに来たんだから・・・・・・)
持っている鞄から小さなピンク色のシャベルを取り出すと、真ん中にある空き地の雪をどけていく。・・・・・・しかし――雛子はやっぱり雛子だった。
「うぅ〜・・・・・・やっぱりダメぇ♪」
かけ声とともに雪の中ではしゃぎ回る。学校も道路も、雛子の知っている場所でここ以外の雪はほとんど自分以外の誰かが既に手を付けたあとなのだ。だから幼さ故の独占欲がここにきて爆発したのだ。雛子は実のところここに来た時点で駆け回りたくてうずいていた。誰の足跡もない真っ白な雪、自分が焦がれたものが目の前にあるのだ、ガマンしろと言う方が無理である。
しみつ基地を囲うように立っている裸の木々には、木の枝に引っ掛かって雪が積もり、今は日の光を浴びて眩しく輝いていた。地面には絨毯のように敷き詰められたフカフカの雪。その光景はまさに白銀世界と形容できるが、雛子はそんな難しいことは考えていない。ただ純粋に感動していた。
(きれーい。とおってもキレーイ!)
地面に積もった雪という雪すべてに足跡を付け終えると、雛子は雪だるまを作り始めた。小さな雪玉を一生懸命固めて、転がしてゆく。雪玉はものの数分も経たない内に雛子の頭くらいの大きさになった。同じようにしてもう一つ雪玉を作ると、何度も叩いて固めてから先ほどの少々小振りな雪玉を乗せた。雪だるまは雛子の胸の辺りの大きさになった。
「クシシシ・・・・・・。ヒナ、一人で雪だるま、で〜きちゃったぁ」
雪だるまの頭を撫でながら雛子は言う。その表情は満足げだ。
「そうだ! お顔をつけてあげなくちゃダメだよね! う〜ん、どんなお顔がイイかなぁ?」
腕組みをしながら考え込むが、雛子がうめいたのは一瞬だった。
「うん、おにいたまのお顔にしよっとっ!」
単純な発想だが、しかし彼女にはこれ以外のものは考えつかなかった。ココで一番逢いたい人は誰ですかと彼女に聞けば間違いなく、おにいたまと答えるだろう。彼女は知らないうちに彼の姿を追い求めていたのかもしれない。
雛子は早速周囲にある石や枯れ枝を探し始めた。しかし何かを見つけるたびに、これはおにいたまのじゃない、と言っては投げ捨てた。そして気が付けば一時間経ったのにも関わらず雪だるま――もといおにいたまの顔の材料は一つも集まっていなかった。雛子は泣きそうになりながらも必死に探したが、どんなに時間が経っても結果は変わらなかった。
雛子はついに飽きて――というよりも疲れて――しまい、イスに座り込んでしまっていた。
(もう、疲れちゃったよ・・・・・・)
雛子は、イスに座って何分と経たない内に安らかに寝息を立てていた。明日は終業式のため今日は早く終わっているので、時間は未だ十一時を回ったくらいだろう。日が徐々に高くなり、雛子のいる空き地の周りを囲む林を縫って光が進入し始める。それはまるで彼女だけを包むかのように、優しくその恩恵を注いでいた。雪の中に出来たひだまりの中で少女は夢を見る。
☆ ★ ☆
遠い日。過去のあの日。忘れられないあの日・・・・・・。
季節は冬、今日と同じように寒い日だったが、周りに雪はない。そして一番大きな変化は、目の前にどんなに焦がれても逢うことの出来ない人がいた。
「どうしたの、雛子? そんな顔して」
目の前のその人は優しく笑った。
「あ、あれれ? ヒナ、どうしてこんなところにいるの?」
「どうしてって・・・・・・雛子が僕をここに連れてきたんだろ」
(・・・・・・なんでおにいたまがここにいるの?)
驚きはしかし彼女の中でのもので、顔は笑っていた。
「まったくしょうがないな」
そして兄は声を出して笑った。
雛子はといえばわけが分からずに周りを見回した。目の前の兄は別れたときと変わらぬままの姿だ。自分が最後に別れたあの時と同じ。そして自分は、兄と別れたときの学年の制服である黄色のフリルの付いた制服だった。学年ならではの黄色のふちの広がった帽子もしっかりと手に持っていた。
雛子はそこで初めて理解した。ここは"あの日"なのだと・・・・・・。
「ねえ、おにいたまぁ?」
「なんだい?」
「えへへぇ〜」
雛子はそれでもいいと思った。
彼女は兄に抱きついた。兄の方は一瞬戸惑いが色濃く顔に出たが、しかしすぐに彼女を受け入れ、頭を撫でてやった。雛子はまるでじゃれる猫のように、何とも気持ちよさそうな顔をしていた。
「雛子、僕に話があるんじゃなかったのかい?」
頭を撫でる手を止めることなく、兄は優しい声で問いかける。
雛子はその言葉で体が強ばった。この先の言葉は先を知る雛子にとってはあまりにも残酷な言葉だった。でも、言わないわけにはいかなかった。その残酷な言葉は、同時に唯一の希望でもあり、彼女の夢だったからだ。雛子は兄の手が止まると同時に、話し始めた。
「おにいたま、明日ガイコクに行っちゃうんだよね?」
「・・・・・・うん」
「ヒナ、おにいたまがいなくなっちゃったら、寂しくて涙が出ちゃうよぉ」
「泣かないでくれよ、雛子。おにいたまを困らせないでくれ」
「くすっくすっ・・・・・・お、おにいたま、ヒナ、泣かないよ」
言葉とは裏腹に目尻には涙が浮かんでいた。抑えられない感情は、時にこういった姿で彼女の頬を濡らすことが今でもある。
「でも、でもね・・・・・・う、うわぁ〜〜ん!」
結局雛子は堪えることが出来なかった。滂沱たる涙が彼女の頬を濡らす。
おにいたまに迷惑を掛けちゃダメよ――妹たちで決めたその約束は結果として彼女を戒めるものとなった。最年少の妹である彼女はそんな器用なことが出来るはずもなく、兄への想いをため込みパンク状態になりかけていたのだった。
でも、ここなら誰も来ない。・・・・・・そう思った瞬間、彼女の中の何かがはずれた。胸の中で泣きじゃくる雛子を兄はなにもせずに泣かせてやっていた。
「雛子」
「ぐずっ・・・・・・な、なに? おにいたま・・・・・・?」
「それじゃあおにいたまと約束しようか」
涙も拭わずに雛子は首を傾げた。
「僕はなるべく早く帰ってくる。その時は一番最初に雛子に会いに行く。・・・・・・約束する」
兄のその真摯な瞳の迫力に、雛子はドキッとした。喉から心臓が飛び出るとまではいかないものの、バクバクといつもよりはるかに大きな音が胸から聞こえる。
「だから、指切りしよう」
「・・・・・・」
「雛子は僕のことを信用してくれないのかい?」
黙って首を横に振った。そして雛子と兄はこの場所で約束を交わした。
『ゆびきりげんまん、嘘ついたらハリ千本の〜ます!』
鍵状にした小指と小指を絡ませてする約束。そんな子どもっぽい約束でも、雛子にとってはとても重要な意味を持つものだった。もっとも兄の存在自体の方が重要で約束はさほど重要でもなかったのかも知れないが。それでも雛子は嬉しいことだけは確かだった。ゆびきった、の声とともに指と指とを離したときには、雛子の顔はまたほころんでいた。
「おにいたま、約束だからね!」
「ああ、分かってるよ」
目の前の兄は笑っていた。雛子は少しだけ不安になった。
「ゼッタイゼッタイ、ホントのホントだからね?」
「うん、分かってるよ」
「ねえ、おにいたま、なんで笑ってるの?」
「さあ? どうしてかな?」
雛子には、兄のこの笑いがなんだかふざけているように感じた。なんだかあれだけではもの足らない、そんな気がしてならない。
「もぉ、おにいたま! そんなに笑ってばっかりいないでよぉ。・・・・・・じゃあおにいたま、もう一つ約束して!」
「フフッ、いいよ。今度はどんなことだい?」
「あのねあのね・・・・・・ヒナとおそろいにするの!」
おそろい、という耳慣れない言葉で兄は首を傾げた。
雛子は自慢げに笑うと、兄にその言葉の真意を告げた。
「ヒナとおそろいの髪型にするのーー!!」
兄はその言葉を聞いても笑っていたが、ぎこちない、苦笑ともいうべき笑いだった。結局兄はその約束を飲まざるをえなかった。
冬の寒空に再び指切りげんまんの声が響く。その声はどこまでも高い空にも届きそうだった。
☆ ★ ☆
「むにゃむにゃ・・・・・・むにゅぅ〜」
寝言とも言えないような音が口から零れていた。愛らしい寝顔、その瞳が突然パッと開く。そして何度かまばたきして、今の状況がようやく理解できたようだ。
「ユメ・・・・・・だったの?」
雛子がぐるりと周りを見回すと、自分の足跡が付いた雪が広がっていた。ちょうど日が一番高くなっているので、雪は所々でいくつも小さな輝きを放っていた。風は先ほどよりも幾分か温かくなっていた。
雛子は、もう呆然とするしかなかった。春の蜃気楼のような、一瞬だけの白昼夢。目の前の現実とのギャップが彼女の中で喪失感へと変わるのにそう時間は掛からなかった。
「・・・・・・」
一人の恐怖を雛子はこの時初めて知った。孤独。彼女の語彙にはその言葉はないものの彼女が知ってしまったその気持ちはそれに他ならない。
そうだ。そういえばそうなんだ。この場所の、さっきの雪だるまを作るときだってそうだ。"おにいたまの部品"一つとしてみつけらなかったではないか。
――つまりここにはもうおにいたまの姿は・・・・・・ない。
自分の中で一番残酷な答えを、雛子は出してしまった。そしてイヤイヤと力一杯首を振る。
「いやいや! ヒナそんなの嫌だもん!!」
でも彼女はもう限界だった。
雛子は何を思ったか、先ほど自分で投げ捨てた木の枝を二つほど拾い直すと雪だるまの頭に突き立てた。雪だるまの表情は当然、ない。そして雛子は自分の頭を結わえてある赤いリボンをはずした。髪をほどくと彼女の髪が意外に長いことが分かる、うなじくらいまで栗色の髪の毛が被さる。
「おにいたま、約束だからね」
言葉と一緒になんの変哲もない木の棒にリボンが結ばれる。雛子は、笑っていた。
「――・・・・・・バイバイ、おにいたま」
雛子は雪だるまに一礼すると"しみつ基地"をあとにした。それが彼女なりの過去との決別、新しい始まりなのだろうか?
☆ ★ ☆
翌日も雛子はしみつ基地に向かっていた。まだ捨てたくなかったのだ、その想い出を。
気候は相変わらずで昨日と同じように寒かった。それこそ雪が降っていても不思議はないくらいだった。前から積もっていた雪のほとんどがそのままの形で残っていた。
しみつ基地も同じように、まだ雪が残っていた。もっとも一部溶けだした雪が再び固まって、雪の上にはうすい氷が張っていた。歩くたびにバリバリと氷の砕ける音がするが、雛子はそんなことに頓着していない様子だった。
「ありり? ・・・・・・ない」
昨日と何ら変わることの無いはずのしみつ基地の光景が変わっていた。
「リボンがない」
なぜか、雪だるまはその形のまま残っているにもかかわらず、木の棒に結ばれたリボンだけが無くなっているのだ。内心で大いに焦る雛子だった。だって、だってあれはおにいたまとの約束のリボンなのに・・・・・・! 彼女は声を出すのも忘れて必死に探した。しかしありとあらゆる場所を探したものの、リボンはでてこなかった。
そのうちに探していない場所が一箇所だけになってしまった。それはしみつ基地を囲んでいる林の下に広がっている茂みだ。背の高い木達のせいで茂みは薄暗く、黒っぽい色に染まっていた。それでも夏の日の高い頃は、新鮮な緑色にはなるのだが。
残った場所はここしかない。・・・・・・そう思った瞬間、雛子の目の前で茂みがガサガサとゆれた。まるでそれ自体が生物でもあるかのように、風では絶対にあり得ないよう揺れ方をしたのだ。
「だ、誰?」
雛子に恐怖はなかった。それどころかもしかしたら、あの、リボンが見つかるかと思って心躍り出さんばかりだった。しかし茂みからでてきたのは意外な自分だった。
「み、見つかっちゃったデスか!?」
同じような二つ結び。ケープの付いた派手な服、胸元にも同じように派手なイギリス国旗をもしたガラのネクタイ。手に持った大きな虫眼鏡も彼女の特徴の一つだ。諦めて観念したような表情で茂みからでてきたのは、雛子も良く知ってる人だった。
「四葉ちゃん?」
「ハーイ、雛子ちゃん」
明るい声で返してくる。
「ど、どうしてこんなところにいるの?」
「うぅ〜んとデスね、たまには街の外をチェキするのもイイかな〜と思ってたらこんな所にでたデスよ」
それが当然といわんばかりに四葉は言う。
「そういう雛子ちゃんは何してたデスか?」
今度は逆に四葉が聞き返してきた。雛子はちょっとためらいはしたものの、ことの顛末を四葉に話した。
話を聞き終わった四葉はちょっと興奮している風に、雛子の目には映った。同時に自分のことを小馬鹿にしてるようにも感じたが口にはしなかった。今はリボンを見つけることがイチバンだ。雛子の優先順位は決まっている。
「つまり雛子ちゃんはそのリボンを探してるわけですね?」
「うん」
「・・・・・・なるほどなるほど。つまりこれは事件というわけですね」
「? 事件って?」
「これはきっと名探偵四葉に対する挑戦ね!」
抑えきれないといった感じで声のトーンが膨れあがる。雛子の肩をぽんと叩くと、四葉は軽くウインクした。
「まっかせなさいっ! そのリボンは四葉がチェキしちゃうんだからっ!」
かくて推理が始まった。四葉は持ち前のリボンのまかれた虫眼鏡を片手に、地面をゆっくりと見まわしてゆく。雛子は四葉に期待と不安の双方を抱きつつ、後ろについて回った。
「あ、これは!」
「何かあったの?」
「お菓子のゴミです! え〜っと、クマちゃんグミ? ・・・・・・これは重要な手がかりに――」
「それは前にヒナが食べたおやつ・・・・・・」
「・・・・・・にはならないですね。あ、アハハハ」
そんな的はずれな推理劇は夕方まで続いた。
その時間にもなると二人とも疲れてしまって、向かい合ったロッキングチェアに座っていた。二人とも口を開かずに座ったままだったが、四葉のため息が会話の始まりになった。
「腰が・・・・・・痛い、デス」
「リボン、見つからなかったね」
「・・・・・・」
四葉は少し悲しそうな顔をした、が・・・・・・
「あーーーーーーー!!! 思い出したデス!」
雛子は四葉の大声――迫力――に気圧されて、後ろにコケそうになった。しどろもどろになりながら、雛子は四葉にどうしたの? と訊ねた。四葉は一人で何かブツブツといっているだけだったが、突然雛子の方を向くととびっきりの笑顔で答えた。
「わかったデス、雛子ちゃん」
「わかったって・・・・・・?」
「リボンのことデスよ。四葉、ついにわかちゃった!」
「――ホント?」
「間違いないデス!」
強い口調で言葉をぶつける。
「そのリボンはきっと兄チャマが持っていったに違いないデス!」
「・・・・・・!」
雛子の顔が驚きと喜びで歪む。
「おにいたまが?」
「オフコース! 四葉、この前ヒミツ情報を手に入れたのよ」
「ヒミツ・・・・・・情報?」
「そうデス。なんでも兄チャマが近々帰ってくるという情報を!!」
雛子の顔が四葉につられて笑顔になる。四葉は咳払いを一つすると、推理を始めた。
「きっと兄チャマは雛子ちゃんとの約束を守るためにそのリボンを持っていったんですよ。そして今頃はきっと雛子ちゃんと同じ髪型にしているに間違いなしデス!」
四葉はまた雛子の肩を叩いてやる。その時の二人は姉妹そのものだった。
「だから雛子ちゃんは兄チャマといつでもあえるように笑顔でいなくちゃね?」
雛子は深呼吸をすると、深々と頷いた。顔を上げれば、眩しいばかりの雛子の笑顔があった。
「うん、ありがとう四葉ちゃん!」
「そ、そんなことないですよぉ。四葉は名探偵なんですからこんなのイージーよ」
「くしししし・・・・・・。おにいたま、帰ってくるんだぁ」
夢心地といった感じで雛子は中空を仰いだ。真っ赤な太陽が今まさに落ちようとしていた。それをみて雛子は一瞬アッと声を上げる。
「ヒナ、そろそろ帰らなきゃ叱られちゃう。四葉ちゃん、今日はありがと、ばいば〜い!」
「うん。バイバ〜イ!」
雛子は颯爽と身を翻すと、再び茂みの奥へと消えていった。四葉は雛子がいなくなってから数分間、なぜか彼女の背を見送ることもなく視線を宙に躍らせていた。なにかを思索しているように見えなくもなかったが、どこか焦点の合わない瞳からはとても悲しそうな印象が見て取れた。いつもの彼女ならこんな表情は絶対にしないだろう。
「兄チャマ、四葉はこれでよかったのカナ?」
四葉は唐突に、ため息混じりにそんな独り言を呟いた。視線はその時初めてしっかりとあわさった。先にあったのは四葉の虫眼鏡に結ばれているリボンだった。
「四葉、雛子ちゃんに嘘付いちゃった。あのリボンを持っていったのは兄チャマじゃなくて、四葉なんだもん」
四葉の言葉の先にあるのは雛子が作った雪だるまがあった。四葉は昨日からこの場所を知っていて、そして見ていたのだ。雛子がこの雪だるまに兄の姿をかさねていたことを。彼女は彼女なりに姉として雛子のことを心配していたのでこんなことをしてしまったのだ。リボンを隠す場所が無くて虫眼鏡に結んだのは失敗だったが、悲しみに沈んでいた雛子はそこまで目がいってなかったのが救いだった。
「兄チャマ・・・・・・」
四葉は虫眼鏡からリボンをほどくと胸にそっと抱いた。
「ホントにはやく帰ってきてね・・・・・・その時まで四葉、このリボンを持ってるから・・・・・・」
四葉の胸に抱かれたリボンは、雛子と四葉の心のようなもなのかも知れない。四葉と雛子の心のリボンは、少し弱々しく、しかししっかりと結ばれている。今はまだ彼女の腕の中で護られていなければならないほどだが、いつかはもっと強く結びつくだろう。二人の絆は・・・・・・。
終わり
あとがき
突然ですがおはがきのコーナーです。司会&進行は私、渡り鳥ユウがお送りします。はじめましての人は初めまして。知ってる人はこんにちは。久しぶりに作品上げたのはご愛敬(爆 ・・・・・・鈍筆ですから。
え〜っと突然ですが今日のおたよりです。ペンネーム、怪盗クローバーさんからです。
「こんにちは、クローバーデス! さて君はあのカワイイ四葉ちゃんをなめているのですか? このお話は四葉ちゃんの出番が全然ないじゃないデスか!!? そんなことじゃ四葉ちゃんが悲しむデスよ、いいんですか!」
だ、そうですが・・・・・・作者のご都合主義なのでもう無理(爆 確かに自分は四葉ちゃん好きですよ。だからこの話は四葉にイチバン美味しいところをあげたんですよ。それをあろう事か出番が少ないなどと・・・・・・四葉ちゃんは自分の愛がわからないのですか!!?(笑
『失礼するデス!!』
うぉ! ってなんだ、四葉ちゃんか・・・・・・。
『チガウです、クローバーです!!』
まあ、そういうことにしましょうか。で、今日は何のようです?
『この話はなんかプロットの話とチガクないですか?』
以上であとがきを終了します。おつきあいいただきましてありがとうございました〜
『ちょ、ちょっとまつです! 最初は四葉が主人公のチェキチェキ推理日記を書くとか言ってなかったですか?』
四葉チェキチェキ江戸っ子日記なら書く気はあったが・・・・・・推理日記は書く予定無かったぞ(笑
『そ、そうだったんですか。ガッカリです・・・・・・』
江戸っ子日記は書きたかったんだよなぁ、四葉が「チェキチェキの江戸っ子デス!」と言うだけ小説(ニヤソ
『そんなのには四葉ちゃんでたくないと思いマス・・・・・・』
まあ、ネタばらしもすんだところで次回もお楽しみに〜♪ ・・・・・・してくれたら嬉しいです。
『チェキようなら〜っ』
しかし、お兄ちゃんがでてこないシスプリ小説って珍しくない?
『チェキ〜、そうかもしれません』
まあ、イイか。所詮はご都合主義なのさ(爆
『クローバーは兄チャマを探す旅に出るデスよ!!』
いってらっしゃい。
『だから四葉ちゃん主人公の「兄チャマチェキ日記」を書いてください!』
無理です(即答
ぐしゃ!! どごっ!! ずがっ!! めぎゃあ!!!
『あ、マイクはいりっぱなしだったデス!!』
渡り鳥ユウさんへの感想はこちら
hirano-m@viola.ocn.ne.jp
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