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住宅街を木枯らしが吹き抜ける。
日射しはあるものの、それなりに冷える静かな初冬の午後。
そんな中を、俺と亞里亞は隣り合って歩いていた。
スタ、スタ、スタ、スタ
テトテトテトテトテトテトテトテト
182センチの俺と139センチの亞里亞じゃ当然歩幅にも差がある。
ゆっくりと歩いてはいるんだが、それでもやっぱり俺の一歩は亞里亞の二歩くらいになっちまう。
鞠絵程じゃないにしろ、こいつも身体が丈夫ってワケじゃないからな。無理はさせたくないが・・・
「大丈夫か?」
「はい、平気です。兄や、ゆっくり歩いてくれてますから」
ちょっと前までなら、俺が聞くより早く「くすん・・・兄や、早いです」などと言うてベソかいてるハズだ。・・・って、ちょい待ち。
誰だ? 今のセリフで卑猥なコト考えたヤツわ? 俺が某家の長男だったら滅殺してやってるトコだぞ。以後気を付けろ。
とにかく、亞里亞が進んで努力しているのを邪魔する必要もあるまいて。
自分が言い出したコトを、自分が精一杯頑張るのは当たり前。けど、実際にそれを実行できる人間ってのは意外に少ない。
亞里亞も初めて逢った頃にはとにかく受け身で、自発的な行動なんざ泣くコトだけなんじゃないのかと思ったりもした。
でも、最近はよく笑うようになったし、学校でも友達ができたらしい。
相変わらず口数は少ないものの、そのコトを一生懸命俺に伝えてくれた亞里亞はとても嬉しそうだった。
「・・・・・・?」
ふと思考の海から浮かび上がると、腕に感じる誰かの視線。
見ると、亞里亞が物欲しげにコートのポケットに突っ込まれた俺の手に向けられていた。
今回は手袋を持って来なかったんで、外にいる間はずっとポケットに入れっぱなしだったんだが・・・
まぁ、頑張ってるご褒美ってコトでいいか。
「亞里亞、手、出してみ」
「? はい・・・・・・あ」
差し出されたモコモコした毛むくじゃらの手袋を握ると、亞里亞は驚いたような、嬉しそうな、それでいて困ったような顔をした。
「イヤか?」
「イヤじゃないです・・・でも・・・これだと兄やのおてて、冷えちゃいます」
なるほど、それで言わなかったのか。
取るに足らない、ちょっとしたコトかもしれない。だけど、それでも嬉しく感じる自分がいる。
「大丈夫だよ」
普段から目つきが悪いだの愛想がないだの言われている俺の事だ、上手くできたかどうかは分からないが、
できる限りの笑顔を亞里亞に向けた。
「亞里亞のとっても暖かい気持ちをもらったからな」
「??? 亞里亞、兄やに何かあげたの・・・?」
よく分からない。そんな感じで小首を傾げて俺を見上げる亞里亞。
まったく、どうして俺の妹達はこう何をやっても様になるかね。これじゃ全然妹離れできないじゃねーか。
「亞里亞、この手はな、俺が亞里亞と手を繋ぎたいから繋いでるの。亞里亞は、俺に手、繋がせてくれないのか?」
「そんなコトないです・・・でも・・・あ、そうです!」
パッと顔を輝かせて、亞里亞は手を放すといそいそと手袋を外してしまった。
そして、白くて華奢な手が直接俺の手に絡まる。
「亞里亞?」
「こうすれば、兄やのおててが冷えても、亞里亞が暖めてあげられます♪」
自分の思いつきが嬉しいのか、亞里亞の声はとても弾んでいて。
そんな彼女の兄やとしては、
(け、健気だ、健気すぎるぞ亞里亞よーーーーっ!!)
などと心の中で漢泣きしながら絶叫しつつ転がりまくるしかなかったりするのだった。
亞里亞誕生日記念SS
およげタイヤキくん
作・U9さん
事の始まりは、かの名曲であった。
『まーいーにーちーまーいーにーちーぼくらぁてっぱんのぉー』
と、アニメーションに合わせてみょーに間延びした歌詞がテレビから流れてくる。
これだけでも充分に著作権問題がマズイだろうから、残りはカットだ。つーかこれで何の曲か分からン奴はいないだろ、多分。
ちなみに某幼児向け朝の教育テレビだ。
これに出てくる赤いき○ねと緑のた○き・・・・・・もとい、ガチ○ピンとム○クが最近の亞里亞のお気に入りらしい。
閑話休題。
「兄や、たいやき・・・って、何ですか?」
・・・・・・実を言うと、俺もよく知らん。いや、勿論あんこの詰まった鯛型の食い物だとゆー事は知っているが、その程度だ。
何せ食ったコトがないからな。
それを伝えると、亞里亞は「そうですか・・・」と少々落胆してしまった。
今までの質問には事細かに答えていたから、『兄やは何でも知っている』と思われていたようだ。
少々心苦しいが、まさか嘘を教えるワケにもいかん。亞里亞はヒナと並んで純真だからな・・・。
そーいえば、そのせいで一時期、咲耶や鈴凛あたりが色々と妖しげな知識を吹き込んだコトもあった。
が、「その確認の為にお前らに逢いに行く代わりに亞里亞んトコ行ってこよ」と言ったら途端に自制するよーになった。
現金なヤツらだ。何? 自分の妹だろう? 離れて暮らしてるのに人格形成にまで責任持てるか。
閑話休題再び。
「ん? そーいや、来る途中にあった公園にたいやき屋がいたような・・・」
「・・・たいやきさん、公園にいるんですか?」
どーやら歌のせいでたいやきは一人歩きするモノだと思うておられるようだナ。
微笑ましくもあるが、兄やとしてはその純粋さはチョッチ心配だぞ。
「違う違う。たいやきを作ってるおじさんが公園にいたんだよ」
それを聞いて亞里亞の目に期待の色が宿る・・・が、俺はそれ以上は何も言わない。
咲耶や四葉みたいになられても困るが、亞里亞はもうちょっと自主性を養ったほうがいいと思ったからだ。
俺が何も言わないので、亞里亞はちょっと残念そうな顔をして、しばらく『もぢもぢ』としていたが
(この仕草も見たかったからこうしたとゆーのは秘密だ)、やがて俺を見上げると、
「兄や、亞里亞、たいやきさん見てみたいです。・・・・・・一緒に、おでかけしてくれますか?」
不安4割、期待6割ってトコかな? 勿論俺が拒否するハズもなく、
「おやつの時間になったら行ってみような」
頭をなでなでしてやって、愛妹のとびっきりの笑顔を堪能させてもらった。
・
・
・
と、まぁそんな会話が朝にあったんだ。で、現在時間は午後3時ちょっと前。
俺と亞里亞は仲良く手を繋いで公園への道をノンビリと歩いていた。
高級住宅街だからってワケじゃないだろうが、出歩いている人は殆どいない。
たまの休日だしな。家でゆっくりするか、そうでなきゃどこかに出掛けたくなるのが人情ってモンだろ。
亞里亞の手の温もりを感じながら、そんなコトを考えていると、公園の入り口が見えてきた。
この公園、亞里亞の住んでいる住宅街の真ん中にあり、その名もズバリ「中央公園」だ。
特筆すべきは植えられている木々と草花のバラエティだろう。なんか『これでもか!』って程色々な種類があるんだ。
グリーンハウスまであって、ちゃちな植物園なんぞ目じゃないぜってなモンだ。花穂が見たら狂喜乱舞するだろうな。
三度閑話休題。
「お、いたいた」
入ってちょっと行った所にある開けた場所に、屋台と「鯛焼き」の旗を見つけてちょっと安堵した。
いなかったら亞里亞が泣き出すのはほぼ確定事項だ。泣き癖があるのは分かっていても、わざわざ泣き顔なんか見たくないしな。
それはそれとして、屋台の主は50代も終わろうかって感じの好々爺然としたおっさんだった。
俺と目が合うと、人の良い笑顔を浮かべて目礼したので、俺も返礼する。
そこで思い浮かんだ事が一つ。
「亞里亞、お願いがあるんだけど、聞いてくれるかい?」
「・・・? 何ですか?」
「おつかいを頼みたいんだ。俺はここで待ってるから、亞里亞は一人でたいやきを買ってきてごらん」
「えっ・・・亞里亞一人で、ですか・・・?」
途端に不安に潤む瞳。
・・・・・・何かスゲー罪悪感を感じるが、愛しい妹の自立の為に俺はあえて鬼となろう!
・・・・・・たかだか10メートルそこら先でたいやき買わせてくるのにそこまで気合い入れる必要があんのか、
などとゆーツッコミはノーサンキューだ。
「買ってきたら、向こうのベンチで一緒に食べような?」
財布から千円札を一枚出して亞里亞に握らせ、ほら、と軽く肩を押した。
もう一度不安な顔を俺に向けたものの、諦めたのか腹を括ったのか、亞里亞はいかにもおっかなびっくりといった風情で
屋台へと進んでいった。
・・・・・・待つこと暫し。
紙袋を両手で持ち、おっさんにペコリとお辞儀して、亞里亞は行きとは対照的に駆け足で戻ってきた。
テテテテテテテテテ・・・・・・
ふっ、駆け足の音もきゅーとだぞ亞里亞。
「兄や、亞里亞、お買い物できました!」
ニコニコと天使の笑顔を浮かべながら、亞里亞は紙袋を手渡してくれた。
・・・? 思ったより重いぞ、コレ。一個300円て書いてあるから、3つしかない筈だが・・・?
そう思って中を覗いてみると、案の定5つのたいやきがいい匂いを漂わせていた。
屋台のおっさんを見ると、相変わらずの笑顔にウインク一つ。結構サマになってる。
俺はウインクできる程器用じゃないんで、軽く頭を下げて礼とした。
・
・
・
「じゃ、ここで食べるか」
「はい♪」
屋台から少し離れた場所にあるベンチに腰を下ろす。
こーいったモノは冷める前に食すのが一番だからな。多少の寒さには目を瞑ろう。
「・・・くちゅん!」
・・・・・・と、思ったのだが、亞里亞はちょっと寒そうだな。
とは言え、家まで持って帰ったら途中で冷めちまうし、電子レンジなど邪道の極みだし・・・
おおっ、そーだ!
ぐっどあいであを閃いた俺は、さっそく実行に移った。
具体的には、まずコートのボタンを外して前を開ける。
で、次は、
「兄や、どうしたんですか・・・?」
「亞里亞、もうちょいこっち来い」
「はい♪ ・・・・・・きゃ!?」
亞里亞を持ち上げて、膝の上に座らせる。でもって亞里亞の前でコートのボタンを閉めて作業完了、っと。
関係ないがこのコート、友人から譲ってもらった英国空軍御用達だ。なんでも祖父さんが大戦中に手に入れた一品らしい。
出所の真偽はともかく、防寒性は本物である。ついでに、俺にはちょっと大きいので亞里亞くらいなら楽々内側に納まるのだ。
「兄や・・・・・・?」
「こうすれば、寒くないだろ?」
「はい・・・兄や、とっても暖かいです
」
上半身を捻り、俺の胸にしがみつく亞里亞。
厚手の冬服に遮られて直の感触は味わえないが、それでも亞里亞に『ぎゅっ』と抱き付かれているのは事実であって。
「そっか、亞里亞も暖かいぞー」
なーんて言いながら両手をコートの前に回して自分も亞里亞を抱き締めたり。
亞里亞のあまりの可愛さに思わず我を忘れてイチャイチャしてしまいそうになった俺だったが、視界の隅に入った紙袋に、
当初の目的を思い出した。
「さて、と。じゃぁ亞里亞が買ってきてくれたたいやきを頂くとしますか」
ガサゴソと紙袋を漁って、たいやき二つを取り出す。
「中身は熱いからな、慌てて食べたらダメだぞ?」
「はい♪」
「んじゃ、いただきます」
「いただきます♪」
はむっ、っと頭から食べ始める亞里亞。
「わぁ、とっても甘くておいしいです
」
甘い物食べてる時の亞里亞ってホント幸せそうだよなぁ。見てると何だかこっちも気分が良くなってくる。
どれ、俺も一口。
ぱく。
ん、こいつは美味い。比較対照はないが、あのおっさんかなりの腕前だ。しかもこれ、尻尾の先まであんこが詰まってるし。
等と俺が感心している間に、亞里亞はさっさと一つ目のたいやきを食べてしまっていた。
見た目通り小食な亞里亞だが、何故か甘い物はたくさん食べても大丈夫だ。亞里亞に限らず、妹全員がそうなのだから
女体とは神秘に溢れている。
コートの中からの催促の視線に、俺は苦笑しながら次のたいやきを紙袋から取り出した。
・
・
・
で、結局5つのたいやきの内、3つと半分が亞里亞のお腹に納まるコトとなった。
「美味かったか?」
「はい♪ 亞里亞、たいやきさんが大好きになりました」
量的にも満足したようで、ニッコリと笑う亞里亞。ほっぺにあんこが付いてるのもまた愛嬌が・・・・・・って、ほっぺにあんこだとう?
・・・・・・・・・えーと。・・・・・・・・・これは、つまり、チャンスなんだな!? そーなんだな!?
心の中で叫んだ俺が空を見上げると、澄んだそこに、『ぐっ』と親指を立てた誰かが見えたような気がした。
「亞里亞、ほっぺにあんこが付いてるぞ」
「え、どこですか・・・?」
「ジッとしてろ、取ってやるから」
恥ずかしいのか、俺が何をしようとしているのか分かっているのか、頬を染める亞里亞。
俺はそんな亞里亞に顔を寄せて、
チュ・・・・・・ッ
柔らかなほっぺにそっと口付ける。
暫しそのすべらかな感触を堪能し、ゆっくりと顔を離す。
元の体勢に戻ると、やや潤んだ瞳が俺を見つめていた。
「・・・・・・亞里亞?」
「兄や・・・・・・兄やにも、あんこが付いてます」
なぬ? それはちょっとどころか、かなりみっともないぞ。
慌てて口元を拭おうとした俺だったが、
「亞里亞が、取ってあげます・・・・・・」
今度は亞里亞が顔を寄せてきた。
「兄や・・・・・・」
熱い吐息を吹きかけられ、俺の視界が亞里亞に覆われる。
くちびるに重ねられたやわらかな温もりに、一拍の間を置いて俺の意識はケンタウリ星雲の遙か彼方までフッ飛んだ。
「・・・・・・あ、あ、あり、あ?」
呆然としてしまって、上手く声が出ない。
パニクッてる俺とは対照的に、膝の上の少女は頬を桜色に染めながら、初めて見せる悪戯っぽい笑顔で俺を見上げていた。
「亞里亞、姉やたちも雛子もみんな、兄やの事、大好きなの知ってます・・・。だけど・・・亞里亞、負けません」
言って、俺に抱き付く亞里亞。
「だって、亞里亞は兄やの事、大、大、だーい好きですから・・・・・・・・・
」
・・・・・・・・・・・・・・・・・俺、一生シスコン激・確定・・・・・・・・・・・・・・・・・
蒼空に白雲漂う、とある冬の日の出来事だった。
☆☆☆ ふぃん ☆☆☆
追記
後日。何故かは分からんが、この日の出来事を『克明』に写した写真が他の妹達の間を出回った。
結果、どーなったかは言うまでもないだろう・・・・・・・・・
いや、地球ってホントに丸くて蒼いんだなぁ・・・・・・・・・・・・
後書きらしきもの
亞里亞ちゃん誕生日おめでとう!
最後のシーンのためだけに他の部分書きました。
でも、オチは余計だったかも。
いや、学校行く途中で青空を見上げたら何か受信しちゃって・・・・・・
初SSですが、いかがなモンでしょ?
感想いただけたら嬉しいなー・・・・・・なんて。
でわでわ。
・・・・・・・・・ガチ○ピンとム○クっていまだに現役なのかな・・・・・・・・・

黒葉さん [HP]
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