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俗世なデート

作 とだゆさん


「……ゲームセンターとは……ずいぶん…俗な選択だね」
 
 うっ、やっぱり気に入らないかな?

「……いや、これはこれで……興味深いよ」

 そう言ってもらえると嬉しいよ。さて、何をやるかな。格闘ゲームとかじゃ、やり方がわからないだろうし……ここはポピュラーにモグラ叩きかな。

「…これかい? ……どうやるんだい」

 出てくるモグラをハンマーで叩けばいいだけだよ。見てて、手本を見せるから。

 バシッ バシッ バシッ

 「いて!」「いて!」「いて!」

 最近のモグラ叩きは音声が付いてて、当ると声をだす。

 ぴろりぴろりり〜〜 『92 点』

 まあ、こんなもんかな。電灯版にでてきた点数に満足な息を吐く。
 千影もだいたいわかっただろ。

「…ああ、理解したよ……」

 おし、それじゃやってみなよ。

 ちゃらららら〜〜〜

 愉快な音楽が流れ、ゲームがスタートする。

 バシッ バシッ グシャ

 ……ん、なんか鈍い音がしたような。

 「いて!」「いて!」「ヒィィ〜〜〜」

 ……なんか、悲鳴みたいなものが聞こえたような。

 グシャッ グシャ ビシャ

 「ヒィィィ」「ギャァァ」「グハッァァ」

 ファンシーなゲームコーナーにおいてこの一角だけが暗黒地帯と化している。

 ぴろりぴろりり〜〜

 今までの展開が嘘のようにコミカルな音が流れる。どうやら終わったようだ。さあ何点かな? 見た感じほとんど叩き逃してなかったようだけど……

 『タ・ス・ケ・テ 点』

 ふっ、やっぱりな。こんなオチだと思ってたよ。僕は涙を流しながら、アイディアの貧困な作者を呪った。よりによってマサルさんオチはないだろう。

「…兄くん」

 千影が何か言いたそうな目でこちらを見ている。ん〜〜こういうときはアレかな?

「よく、できたね。すごいな千影は」

 そう言って、千影の頭をなでなでした。千影も心なしか嬉しそうに見えた。

 それじゃあ、次はどうするかな。ここはやっぱり……クレーンゲームだな。
 僕は『シスプリくれ〜ん』と書かれたクレーンゲームを覗きこんだ。中には、かわいらしい女の子のぬいぐるみが12種類ぐらい入っている。
 さっきと同じように、まずは僕が手本を見せる。僕は千影に似た白マントのぬいぐるみを取ることに成功した。

「フフフ…じゃあ私は……アレを狙ってみるかな」

 そう言って、千影が狙いを定めたのは髪が外はねしている――なんとなく僕に似た感じのぬいぐるみ。千影は距離を測るためか、ガラス板に手を当てて中をそっと覗きこんでいる。

「……ル…ザ……オルェ……」

 な、なんかいま呪文を唱えてなかったか? い、いや、気のせいだな。

 グイイイィィィィィン

 そんなことを考えているうちにクレーンが起動する。うむっ、おしい! 初めてにしてはなかなかよいコントロールだが、わずかに狙いと場所がズレている。クレーンゲームは数センチ場所がズレたら失敗だからな〜〜。

 グイッ

 い、今、ぬいぐるみが勝手に動かなかったか。――ってことはさっきのはヤッパリ……
 僕のそんな考えを尻目に、クレーンはぬいぐるをガッチリ掴んで上昇しようとする。このままいけば間違いなく成功だろう。が、しかし……
 
 ガシッ

 上がりかけようとした。僕似のぬいぐるみの足を、ツインテールにしたぬいぐるみ――なんとなく咲耶に似た――が掴んだ。

 ワラワラワラ

 それをかわきりに、箱中のぬいぐるみがクレーンにぶら下がる。そのありさまはまるで、芥川竜之介の『蜘蛛の糸』だ。あの話って確か最後は――

 ブチッ

 あっ、ヤッパリ切れた。
 それに伴い、ぶら下がっていたぬいぐるみが落下する。その衝撃でぬいぐるみの手足が本来曲がらない方向に曲がってしまって、なんだか痛々しい。あっ、目がねのぬいぐるみが血を吐いている。

「……兄くん」

 うっ、イカン! 千影が悲しそうな顔をしている。
 僕は阿鼻叫喚の地獄絵図と化したクレーン台を無視して千影を慰めにかかった。

「いやぁ〜〜、コレは初めてでそうそう取れるものじゃないし、千影は結構センスあるほうだと思うよ」
「……そうかい」

 あっさりとした返事。あれ? 悲しんでいたんじゃなかったのかな? うむむ〜千影の考えはイマイチ読めない。まぁ、ねんのため、後で同じぬいぐるみを探してプレゼントしておこう。
 
 その後もプリクラで手が三本写ってたり、エアホッケーがクーデターを起こしたりと、いろいろあったけど……僕はとっても楽しかった。だけど千影はどうだったのかな? こっちの趣味で連れまわして、つまらなくはなかったのかな?

「兄くん……今日は…なんだか……楽しかったよ」

 僕のそんな気持ちを読んだかのように千影が言った。

「それは良かった。僕も普段と違う千影が見れて楽しかったよ」

 いつも行くウィッチショップや呪術書店なんかでの千影も神秘的な感じで良いけれど、こういった一般的な場所での千影も無垢な子供みたいですごくかわいらしかった。こんどまた――

「…また……来たいものだね」

 僕の気持ちに続けるように千影が言った。

「それじゃあ、一つおまじないでもしようか」
「…おまじない……呪術?」 
「ああ、小指を出して」

 スッ と千影が小指を出す。その細い指先に自分の小指を絡める。

「じゃあ、こんどまた一緒に遊びに来ることを誓約して、――ゆびきりげんまん嘘ついたらはりせんぼんの〜ます、ゆび切った」
 
 ツッ と指を離す。

「……変わった…呪術だね」
「まあね、でも成功率は高いよ。今まで失敗したことは一度もないから」
「…兄くんがそんなスゴイ術の使い手なんて……知らなかったよ」
「そうだね、僕もはじめて知ったよ」

 ――でも、千影が望むならどんな大魔術師にでもなってみせるよ。そんな恥ずかしいことを考えながら、僕はまださっき感触が残っている指をぐっと握り締めた。


後書き

 第二弾は千影編です。管理人さんが兄くんなのに、こんな駄作を送るという稀に見る暴挙をやってます。管理人さんカンベンしてくださいm(. .)m ちなみに今回は千影の世俗的なことにうとい(例の花見の話が頭にあります)部分を表現したかったのですが、ゼンゼン表現できてないです。 ヽ( ゚∀゚ )ノ ダメダメダー


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