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妄想シアターVol2

作者 たこつぼ


ある日学校から帰ると留守電が入っていた。

ピーー

「……なんだ兄くん……せっかく私が電話してあげたのに……居ないとはね……まあそれはそうと……こないだのお礼……いやお詫びをするから……明日家に来てくれないか……?……どうせ休日は家で寝てるんだろ……では明日朝10時に家にきてくれ……」

ピーー ハチジ ゴジュウゴフンデス

「聞かなかった事にして、すっぽかすってのは駄目…」

ピーー

「……あ、それといろいろ準備して……待ってるからね……明日のこと知ってようが……知らなかろうがもしこなかったら……フフフ……それはそれで楽しみだね……」

ピーー ハチジ ゴジュウハップンデス

「駄目らしい(TT)」

視界が暗くなるのを感じる。

「ううう胃が痛い。あ、頭も痛くなってきた、熱も出てきた気がするしこれじゃ…」

ピーー

「……それともし病気で来れないなら……特製の薬を持って……お見舞いに行って……あげるからね……」

ピーー ハチジ、ゴジュウキュウフンデス

千影あんた一体…

「ううう、僕のシックスセンスが全力で行くなといっている、また目覚めたら病院の集中治療室なんてなったら…、でも行かないともっと恐ろしい目に合う気がするし、でもあああぁぁあああ」

頭を抱え悶え苦しむ、しかし考えれば考えるほど思考は行き詰まっていく。

「落ち着け落ち着くんだ、まず行ったら酷い目に会う気がする、でも行かなかったら…絶対に酷い目に会うというか死ぬかも…、選択の余地が無いな、ううう、これが不自由な2択というやつか(違います)」
「そうと決まれば…まず胃薬…は気休めになるかな、ならないだろうな……でも一応…、あとはあの辺にICUの有る病院は……この前お世話になった…、それとあとは遅刻しないように目覚ましをかけてっと、もうそろそろ寝るか」

しかしもちろんこんな状態では眠れるはずも無く長い夜を過ごす兄くんであった。

ピピピ…カチャ

「目覚まし必要無かったな…」

朝、昨日遅くまで眠れなかったはずだが目は目覚ましの鳴る前に目が覚めた。
普段は時間にルーズな兄くんだが千影との約束の時は別である、人間と言うものは生命の危機には何か特別な力が発揮されるらしい。
重い足をなんとか進めて千影の家に向かう兄くん、電車に乗りバスに乗りほどなく千影の家の前に立った、生暖かい風が顔を撫でる。

「時間は9時55分あと5分あるわけだ…、5分しか無いのか…、すー…」
「……こんなところで…何をしてるんだい…?……兄くん……」
「チョット心を落ち着………って千影!!どうして?!」
「……家の前で……変な人が……なんかぶつぶつ言っているって……アリスが言うから……」
「で千影ちゃん?」
「ん?……なんだい……?……兄くん……」
「その注射器は何かな?」
「……アリスが言ってた変な人に……ちょっと付き合ってもらおうかと思ってね……でも兄くんだったから……無駄になっちゃったね……せっかく用意したのに……」

そういって意味ありげにこちらを見る千影、その目には怪しい光を浮かんでいる。

「…………」
(話題を変えなければ!!!)
「そ、そう言えばアリスって誰?千影の友達??」
「ふふふ……まあそんなところかな……」

といつもの謎めいた笑みを浮かべた。

「かわいい名前だね、今部屋に居るの?」
「……いや……そこに居るよ……」

千影はそういって僕の肩の辺りを指す、思わず振り返ってみたがそこには誰も居なかった。

「ん?何もないじゃないか。」
「……まあ……そんなことより……早く上がってよ……」
「…………まあ良いか、はーいお邪魔します」
「……先に部屋に……行っててくれるかい……」
「わかった、じゃ先行ってるよ。」

「ぶぁっ」

ドアを空けた瞬間、何か異質な空気が流れ出たような気がした。

「ん?なんだろ今の、寒気が………、……………まあ深く考えるのは止そう。」

部屋を見渡すと、部屋の隅の小さなオブジェに目が止まった。

「あれ?前来たときこんなの有ったっけ?」

それは目や鼻や口があべこべについた小さい紅い卵のようなモノだった。

「なんだろなこれ?」

いつもの警戒感は不思議となく引き込まれるように卵に手を伸ばした。

「兄くん!!それに触っちゃ駄目だ!!!」
「え?」

その瞬間「バチッ」という音を聞きながら僕の意識は深い闇の中に堕ちていった。

「ううーんはぁはぁはぁうーーん」
(あつい、あつい体が燃えるようだ)
「兄……願い…飲んで…、…くん …死ん…まう、…うしたら飲……」

僕の口をなにか柔らかいモノが塞いだ、そうして薔薇の香りがする、甘い液体が口に流れ込んでくる、それは瞬く間に体に広がりそして溶けていった。

(あ、体が…楽になった、なん…だろこれ…)
「良かっ… アク…ェイタが… ほんと……った 」

誰かの泣いている声が聞こえる、そして僕の意識はまた闇に堕ちていった。

「ううーん、あれ?ここは?いっ!!…痛い…、そうだ確か千影に招待されて…、あの紅い卵に手を伸ばして…」

濡れたタオルが額に当てられている。

「すーすーすー」
「そうか…千影が…」

安らかな隣から寝息が聞こえる、そこには千影がベッドにもたれ掛るように居眠りをしていた。

「ありがとう千影」

僕は千影の頭をそっと撫でた。

「う、うーん、あっ……兄くん気がついたのか……良かった…」
「あ、起こしちゃったね、おはよう千影、心配してくれたのかい?」
「……あ、兄くんは……大切な実験台だからね………」
「そうかい?それでもありがとう。」
「……あ、ああ……」
「なんか顔が赤いぞ?大丈夫か?」
「あ、兄くんの気のせいだよ……じゃっ、じゃあ兄くんのご飯でも作ってくるよ……」

いつもより若干早口で喋ると千影はドアを開けて。

「無……で良か……」
「ん?なに?千影」
「……いや何でも無い……じゃあ…チョット待っててくれ…」
「あ、ああ分かった。」

千影の声が擦れていたような気が…、まるで泣いているような……。

「まさかねえ、千影がねえ……………、それにしても千影が料理か…、明日も生きてると良いな…、ってなに考えてるんだ俺!!!あんなに親身になって看病してくれた千影が病人の僕を…」

突如集中治療室に直行した時の事を思い出した、妖しげな『お茶』を飲まされて倒れた兄くんを見て嬉しそうな声を上げる千影の姿が浮かんだ……。

「い、いやあの時も命に別状は無かったし」

そう自分に言い聞かせたが体は正直だ冷や汗が止まらない、気分を切りかえる為慌てて部屋を見渡してみると、どうやらここ千影の寝室らしい。

「悪魔像に水晶玉、蝋燭に魔方陣…流石にあれ(人の髑髏)は本物じゃないよな…、こんな中に勉強机があるというのもシュールだな…」

更に見渡すと本棚の目立たない一角に僕の目は吸い寄せられた。

「こ、《恋のまじない大辞典》、ぷっ千影も女の子らしいところ有るんだなー。」

ここはやはり男として兄として度量を見せねばなるまいだろう、全身を廻る痛みと戦いながら体を動かす。

「うおおぉぉぉーー、ファイトーいっ○つー」

やっとの思いで「それ」を手に取るとパラパラとめくってみる。

「はぁはぁはぁ、なになに、恋のラッキーアイテム、部屋に彼が来た時好感度をあげる方法…へー窓際に月桂樹を置いておくと良い……ってホントかね、…………、おっと栞が挟んであるな、何々思い人との相性チェック…」

なにやら色々チェックがしてある、相当読み込んでいるのだろう、そのページだけ紙の感触が少し違っていた。

「千影にも好きな人が居るのか……、そうか………」

胸の辺りががもやもやする。

「うーーん、ここは兄として喜ぶべきなのか、それともその相手を哀れむべきなのか…」

僕は胸のもやもやの事を考えないようにした。

そしてしばらくして
がちゃ

「……お待たせ兄くん……特製病人食だよ……」
「う、うんありがとう」
(死んでも命がありますように)

半ば祈るようにそれを見ると以外に普通な卵雑炊だった。

(見た目は普通だな…)
「……兄くん……どうしたの……食べないの?」
「い、いや、今体が痛いし、それに熱そうだから…」

この期に及んで半ば条件反射でごねてみる。

「……なに食べられないの……?……兄くん……」
「いいや、食べま…」
「…しょうがないな……私が…食べさせてあげるよ…」
「え?ええ??えええ!!!いいいい今なんと!!!」
「……私が……食べさせてあげると、言ったんだけど………嫌かい…?」
「え、えええ嫌じゃないけど……」

(どうしたんだ?どうしたんだ??千影が食べさせてくれる?そうまで僕にコレを食べさせたいのか…ひょっとして万が一だけどホントに心配してるのかそれとも…)

「ふーふーふー」

(千影がふーふーしてるよ…どうしたんだ??どうなってるんだ!!!!)

「はい兄くんあーんしてくれ。」
「あ、あーん、もぐもぐもぐ、ごっくん」
「どう……?……美味しい……?」
「う、うん美味しいよ。」

その雑炊は意外に普通の雑炊だった、薄味だがベースはしっかりとしていて、口の中に入れたとたんに広がっては消える優しい味だったはっきり言ってかなり美味しい、体の痛みが消えたような気すらする。

(なんだ普通の料理も出来るじゃないか…)

「そうか……兄くんの口に合って……良かったよ……」

そう言ってふたさじめをすくおうとしてた千影はさじを落とした、左手から…。

「大丈夫か千影?ってお前なんで左手で…」
「な、なんでもないよ…ごめんさじとってくる……」
「ちょっと待て、千影!」

千影は慌てて隠そうとするが僕は右手に巻かれた白い包帯を見逃さなかった。

「…どうしたんだ?その右手…」
「別に…」
「別にって事ないだろう。ちょっと見せて…」
「大丈夫だよ、たいしたことないから」
「千影、見せなさい」

千影は少しばつが悪そうに右手を差し出した、片手で巻いたのだろう包帯はかなり撓んでいる。

「火傷してるじゃないか…」
「たいしたことないんだ……ちょっと鍋で…」
「たいしたことないって…そんなになってるじゃないか……、ばかだなあ……」
(それを僕は…)

胸がズキンと痛む

「…こんな巻き方じゃ包帯巻いている意味無いだろう、ほら巻き直すよ」
「あ、ああ」

どこか照れくさそうな千影の手に手際良く包帯を巻いていく、この程度の応急処置は千影の兄くんなら文字通り朝飯前である。

「これでよっしと」

と包帯を巻き終わった手を大事に頬に押し当てた、千影の手は冷たかった……。

「あ、兄くん……」
「僕の為に…ありがとう、本当にありがとう」
「………もう大丈夫だよ……兄くん……」
「あんま無理すんなよ。」
「……雑炊冷めちゃったね…温めなおしてくる……」

駆け出すように部屋を出ていく千影の後姿を見送った後、もう1度そっと呟いた。

「ありがとう千影」

そのあと千影は不器用にも雑炊を食べさせてくれた、今まで食べた中で最高においしいご飯だった。

すべて食べ終えたあと

「千影の彼氏になる人は幸せだな」

あ…今…言ってはいけない事を言ってしまったような気が……。

「え?…兄くん…どうしたんだい?…いきなりそんな…」
「え?ええ??ああ、あのいや例えばだよ例えば、そうそうもし千影に彼氏ができたらのは話で…、僕は別に何も見ちゃいないって……」
「ふーーん」

あ……今なんかミスったような気が……

千影の目がスーと細くなり、そして…

「アリス!!」

次の瞬間肩の辺から生暖かい風が「ぼあっ」と流れ出して千影の方に流れていった。

「な、なんだ今のは!?」
「…ふむふむ……それで?…なるほどね…」
「おい、千影なに一人でぶつぶつ言って…、ん?千影の廻りになんかあるような気が…」

目を懲らして見ると、千影の周りに白い靄のような物が漂っている。

「ふんふん……そう?…そんな事を…」

その靄が千影を中心に回転しているように見える。
こめかみの辺りがヒクヒクしてる様に見えるのは気のせいだろうか……。

「…それで……そう…」

一瞬泣きそうな表情がかすめる、そしてこっちをかっと振り向くと。

「…ごめんね…シュールな部屋で…悪かったね…いつもは女の子らしく無くて…」
「なっなっなっな!?なぜそれを?!」
「…それで勝手に…あれ読んで勝手に………好きな人が居ると思って……それで……その彼氏が可哀想だと…思ってるんだ?」
「いいや、あれは言葉のあやで…って、何でそんな事まで知ってるんだ!!?」
「……アリスがね……教えてくれたんだよ…」
「え?アリスって千影の友達の?」
「…私が好…のは…くんだけなのに…」
「へ?」

ぷつん、無造作に兄くんの髪の毛を引き抜く千影。

「い、痛いなーー何するんだよ、いきな…」

もぞもぞ、黙ってその髪の毛を懐から出した藁人形につめこんでいく千影。

「あの千影さん?なにをしていらっしゃるんですか?も、もしかして……」

そのまま人形にズドンと釘を打ち込む千影。

「あぎゃらぱらしょぱーーー」
「…今日のところはコレくらいで許してあげる…、おやすみ兄くん、私は客間で寝てるからなにか有ったら声かけてね…」「ああががぎゃ、ぐぐごごごご」

それどころではない、体の中心に杭でも打ち込まれたような激痛が前身を駆け巡る。

「それと乙女の…を奪った責任はとってもらうよ。」
(え??なに?チョット聞こえな…)

しかしそのまま意識は深い闇に堕ちていった……。

その日から僕に対する『実験』がさらに厳しくなったのは言うまでも無い……。

 

終わり?

 




























後日談

「ホント……あの時は危なかったんだよ……兄くん…」
「千影の家で命の危機に遭うのは2度目だな。」
「……2度目?」
「お茶飲まされて病院行った時の…」
「……ああ……あれかあれは別に……危機でも何でもないよちょっと魂と言うか……幽体をもらいすぎちゃったから…貧血になったようなもので…」
(貧血って…あんた…)
「………でもこの前のあれは本当に……ギリギリだったんだよ……だから少しくらい髪の毛や瞳が銀色になったとしても、我慢して欲しいね…」
「は?なにそれ??」
「…いや…まあそうなるとは限らないし……今は忘れても良いよ…」
「いや、めっちゃ気になるんですけど。」
「…ああ…言い方が悪かったね…、そうなるとは限らないから今は忘れたほうが幸せだよ…」
「…はい…忘れます…」
「くす…そうそう素直が一番だよ…兄くん…」
「…………」

まあいちいち気にしてたら胃がいくつ有っても足りないか…

「そう言えばあの赤い卵なんだったの?」
「……ああ…これかい?」

ひょいっと胸から例の「卵」を取り出す千影

「お、おい触っても平気な…」
「……コレはね兄くん《覇王の卵》と言って……これを持つ資格のあるものは……自分の血と肉を引き換えに……世界を手に入れられるというものらしい……でも資格の無いものが触ると……命を落としてしまうというから気をつけた方がいいよ……」

千影…あんた一体…

 

本当に終り

千影ってこんな性格じゃないよね(こんな喋らないし)…まあ大切な(壊)兄くんが死にそうになって気が動転してたと言う事にしといてください
ちなみにコレは僕による僕の僕の為のSSです、僕の妄想と言うか欲望と言うか愛を形にしたものなんでお気に召すかどうか判りませんが、これが僕の理想です。
感想やここが良かった、ここが悪かった、ここはこうした方が良い、ここの言葉使いが千影らしくない、もしくは千影ならこう言うと言う意見も募集します。
ついでにこのタイトルもあんま評判良く無いので募集します。


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