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妄想シアターりある?
妹の宴

作者 たこつぼ


「ただいま〜〜」

ふぅ……家にはまだ誰も帰ってきていないみたいだ、今日こそ平和な日常が満喫できる。

「……ああ兄くん……ちょうどいいところに帰ってきたね……」

前言撤回一番最悪なヤツがもう既に居たらしい。

「……いまちょっと客が来て宴を開いてね……悪いけどお酒とつまみを買って来てくれないかい……?」
「おいおい昼っから、未成年が酒宴かよ……」
「ふふふ……まあそんなところかな……、これも世界の平和の為だよ…」

この程度の事と……素なのか、ボケなのかそんなことを考えなくなったのは何時からだろう。

「はいはいそりゃあ凄いねえ。まあ暇だから良いけど、どれくらい買ってくれば良いんだ?」
「……そうだね……、えーとお酒が100リットルと……つまみがそれ相応くらい……かな」
「おいおい、そんなにたくさんの酒何するつもりだ?」
「……何するって、酒は飲むに決まっているだろう……?」

真面目に話しているのが馬鹿らしくなってきた……、まあ千影だし……深く考えてもしょうがないだろう。

「で……どうするんだ?そんなに大金俺はもってないぞ」
「……大丈夫、お金は貰ってきたから……」

そう言ってポンと渡された札束はドルだった。

「何で札束!!!しかもドルかよ!!っておいこれ100ドル札じゃないか!!!、つーかドルじゃ買い物出来ないだろ!!」

ツッコミどころが多すぎてどれをツッコメばいいのか分からない、千影の無茶には慣れているはずなのに一瞬前後を見失ってしまう。

「…………それもそうだね……ではちょっと悪いけど待っていてくれるかい……」

千影がこちらの返事も聞かずにスススススと部屋に戻り、スススススと戻ってきた千影にボン手渡された札束は……、俺が先日車を買う為に一年以上バイトして手に入れた100万円の札束より、優に5倍は厚い……。

「まあ……世の中には知らない方が関らない方がいいことが一杯あるからな……」
「……それじゃあ宜しく頼むよ……兄くん……お酒のリストはこのメモに書いてあるから……」

千影のメモを受け取り逃げるように玄関から立ち去る。

「……そうそう今日の客の一人は……伝統的に豚肉は食べられないから……、……兄くんも命が惜しかったら……豚肉たぐいのものは買ってこないほうがいいと思うよ……」
「…………ハイハイ、分かりましたよ」

その程度の事もう既にツッコムですらないって事は言うまでもなかった。

 

 

若いあんちゃん達とトラックを引き連れた俺が帰ってきたのは、一時間後くらい後だった。

「……流石に手取りが早いね兄くん……」
「まあ……慣れてるしコネもあるしな、つまみの方もおいおい届くと思うぞ、これ領収書、これお釣りな、それじゃあ俺はこれで……」

領収書の束とかなり減ったもののそれでもまだまだ分厚い札束を千影の前に置いてとっとと退散しようと席をたとうとするが案の定千影に呼び止められた。

「ちょっと待った兄くん……折角だから挨拶でもして行ったらどうだい……?」

「い、いやいいよ、千影も『お友達』同士でゆっくり楽しみなさい、邪魔したら悪いし……」
「……兄くん……私の誘いを断る気なのかい?……今日のこの事を一生後悔し続ける覚悟があるのなら……それでもいいけど……」

千影の瞳が妖しく輝いている……、もしかして断る方を期待しているのだろうか……。

「はじめから俺の選択権は無しですか……、ハイハイいけば良いんでしょ」
「……そう……兄くんが嫌なら無理にとは言わないけど……」
「嫌っていったらどうするつもりなんだ……」
「別に……ただちょっと実験に付き合ってもらうだけだよ……」
「結局そうなるんじゃないか……」

『別に……ただちょっと』で済ませられるモノではないだろう、まあもうこうなったら千影のお友達とやらに挨拶をするのが一番穏便な道だと腹を括った。
鬼だろうが、蛇だろうが……もう何でもこいって感じだ。

「……兄くん……ちょっと待ってて……」

千影はそういって一足先に部屋に入りなにやらごにょごにょ話している……、案の定かなりの大所帯のようだ。
酒100リットルは伊達じゃないらしい。

「……それじゃ兄くん入って来ていいよ……」
「それじゃあ失礼しま………」

 

 

千影の部屋に入った俺が見たものは、バスケットとバレーが同時に出来そうなくらい広い部屋が、最近どっかで見たことのある髭のおじさんとこれまた髭のおっさん以上にどこかで見たことのあるテリーマンみたいなおっさんを中心に、どっかで見たことある人たちで埋め尽くされていた。
ざっとみ30,40人のテレビで見たことある各国のエライヒトタチが一同に首をそろえているのはある意味圧巻だった。
もう既に千影の部屋は8畳じゃなかったっけ?などというつまらないツッコミは思い浮かびすらしない……。

「……兄くん……そっちのカウボーイみたいな人がぶっしゅくんで、向こうの顎髭の人がらでぃんくんだよ、であっちの紳士っぽい人がぶれあくんで、こっちの……」
「は、始めまして……千影の兄です……」

今までも千影は色々インパクトのある『お友達』をつれてきていたが、今回はなまじまともな(?)人間なだけ……むしろインパクトが大きいっていうかきっと多分これは夢だね、うん。

 

 

そう思って頬を思いっきりつねってみると涙が出るほど痛かった。
何故指先一つで世界を滅ぼせる方々がうちの妹の部屋で酒宴をやってるのだろうか。

「君が千影君の兄くんか……いつも千影君には……」
「……君らがこの世から消し去りたい奴らができたら是非連絡してくれ。2日で全て片をつけて………」
「……しかしまさかトーキーの奴らもこんなところで……」

と一同に声をかけられた俺は、脳味噌を通り過ぎていく決して表に出せないような……情報にただ適当に相槌を打つしか出来なかった。
何故か日本語だし……。

「……ういえばあらふぁとも大変だよな……」
「全くしゃろんの基地外ぶりにも困った……」
「……いやあいつも大変らしいよ……廻りが騒いじゃって騒いじゃって、まあ元は選挙で勝つために自分たちが騒がせたんだから自業自得……」

何故この人たちはうちの妹の家で酒飲みながら、タメグチで世界情勢を動かす世間話をしているのだろうか……しかも日本語で2ch語だし……。

「……まさかスナック菓子を喉に詰めて失神する大統領がいるとは思わなかっな」
「全くだ、もう少しで歴史上で最も情けない死に方をした大統領になる所だったよ」

ハハハハハ

笑い声が響く……、ほっとする……、今の会話が笑いで終らなかったらどうなっていたか、考えただけでぞっとする……。

そういやあ千影の誕生日にげいつくんとかこいずみくんといかいう人から花束が届いた事があったな……。
もしかしてあれは本当にあのげいつに、あのこいずみだったのか……。

「おりゃにいちゃん、ほれ呑め、ほれ呑め」
「あ、ハ、ハイ……」
「ふふふ……兄くん……畏まる事は無い、今日は無礼講だよ……」

いや自分の機嫌一つで地球の未来が180度変えれる人たちの前で無礼講言われても……。

「おお、なかなかやるねえ、そらもう一杯呑め」

と今度はテキーラをグラスに並々とついで来る。

「ち、千影……俺腹が痛くなって来たから……部屋に……」
「……へえ?兄くん米利堅の酌では……酒は呑めないとでも言うのかい……」

見るとテキーラを酌したテリーマン似のおっさんが、こちらをじーーーーと見つめている。

「ハイハイハイ!!!呑みます、呑みます、呑みます」

俺は脊髄反射の如くの勢いでグググとテキーラを一気に飲み干した。

それからは記憶が飛んでいる、だれかと笑っていたような気がするし、誰かと飲んでいたような気がするが良く思い出せない……。
自分が何を言ったか何を言われたか非常に気になるが。
何より気になるのは、何故か自分の左頬と右拳が腫れていることだ。

 
 

あくる日のニュースに出て来た、テリーマン似のおっさんの左頬には何故だか大きなシップが張ってあった。


 

 
 

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

翌週のある日

「……ああ兄くん……ちょうどいいところに帰ってきたね……、……今ちょっと客と宴を開いていてね、……おつまみと日本酒を50升くらいかってきてくれないかい……?」
「…………………………別にいいけど……、そんなに大金俺はもってないぞ」
「……大丈夫、お金は貰ってきたから……」

ポンと渡された黄金色で楕円形の物体には黒い文字で『天正大判』と書いてあった。

 

あとがき

まあ千影の意味不明なところを表現できたらいいな……と、そんな感じで書きました。

テリーマン
一世を風靡した伝説の漫画、『筋肉マン』に出てくるアメリカ代表の超人。
一応筋肉マンの親友だが、キン肉マンの親友と言う事以外はあまりパッとしてなかったりする。


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