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=山へ行こう(四葉)=
作者 ソルさん
「キャッホーー!兄チャマー!兄チャマー!!」
ロープにつかまって宙を滑空している、少々興奮気味の四葉の声が右から左へと流れていった。
俺はその様子を、楽しそうだな、という思いで見守っている。
四葉の声が聞こえなくなっても辺りからざわめきが消えることはなく、子供たちのやかましいほどに嬉しそうな歓声がこのアスレチック場に響いていた。
丸太の平均台に丸太の釣り橋、その他諸々が組み合わさって奇妙な形を成している城のようなもの、無数のリングがいくつも重なり合ったトンネル・・・
そんなような物があちこちに散らばったここは、数あるアスレチック場の中でもっとも規模が大きいとして有名な、山の中のアスレチック場だ。
俺たちのほかは家族連れが圧倒的に多く、小さな子供が遊んでいる脇で母親や父親がはらはらしながら自分の子供たちを見つめている。
鳥のさえずりが子供たちの冒険物語のBGMとなり、時折吹く山の風は、冒険で高ぶった心を静めてくれる。
そんな子供たちの熱気に包まれたアスレチック場のベンチのひとつに腰掛けていた俺は、子供たちと一緒になってはしゃいでいる四葉の様子を眺めていた。
子供たちに囲まれている四葉は、とっても幸せそうな表情でジャングルジムに登っている。
四葉のあとを必死に追いかけている子供たちを見ていると、なんだか微笑ましくなってきた。
四葉って子供が好きなんだな・・・
普段見かけない四葉の意外な一面を覗いたような気がしてなんだか得した気分に浸っていた俺は、自分の気持ちがある方向に定まりつつあることを自覚していた。
妹たちと二人っきりの登山・・・最後は四葉だ。
あと一人か・・・これが雛子と一緒に山から帰ってきたときの俺の正直な気持ちだ。
今まで妹たちと山へ行ってきて、ひとつ分かったことがある。俺にも迷いがあるということ・・・
純粋に可憐だけを愛してはいなかった事をはっきりと思い知らされてしまった。
悔しいがあの悪魔の言った通りになってしまったのだ。
『お前は本当に可憐が好きなのか?』
かつて悪魔は俺にそう問いかけた。俺はその言葉を馬鹿馬鹿しいと一蹴したが、それは何も気付かずにいたからこそだ。
妹たちと山に行くたびに俺の中に隠れていた、いや隠していた気持ちが表面化してきた。
そして俺の迷いが、あの悪魔を生み出したのだ。
だが皮肉なことに、俺の迷いを糧としている悪魔が俺の迷いを教えてくれた。
俺の苦悩が悪魔の存在理由であるはずなのに、自らの存在を消すような真似を自分からした・・・
どういうことだ、一体・・・
俺をあれだけ迷わせ、うっとうしいとまで思った悪魔が消えてくれるというのに、なぜか心が落ち着かなかった。
誰だって死にたくない・・・それは悪魔も例外ではないはずだ。
それなのにあえて自殺まがいの事をする理由は何だ・・・
雛子と帰って来てからというもの頭の中はこのことでいっぱいになり、夜も満足に眠れなかった。
「兄チャマの寝不足の顔、チェキです!」
ベッドに入ったもののなかなか寝付けずに朝を迎えた俺は、まだぼうっとした頭で四葉の声を聞いた。
左手にルーペ、右手にデジカメを持った嬉しそうな表情の四葉が、ベッドに横たわった俺を覗き込んでいる。
「四葉か・・・おはよう」
「元気出すデス、兄チャマ。兄チャマがそんなのだと、四葉もチェキのしがいがないデス」
ちょっと怒った表情を見せた四葉をなだめてベッドから起き上がり、着替えるために四葉を部屋の外に追い出す。
とりあえず服に着替えた俺は、部屋の外で壁にもたれてすねていた四葉に今日の予定を伝えようと口を開いた時、四葉が俺の言葉をさえぎってきた。
「今日は四葉と兄チャマで、山の中のアスレチック場に行くのデス」
「な、何故知っているんだ。おどかすつもりで秘密にしといたのに・・・」
俺が言おうとしていたことを四葉に言われ少なからず驚いた俺は、さらに言葉を重ねられる。
「この四葉に知らないものはないのデス!」
そういえばそうだったな・・・
えへん、と胸を張って自慢げに宣言する四葉の言葉を、俺はため息をつきながら頭の中で納得した。
「さあ、行こうデス、兄チャマ!」
そう言うと、その細い腕を俺の腕に絡めて玄関のほうへと引っ張っていく。
日焼けをした四葉の腕は意外に力があり、まだ寝ぼけている俺の体がどんどん引きずられる。
え・・・?日焼け・・・?
俺を引っ張っていく四葉をよく見ると、腕だけではなく顔や足もわずかに日焼けしていた。
だがそんな疑問を形にする前に俺の思考はさえぎられた。四葉が急にスピードを上げたのだ。
「お、おい、四葉!」
「楽しみデス、楽しみデス!」
満面の笑みを浮かべてそんなことを言いながら、俺を小脇に抱え全力疾走している四葉には言葉は届かないらしい。
結局玄関を出てから駅に到着するまで、その走りが止まることはなかった。
「兄チャマー!兄チャマー!」
ベンチに座って旅の疲れを癒していた俺は、四葉の声を聞いて顔をあげた。
声のしたほうを探すと、アスレチックのひとつのてっぺんに、こっちに向かって思いっきり手を振っている四葉がいる。
丸太で四角形の枠組みを作り、その内側に白い荒縄を格子状に張ったそれは遠くから見てもかなり危なそうなものだ。
俺はベンチを飛び出すと、四葉の居るその遊具のところに急いだ。
「兄チャマ、来てくれて嬉しいデス」
「危ないことはやめてくれ、四葉。もし落ちたらどうするんだ」
荒縄を登りつめ、満面の笑みを浮かべている四葉の隣に腰掛けてまず注意する。本当に見ていてひやひやした。いつ落ちてもおかしくなかったからな・・・
「そのときは兄チャマに助けてもらうデス」
まっすぐな瞳でそう言われ、俺は返答に詰まってしまった。
四葉は俺を信じている・・・俺のことを好きでいる・・・
だけど俺はその信頼に応えてやることが出来ない。どんなに俺のことが好きでも、その想いを受け止めてはやれない。
「四葉が危ない時、いつも俺が居るとは限らないんだぞ」
「だったらいつもそばに居てくださいデス・・・」
そう言うなり、四葉が俺にもたれかかってきた。そして潤んだ瞳で俺の目を覗き込んだかと思えば、何の前触れもなくそのまぶたを閉じる。
「四葉・・・」
だんだん四葉の顔が近づいてくるが、狭い場所なので逃げ場はない。かといってそのままキスは出来ない。
短時間の熟考の末、右の人差し指で四葉の唇をふさぐ事にした。それを実行しようとしたその時、唐突に四葉の体が右に傾いた。
体制を崩した四葉が目を開けて柱を掴もうとし、俺はその四葉の腕を慌ててたぐり寄せる。そのはずみで俺もバランスを崩すが何とか立て直して、四葉を救い出す事に成功した。
「はあ、はあ・・・びっくりしたデス」
「ああ・・・でも四葉が無事でよかった・・・」
「ありがとうデス、兄チャマ・・・」
俺の胸に顔をうずめたまま礼を言う四葉の声が、わずかながら涙ぐんでいる。
「どうしたんだ、四葉?」
予期しない出来事にびっくりして泣いているのかと思ったが、今までの経験から言うと多分違う。
恐らく俺と可憐の事についてだろう。俺に優しくされると、妹たちが逆に辛い思いをする・・・
咲耶に言われるまでその事に気がつかなかった俺は、世界で一番鈍感な男だろう。
その所為で妹たちを余計に傷つけてきた・・・でも、それも今日で終わりだ。俺の想いは決まったんだから・・・
未だ胸の中でひっくひっくうめいている四葉の肩をつかんで引き起こし、目線を合わせて凝視した。
「な、何デスか、兄チャマ?」
四葉はその視線に、見てわかるほどの動揺を示すが、とりあえず無視し本題を伝える。
「四葉、いや四葉だけじゃない。俺は妹たち皆が好きだ」
「兄チャマ・・・」
その言葉に四葉は顔を赤くする。その表情も可愛いな、と一瞬頭を掠めたがそんなことを考えている時ではない。俺が言いたいのはそんなことではないのだ。
「だけど、可憐に対してだけは四葉たちとは違う意味の好きという感情をもっている」
「兄チャマ、それは・・・」
「ああ、俺は可憐を愛しているんだ。だからお前たちの気持ちには応えられない」
『いいのか、そんなことを言ってもよ』
次第に泣き崩れていく四葉の顔を見つつ、悪魔と会話を交わす。
『ああ。ようやく気付いたんだ、俺の本当の気持ちに』
『そうか・・・』
珍しく憎まれ口を叩かない悪魔の声は、なんだか物寂しさを漂わせていた。
『それを気付かせてくれたのはお前だ・・・・・・・・・ありがとう』
『へっ!礼なんかいらねえよ。背筋が寒くならあ』
『それでも、いやそれだからこそ・・・ありがとう』
『・・・・・・そろそろ俺は行くぜ。いつまでもここに居られなくなっちまったからな、誰かさんの所為でよ!』
そう吐き捨てて悪魔の声は聞こえなくなった。まるで、はじめから居なかったかのように・・・
『待ってくれ、ひとつだけ聞きたいことがあるんだ!』
『なんだよ、急いでんだぞ俺は』
あ、まだ居た。居られなくなったんじゃないのか?って言うか、そんなに急いでどこ行くんだ?
『どうしてお前の秘密を話したんだ。こうなることがわかっていたはずなのに、何故・・・』
いくつか突っ込みたい気分だったが、必死にこらえて質問をする。
『それはお前さんが一番よく知ってるんじゃねえのか?』
どこかで聞いたようなせりふを残して、悪魔はいなくなってしまった。・・・今度こそ。
ああ、よく知ってるさ。俺はお前で、お前は俺だからな。
自分自身に迷惑をかけたがる奴なんてそうはいない。お前は俺に迷いを気付かせるために生まれ、そのために消えた。
本当に感謝しているんだ・・・そのためにも、お前の心は無駄にはしない!
「兄チャマ・・・」
その声で現実に戻ってきた時には、両の頬に幾条もの涙を流した四葉が俺に向かって倒れこんできた。そしてそのまま俺の唇が四葉のそれで押さえられる。
悪魔との会話ですっかり忘れていたがここは丸太の上、しかも地上5〜6メートルのところに位置している。ラブシーンをするにはかなり危険過ぎる場所だと思うのは俺だけだろうか・・・
「へへっ、四葉もほかの皆と同じ事をしてみたデス」
ようやく俺の唇を開放した四葉は舌をちろっと出して、悪戯好きな子悪魔のような表情になる。
だが俺はその表情よりも言葉のほうに関心を持った。
「皆と同じって・・・知ってたのか!?」
「この四葉に知らないことはないといったはずデスよ?」
子悪魔の表情が一変し薄気味悪い含み笑いを浮かべた四葉の顔は、魔女と呼んでも差し支えないほどだと思わせるには十分だった。
さすがの俺も思わず背筋に悪寒が走り、夏だというのに冷や汗をかく羽目になった。
「しょ、証拠はあるのか、四葉?」
「証拠?愚問デス、兄チャマ」
ほらこの通りと、どこからか一冊の本を取り出し俺に手渡してくる。
愚問なんて言葉、よく知ってたな・・・と思いつつ、黒のマジックで『兄チャマの秘密』と書かれた本をながめる。写真が入っているらしく、かなり分厚い。
この時点で俺の嫌な予感50%増し・・・
「これぞ動かぬ証拠デス、フフフ・・・」
そう四葉が言った時には嫌な予感が確信に変わっていた。
見てはいけないと俺の本能が警告してくるが、やはり好奇心には負けるらしい。恐る恐るその本の表紙をめくる。
1ページに3枚の写真を入れるタイプで綺麗にコーティングがなされているそのアルバムの1ページ目を見た俺は、いきなり意識がどこかへ行きそうになった。
上段に『白い花を眺めている俺と可憐』、中段には何もなかったが、下段には『抱きしめあっている俺と可憐』の写真が入っている。
ぐはぁ!・・・どうやって撮ったんだこんなもん・・・それより、四葉がいたのか、あの時・・・
頂上での写真はいいとしても、登山道の写真は正面からだ。この構図で写真を撮ろうと思ったら山に入らないといけないはずだが・・・
かなりのダメージを受けながらもページをめくる手は止まらない。
可憐の写真が張ってあるページの裏には何もなく、3ページ目に3枚の写真があった。
これは鞠絵のか・・・上段には・・・
あ、ミカエルが俺に噛み付いてる・・・あの時のか。その奥に鞠絵がいるけど表情まではわかんないな・・・
次は・・・似たような風景だな・・・あれ、ミカエルと俺が抱き合ってる。こんなことしたかな・・・?
一番下は・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!
俺と鞠絵がキスしてる写真だ・・・・・・ん?この白いのは何だ?写真からして俺たちと同じ高さから撮ったもののようだけど・・・
「なあ、四葉。これなんだ?」
下段にある『キスをしている俺と鞠絵』の写真の左下に写っている白いものを指差して、なにやら満足顔でニコニコしている四葉に聞いてみた。
「ああ、これはミカエルデス。邪魔になりそうだったので退場してもらったデス」
「どうやってだ・・・?」
思わず聞いてみると、四葉は人差し指を左右に振りつつ口を鳴らして言い放った。
「企業秘密デス!」
・・・・・・深く考えないようにしよう。
そう結論づけてページをめくると、5ページ目の上段に『登山道の出口で大の字になって寝っ転がっている俺』の写真があった。
これは・・・衛のだな。妹ごとに区切りを入れてるのか・・・
そんなことを思いつつ中段の写真を見ると、そこにはどこかの店の中の風景が写っていた。よく見るとその中心に、すごい表情をした俺がいる。
ローラーブレードで蹴られた時のだ。あれは本当に痛かった・・・
なんとなく痛みがぶり返したかのような錯覚を覚えながら下段に目を移すと、『衛にローラーブレードで蹴りを入れられた俺』の写真があった。
『あの時』の写真がないな・・・
そう思いつつページをめくると、その裏の6ページ目上段にその写真があった。『『聖域』で俺の上に覆い被さってキスをしている衛』が写っている。
まさかほかの妹たちのも・・・
背筋を寒気が200往復ぐらいしたような気がしたが、やはり続きが気になってしまう。
衛との決定的瞬間の写真の隣、7ページ目の上段には『山道で「荷物運ぶ君3号」を引きずっている俺と、その向こう側にいるの鈴凛』の写真が張ってあった。
「俺たちの後をつけてたのか、四葉・・・」
「もちろんデス。四葉を甘く見てはいけないデス」
ピースサインを出している四葉に改めて恐ろしさを感じた俺は思わず身を縮め、再びアルバムに目を戻す。
7ページ目の中段には何もなく、下段に『キスをしている俺と鈴凛』の写真が張ってあった。
上から見下ろした構図になっているその写真には、手前にあの小高い丘がありその上のほうで俺と鈴凛がキスをしている。
この写真は木に登らないと撮れないんじゃあ・・・
9ページ目も写真は2枚で、上段に『俺に肩車をされている亞里亞』、下段に『キスをしている俺と亞里亞』の写真が入っている。
下段の写真を良く見ると、山が背景になっている。ということは崖の方からじゃないとこの写真は撮れない訳で・・・考えるのはよそう。
11ページ目には『舞をしている俺と春歌』の写真が3枚連続で並んでいた。
「あんまり綺麗だったからこんなに撮ってしまったデス」
ああ、そうですか・・・相当ダメージがたまってきた今の俺には、こんな感想しか浮かばなかった。
ページをめくると、12ページ目上段に『キスをしている俺と春歌』の写真が当然のようにある。
ここまでくると、なんかもうどうでもいいやって気分になるな・・・・・・
だがその右に視線を向けた俺は、当然の疑問に襲われた。そこにあるはずの写真が一枚もないのだ。順番から行くと千影のはずだが・・・
「四葉、ここの写真はどうしたんだ?」
「ああ、そこデスか・・・千影姉チャマの写真はないデス」
白紙の13ページ目を指差して聞いてみたが、声のトーンを落としてそう言う四葉になぜか怯えの色が見える。
追求しないほうがよさそうだなと思ったが、やはり好奇心には勝てなかった。
「何でだ?四葉ともあろうものが・・・」
「写真を撮ってたらカードが飛んできてカメラが壊れたデス・・・」
意気消沈といった感じの四葉の声を聞きながらあの時のことを思い出して、俺はなるほどと納得すると同時に千影に恐ろしいものを感じた。
俺がわからなかった四葉の気配を察したこともそうだが、四葉と分かっていてなおかつカードを投げる千影が、何か怖いと思ったのだ。
15ページ目をめくるとそこには、『咲耶に腕を決められている俺と、その隣にいる静流ちゃん』の写真が上段に、『倒れている男の脇にいる俺』の写真が中段に、『男にひじを叩き込んでいる咲耶と、その奥にいる静流ちゃん』の写真が下段にある。
ページをめくって・・・あれ、なんかブレてる・・・
16ページ目上段の写真には二つの人間らしき人影が写っているがぼやけていてよくわからない。
まあ、俺と咲耶のキスシーンだろうけど・・・
「これはどうしたんだ、四葉?」
その写真を指差して聞いてみると、
「兄チャマたちといっしょにいた女の人に邪魔されたデス!」
という答えが多少の怒りを含んで返ってきた。よほど悔しかったのだろう、めったに怒らない四葉が怒っている。
さすが静流ちゃんだ・・・と感嘆の念を抱きつつ17ページ目に目を落とす。
上段には『畑でなにかを収穫している俺』の写真があった。よく見ると、俺がとっているのはトマトだ。鮮やかな赤色をしたそのトマトは、写真を通してでもその新鮮さを失ってはいない。
中段にはもはやお約束の『白雪に頭を抱えられキスをしている俺』の写真。そこには、あの『白雪特性野菜サラダのボルシチ風中華三昧和え』が、デン!とその存在をアピールしている。改めてみるとやっぱりでかいなあ・・・
下段には『畑をバックにして写真をとる俺と白雪』の写真がある。ということは、あの時感じたフラッシュは四葉だったのか・・・
大きなため息を3回ほどついてページをめくる。
19ペ−ジ目の上段は・・・上からの見下ろしで山道を俺と花穂が歩いていて、その向こうにはかすかにガラス張りの建物が見える。
その次・・・なんか二人で走ってる。ああ、あれか・・・猿がいると思った時だ。あの木の実を落としたのは四葉だったのか。
一番下は・・・大の字になっている俺に花穂がキスしてる写真・・・
もう何も言えない・・・脱力しながらもページをめくる手にはまだ力が残っている。好奇心ってほんと怖い・・・
21ページ目・・・ペンギンが山の中で踊ってる写真がいきなり目に入った。少し考えて、ああ雛子だ、という結論に達した。
次は、と・・・・・・ん?何だこの黒いの?
21ページ目下段の写真に、中央に黒いものが写っている。誰かの上に乗っているみたいだけど・・・
そこまで考えて、寝ている俺の上に雛子ペンギンが乗ってキスをしているところだ、と悟った。
この写真は真上からか・・・確かあの時は木の根元に寝てたから、四葉は木に登ってたわけだ・・・
そこで写真はなくなっていた。俺はアルバムを閉じると四葉に返した。
「どうデスか、兄チャマ?四葉のチェキは」
「ああ、分かった分かった。四葉の勝ちだよ」
「やったー!だったら四葉の、ううん、みんなのお願いを聞いてくださいデス」
完全に力を使い果たした俺に、満面の笑みを浮かべて体を乗り出しておねだりしてくる四葉。
嫌な予感1000%超・・・
「皆で海に行くデス!」
それからどうなったのか、俺にはわからない。ただ分かっているのは、俺の苦悩がまだ終わったわけではないということ。
そして、危うく転落死しかけたらしいということだけだった。どうも意識を失いかけたようだ。
何とか無事だった俺は、最高の笑顔を見せる四葉とともに家に帰った。そして海へ行く準備をはじめなければならなくなった。
・・・可憐、やっぱり俺はお前が好きだ・・・
・・・これが俺の本当の気持ち・・・
=あとがき=
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『山へ行こう』最終章・・・のはずだった『山へ行こう(四葉)』をお送りします。 |
ソルさんへの感想はこちら
ryo23@alpha.ocn.ne.jp
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