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=開けてびっくり・・・?(前編)=
作者 ソルさん
「・・・どう判断すればいいんだ?これは」
人間誰しも、咄嗟に決断が下せない状況を目の前にすると考え込む癖がある。
咄嗟に決断が下せない状況とは、そう例えば映画館などで長蛇の列が出来ている時並ぶか並ばないかと逡巡する、可愛い妹二人が手料理を作ってきてくれ、どちらか一つを選ばなければいけない、などなど・・・
目の前に自分の理解を超えたものがあるときも、つい考え込んでしまうだろう。
今の俺の状況が正にそれだった。今回の場合、考え込む前に驚きが加わってはいるが・・・
家に帰ってきて玄関を開けたら巨大な卵が転がっていた、などと人に言っても信じてもらえるはずがない。だが今実際に目の前に、俺の背と同じくらいの真っ白な卵があるのだ。
「どんな鶏なんだろうな、こんなでかい卵を産んだのは・・・」
などとつい、わけの分からないことを口走るのは人間の特徴だ。
こんな巨大な卵なんかあるはずがないのに、そのあるはずのないものを産んだ鶏なんか想像しても意味は無い。
またこんな状況を夢だと思い込もうとするのもその特徴の一つだろう。
・・・割ってみるか。
だが俺はそうは考えない。現実は現実だと割り切って、その事実を受け入れる。
その信念の下、取り敢えずその卵を割ってみる事にしたようだ。
鬼が出るか蛇が出るか・・・黄身と白身が出てきたら話は早いんだが。掃除をするだけでいいんだから・・・
思えば、この時から俺はすでに壊れていたのかもしれない。
こういう状況に陥った時、精神がパニックを起こすこともあるのだから・・・
「さてどうやって割ったもんか・・・」
普通の卵は何かにぶつけて割るけど、このサイズだとちょっとなあ・・・
色々と試してみるか。
ーその1 正拳突きで破壊してみようー
「せぃあっ!!!!」
ドズン!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・
「痛ってーーーーーーーーー!」
何だ、この卵は!あいたたた・・・・・・指の皮がめくれちまったぞ。
・・・失敗・・・
ーその2 "のみ"で削ってみようー
「せーの・・・」
カツーン・・・
カツーン・・・
カツーン・・・
カツーン・・・
カツーン・・・
「・・・・・・だぁーーーっ!!傷一つつかねぇじゃねえか!なにで出来てんだ、この卵!?」
・・・失敗・・・
ーその3 近代兵器を投入してみようー
「電ノコ、ドリル、チェーンソー、レーザー・・・よくもまあ、これだけ集まったもんだ」
まずは電ノコでいってみよう。
ギュイーーン・・・・・・
ガガガガガ・・・・・・パキン!
あ、歯が折れた・・・次、ドリル。
チュンチュンチュンチュンチュン・・・
お、いけるか?
チュン・・・ブスンブスン・・・キュ・・・ウウン・・・・・・
あらら、止まっちゃったか・・・次行こう・・・
「やっぱりチェーンソーと言えば、この仮面だろう」
ブイーーーーン・・・
『フォッフォッフォ・・・ワルイコハイネーガ?』
・・・なんか違うな。これじゃやまはげだ。まあいいや、取り敢えず卵を・・・
ガキン!チュイーーーーー・・・
プスン・・・プスン・・・
なんだ、もう終わりか?意外に馬力がなかったな。殻には食い込んだんだけど・・・
「さて、最後の切り札。科学技術の粋を集めた最高傑作、熱を一点に集めて極限まで上昇させ、一気に放射する機械!」
要するにレーザーなんだけどな。さて、さっき傷をつけた箇所に焦点をあわせて・・・
シュウーーー・・・
ジュウーーー・・・
おお、だんだん卵が赤くなってきた・・・今度こそいけるぞ、これは・・・
バスンッ!
あれ?止まったか?ええと・・・・・・・・・なんだ、ガス切れだよ。もうちょっとだったんだけどなあ。
・・・失敗・・・
ーその4 近代兵器を投入してみよう・改ー
「もうまどろっこしいのはやめだ!一気にふっとばす!!」
ここでとりいだしたるはプラスティック爆弾。しかもリモコン式。
何か無いかとポケットを探ったら出てきた代物・・・大丈夫かよ!?
さてこれを卵の表面にペタペタペタ・・・と、これでよし。後は物陰に隠れてスイッチを押せば・・・
準備OK、スイッチオン!
・・・・・・・・・・・・
ん?爆発しないな・・・どうしたんだ?・・・おい、しっかりしてくれよ!
バン!!
チュドーン!!!
「・・・えほっえほっ・・・爆弾叩いたら爆発するのは当たり前か・・・」
それにしてもこの爆発でびくともしないのは絶対におかしいぞ?
・・・失敗・・・
ーその5 原点に返ってみようー
「ゆで卵は額で割ると美味しいという・・・これがゆで卵ならそれがそのまま使えるはず!」
はぁっ・・・ごつん!!
ピシ・・・ピシピシピシ・・・パーン!
「やった!割れたぞ!・・・なんか非常に理不尽なものを感じるが・・・さて中身は?」
鬼がいるか、蛇がいるか、黄身と白身が出てくるか・・・・・・っておい!
「咲耶!!何で卵の中なんかに・・・大丈夫か!?」
取り敢えず殻から引っ張り出すか・・・うんせ、うんせ・・・・・・意外に重いな。
「何かおっしゃって?お兄様?」
「おお!咲耶、気が付いたか。心配したぞ」
しまった!声に出てたか!!
「だ〜れが重いんですって?まさか私じゃあないわよねえ」
「咲耶!にっこり微笑んだまま卵を持ち上げるんじゃない!」
しかも殺気のようなものまで感じるし・・・とりあえずごまかさないと危険だ・・・
「咲耶・・・状況を説明して欲しいんだが・・・」
「時間はたっぷりあるわよ、お兄様」
「な、何の時間?」
「もちろんお兄様の暴言を正す時間よ」
ごまかしきれませんでした・・・
プラスティック爆弾でも壊れなかったこの卵、内側からの衝撃には意外と弱かったんだなあ・・・
「さあ、お兄様。この卵についてなんだけどね・・・」
「その卵っていうのは、今俺の頭にかぶさってる殻のことか?」
「まあ、お兄様、卵の殻の帽子なんてとってもプリティーよ」
「それが俺を卵で散々叩きまくったやつの言う台詞か?しかもにこやかに・・・」
「細かいことは気にしないで、お兄様。それでこの卵なんだけど・・・」
ま、確かに卵の殻は細かくなってあたりに散乱してるがな・・・説明が先だ。
「どうも千影と鈴凛が絡んでるみたいなのよね」
なるほど、千影と鈴凛ね。それにしても・・・
「"みたい"ってのはどういうことだ?」
「私にもよくわかんないのよ。千影に呼ばれてついていったら大きな卵があって、『この中に入ってみないか』って」
「それで入ったのか?」
「面白そうだったから♪」
咲耶って意外に騙されやすい性格だったんだな・・・覚えておこう。
「それで鈴凛が絡んでるってのは?」
「それは私の憶測。あんな大きな卵をどうやって用意したと思う?」
「まあ、千影がどこかの世界から巨大な鶏を連れてきたか、もしくは・・・」
「卵が置いてあった部屋に変な機械が一緒に置いてあったのよ。その陰で鈴凛がこそこそしてたわ」
そこまで証拠が揃ってんなら断言してもいいと思うぞ、咲耶。
「その機械で卵を大きくした・・・と?」
「おそらくね。それに他の妹たちもやられてるはずだわ」
「本当か、それ?」
「ええ。千影が、私で最後みたいなことを言ってたもの」
そうか・・・みんな卵に閉じ込められてるのか・・・俺の額、もつかな。
「さ、お兄様、行きましょ♪あ、そうそう、みんないろんな物に閉じ込められてると思うから」
「何でそう思うんだ?」
「あの卵の部屋で私、見ちゃったのよ」
「何を見たんだ?」
幽霊でも見たか?それとも千影が召喚した魔獣と仲良くなったか?どっちにしろ咲耶の真剣な表情を見ると、かなり深刻そうだが・・・
「そう・・・桃やパイナップルを」
「ああ、そうですか・・・」
・・・ここで落とすか、咲耶。
「お兄様・・・これ、何だと思う?」
「バナナ・・・だろ、どう見ても」
色が黄色くて、しかも少しカーブしてて・・・紛れも無くこれはバナナだ。そう、妙にでかいことを除けば・・・
2階へ行こうとしたときにとんだ邪魔がはいったもんだ・・・
「にしてもこんなでかいものを階段に置いとくなんて・・・何を考えてんだ、千影は・・・」
「お兄様を階段で転ばせようと思ったんじゃない?」
「いくらなんでもそんなベタな仕掛けに引っかかる奴なんていないさ」
しかも中身入ってるし・・・
「さて、早速むくか」
「ええっ!お兄様が私の服を!?」
誰がそんなこと言ったんだよ、誰が・・・っていうか、咲耶!いきなり服を脱ぎ始めるんじゃない!
「バナナの皮をだよ・・・一体何考えてるんだか・・・」
「あら、残念・・・でもお兄様はバナナの実を見るより、私の中身を見るほうが好きなんじゃない?」
「まあ、それは確かに・・・って何を言わすんだ、おい」
つい素で返してしまったぞ。バナナの皮むくのに必死だったからな・・・
・・・・・・?反応が無いぞ・・・・・・咲耶・・・さん?
「ああ・・・やっぱりお兄様はそういう趣味があったのね・・・」
「俺にはそんな趣味は無い!断じて無いから、うっとりとした表情を浮かべながら服を脱がんでくれ・・・」
全く・・・さてこのバナナの中には何が・・・いや、誰が・・・
「うーん・・・あっ、おはよう、おにいちゃま」
「おう、おはよう花穂。バナナの寝床は気持ちよかったか?」
「えっ、バナナ・・・?きゃっ」
ズシーーーン!
「いたたたた・・・立ち上がろうとしたら転んじゃったよう・・・」
・・・いたよ、ベタな仕掛けに引っかかる奴・・・
「そっかあ・・・花穂、最近眠れないから千影おねえちゃまに相談したんだっけ」
・・・相談相手を間違えたな、花穂。
「それでバナナの中で寝てたのか」
「うん。ぐっすり眠れるからって・・・そのおかげで今すっごくいい気分だよっ」
花穂がいいなら良しとするか。表情もどことなく光ってるし・・・さて、次行くことにしよう・・・
「咲耶〜、行くぞ〜・・・ってなにをしとるんだ、なにを・・・」
「こんなところで服を脱いでたら風邪引いちゃうよ、咲耶おねえちゃま」
「あはははは・・・そうかもね。ちょっと寒気がしてきたわ・・・」
まあ、この時期に下着姿じゃあ風邪も引くわな・・・って咲耶のそんな格好を見て特に反応がない俺って一体・・・
「お兄様・・・」
「おにいちゃま、これ・・・」
「みなまで言うな、二人とも・・・」
今度は葡萄か・・・しかもあの卵やバナナ以上にでかい・・・
「美味しそう・・・」
「こんなに大きいと食べきれないね」
そっちかい!!そんな感想しか思い浮かばんのか、咲耶に花穂!・・・まあそれは置いといて・・・
「さてと、救出作業に取り掛かるか。花穂は房の下のほうを、咲耶は上の反対側を頼む」
「でもおにいちゃま、こんなにいっぱいの葡萄の実をどうするの?」
「それにこの葡萄、天井にぶら下がってるから上のほうは届かないわよ」
そう、この無駄にでかい葡萄、天井から垂れ下がってるんだ。うちは植物園じゃないんだぞ・・・
「だけど階段を上がったすぐのところにぶら下げとくなんて・・・千影は何を考えてるのかしらね」
全くだ・・・玄関開けたところに卵を置いとくは、階段にバナナを仕掛けるは・・・
いつからお笑いの仕掛け人になったんだ、千影。
「おにいちゃま・・・これ、重い〜」
「ああ、花穂。あんまり無理はするなよ」
「そうよ、花穂ちゃん。あなたと同じくらいの大きさなんだから、この葡萄の実は・・・」
「うん・・・・・・きゃっ」
ドテン!
「いたたたた・・・やっぱり花穂、どじだよぅ」
「そんなこと無いさ、だからとっとと収穫しちゃおう、花穂」
「・・・うん。ありがとう、おにいちゃま♪」
「立派よ、花穂ちゃん。それに今の笑顔、とってもよかったわ」
けど、実際問題どうするか・・・天井にくっついてる部分を切り落とすにしてもあんなに太いとどうにも出来んぞ・・・
・・・・・・引っ張ってみるか。
「咲耶、花穂、葡萄を持っててくれ。力をあわせて引っ張ってみる」
「はい、お兄様」
「うん。花穂、頑張っちゃうもん」
みんな張り切ってるな・・・これならいけるか。
「せ〜の・・・」
『えいっ!!』
ブチッ!
「おっとっと・・・うわわわわ・・・!」
ドドーーーン!!!
「お兄様大丈夫!?」
「おにいちゃま〜!おにいちゃまが葡萄に潰されちゃったよ〜!」
「俺は平気だ・・・それより葡萄の実は・・・?」
つぶれてなきゃいいが・・・何しろ妹たちの誰かがいるんだから・・・
「幾つか散らばってるけど、ほとんどは房についたままよ」
「そうか、よかった・・・さ、捕らわれの妹を探すぞ!」
さて、まずはこれからいってみよう・・・よっと、皮をめくって・・・
「・・・サッカーボール?」
ちっ!ダミーか!
「お兄様、こっちはバスケットボールが出てきたわよ」
「花穂、バレーボール見つけちゃったー」
それからもう出るわ出るわ・・・水晶玉にピンポン玉、金具を外した地球儀に丸めた毛糸・・・丸いものばっかりだ。
そうそう、打ち上げ花火なんてのも出てくる始末。どこから集めてきたんだか・・・
「おにいちゃま、子猫さんが出てきたよ!」
なにぃ!何で猫が出てくるんだ!?・・・と待てよ、猫だろ、猫・・・ひょっとしたら・・・
「花穂!その猫、どっかに名前が書いてないか?」
「ええっと・・・あ、首輪に『タマ』って書いてあるよ」
・・・やっぱりな!『球(たま)』だ。それにしても千影ってこんなにお茶目だったか?
「お兄様!いたわ、亞里亞ちゃんよ!」
「お、見つかったか」
「亞里亞ちゃん、大丈夫・・・?」
「しっかりして、亞里亞ちゃん。私がわかる?咲耶よ」
「・・・き・・・・・・」
目の焦点が合ってない・・・やばいかもな・・・
「亞里亞、何が言いたいんだ!」
「亞里亞ちゃん!」
「・・・き・・・きょ・・・・・・」
きょ・・・?一体何のことだ!?亞里亞は何を伝えようとしてるんだ?
「・・・きょほ〜〜〜ん・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・これで・・・三つ目か・・・」
薄暗い部屋の中で、千影がそう呟いた。その千影の前では、水晶球が淡い光を放っている。
水晶玉には兄、咲耶、花穂、そして亞里亞の4人映っていて、周りにはバスケットボールやバレーボールなどが散乱していた。
「千影アネキ、アニキってば、もうそんなに突破しちゃったの?」
「・・・ああ・・・卵とバナナ、それに巨峰が堕ちた・・・」
部屋の中に置いてある妙な機械の陰から鈴凛が顔を出し、千影に質問する。その口調はどこと無くなにかを心配している感じだ。
「あっちゃ〜・・・意外と早かったなあ・・・」
「・・・私の魔術も・・・不完全だったようだ・・・」
そして落胆の様子を見せる鈴凛と千影。とはいえ千影の場合、表情の変化が少ないので普段とあまり変わっていない。
「・・・亞里亞くんは・・・完璧だったんだが・・・」
「亞里亞ちゃんには確か、「巨峰」って言わせる暗示をかけたんだっけ?」
「・・・ああ・・・多少・・・アレンジを加えてね・・・」
そこでフフッと千影が笑った。いつもの妖しい笑みではなく、本当の意味での微笑だ。
「全員助けるのにどのくらいかかるかな、アニキたち・・・」
「・・・あと7人・・・いや6人か・・・」
そう言う二人の後ろで、もう一人がゆっくりとうなずいた。左手に人参、右手に包丁を持った白雪が・・・
=あとがき=
気分を変えて初挑戦したギャグテイストのSS『開けてびっくり・・・?(前編)』いかがだったでしょうか。
台詞が多くなってしまって少々不安気味な今日この頃・・・
中編か後編には、マイシスター可憐のキャラをも壊してしまうという禁じ手に出る私・・・
その代償として私も壊れると思います(笑)
それはともかく今までの書き方とはがらりと変えてみましたが、その点についても何か意見してくださると嬉しいです。
感想、意見はメールか掲示板にお願いします。では次回『開けてびっくり・・・?(中編)』でお会いしましょう。
ソルさんへの感想はこちら
ryo23@alpha.ocn.ne.jp
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