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咲耶のとある一日

作・雷帝紳士様


  咲耶・・・
  その美しい姿態はファションモデルに通用する。
  しかし、今の彼女の顔は強張っている。
  これでは、折り込みチラシのモデルがせいぜいだ。
  今、彼女は恐ろしい敵の前にいる。
  しかし、彼女の装備はバスタオル一枚と軽い。
  いや、その敵に対しては一番適した装備だ。
  敵はそんな咲耶の目の前で、押し黙っている。
  その敵の名は”体重計”。
  それを目の前にして、咲耶の頭の中では色々な言葉が飛び交っていた。
 (最近、よく食べたからな〜)
 (でも、その分動いたし)
 (でも、このところ雨の日が多かったし・・・)
  咲耶は、意を決して体重計の上に飛び乗った。
  ガチャガチャと、体重が数値で示されていく。
  咲耶は、薄目を開けて数値を見た。

 「きゃあああああぁーーーーーーーー」
  館の内部で悲鳴が上がる。
  音源は咲耶だ。
  館に居た者達が脱衣所へドヤドヤと駆けつける。
 「咲耶! どうしたんだ!」
  真っ先にやって来たのは兄だった。
 「なっ・・何でもないのお兄様」
  咲耶は、顔に作り笑いを浮かべている。
  しかし、その作り笑いの裏側で、一つの言葉が飛び交っていた。
 (3キロ・・増・・・)

 「おはよう、白雪」
 「おはようございます、咲耶ねえさま」
  翌朝、咲耶はいつもより遅れて食堂に顔を出した。
  その為、食堂にはほとんど人は居らず、居たのは後かたづけをしていた白雪だけだった。
 「咲耶ねえさま、朝食はいかがなさいますか?」
 「ごめんなさい白雪、私紅茶だけでいいわ」
  咲耶は、席に着いた。
  しばらくして、白雪がカチャカチャと紅茶を運んできた。
 「ありがとう」
  咲耶は、それを一口啜る。
 (紅茶が身に染みる〜)

  ボーン、ボーン、ボーン・・・・・
  リビングの柱時計が、12時の鐘を鳴らした。
 (お昼か・・・)
 「う〜〜〜〜〜ん」
  咲耶は、リビングで唸った。
 (動いてないと、食べ物の事ばかり浮かんで来ちゃう)
 「はぁぁ・・・」
  周りを重苦しい空気が包む。
 「悩んでてもだめね、この際出掛けちゃお」


  秋の自然公園
  木々の葉はすっかり紅く染まり、落ち葉はひらひらと舞い落ちる。
  何組かのカップルが腕を組み歩いている内、咲耶は一人ベンチに座っていた。
 (こういう所は、お兄様と二人で来れば良かったわ)
  今更ここに来たことを後悔しながら、咲耶はぼんやりしていた。
 「ひっく・・・ひっく・・・」
  咲耶は遠くから聞こえてくる泣き声で、現実に引き戻された。
  見ると、五つぐらいの女の子がこちらに歩いてくる。
 「どうしたの?」
  咲耶は、声をかけた。
 「あ、あのね・・・お母さんとね・・・はぐれちゃったの・・・」
  女の子は、グスグスと泣き続ける。
 「そうかー、お母さんとはぐれちゃったのね」
  女の子は頷く。
  咲耶は少し”う〜ん”と考えてから・・・
 「よし、お姉ちゃんがお母さんのこと探したげる」
 「本・・当・・・」
 「お母さんも、あなたのこと探してるハズだもの。この私に任せなさい」
  咲耶は、トンと胸を叩いた。
  だがこの自然公園、公園とは言え結構広い。
  咲耶は女の子を連れて、公園内を探し回った。

 「どうもありがとうございます、大変ご迷惑をお掛けしました」
 「いいえ・・・ご迷惑なんて・・・・」
  その後、女の子の母親を見つける事が出来た。
 「見つかって良かったわね」
 「うん、ありがとうお姉ちゃん」
 「それでは、私はこれで・・・」
  咲耶が立ち去ろうとすると
 「あっ・・・待って下さい、お礼がしたいの・・・・」
 「はい?」
  この後、咲耶は一件のケーキ専門店に招かれた。
  今、咲耶の目の前に列べられているのは、
  ケーキ、ケーキ、ケーキ、
 「ここは、私の店なんですよ。さあ、ケーキお好きでしょ、遠慮無く食べて下さいな」
 「は・・はあ、でも私・・・」
 「おいしいよお姉ちゃん、どんどん食べてね」
  今、咲耶に向けられているのは二人の
  笑顔、笑顔、笑顔、
 (うぅ・・・これは・・・・)
  こうなってしまうと、もう一言しか言えない。
 「い・・いただきます」

 (うーん、食べ過ぎたかしら)
  咲耶は、門をくぐり玄関を開けた。
 「ただいまー」
 「お帰り、咲耶・・もうすぐ夕飯だけど、どうする?」
  兄が食堂から顔を出した。
 「ご・・ごめんなさいお兄様。 私、今夜食べないから」
  咲耶は、二階へと走って行く。
 「咲耶・・・何か有ったのかな? 誰か知ってるか?」
  兄は食堂に居る者に声を掛けたが一同は、一斉に首を横に振った。
 「あっそうだ、アニキあれ直しといたから」
 「えっ・・あれって・・?」
 「ほらっ・・5s増しの体重計だよ。 午後暇だったから直しといたから」
  と言って鈴凛は、一枚の紙切れを兄に渡した。
 「鈴凛、これは?」
 「これはって、修理代の請求書だよ。 もちろん無料じゃないよ、今月セッパ詰まってるから」
  兄が請求書を見ると、それなり(それなりなのか?)の金額が書き込まれている。
 「今、手持ち無いからカードじゃだめ?」
 「だめ、でもキャッシュカードなら良い」
 「じゃ、やめとく全額引き出されそうだから」
  その後、兄は鈴凛に修理代を渋々払ったという。

                                  fin



あとがき 一応、咲耶BDSSです。 自分では、前作よりもうまくいったと思ってます。 この作品が出来上がったら、どんなタイトルが良いのか一番悩みました。 これからも精進を続けるので、よろしくお願いします。

雷帝紳士様への感想はこちら masakuni@f2.dion.ne.jp back top next