バレンタインと謎のチョコ
パンドラさん
2月14日・・・聖バレンタインデー
その日、ボクこと鈴峰衛(すずみねまもる)は少し複雑な気持ちで下校していた。
なんでこんな気持ちなのかというと、ボクがチョコレートを貰ったから・・・しかも手紙付きで。
今朝、登校したら机の中に入ってたんだ。
べ、べつにチョコレートを貰うのがイヤなわけじゃないよ。
毎年、学校の女の子達から貰ってるから。
そう言えば、あにぃはいくつくらい貰ったのかな?
こんなこと恥かしくて聞けないし。
もしかしたら、ボクの方があにぃより多く貰ってるかも・・・。
あ、いけない、話が逸れちゃったね。
ボクが本当に困ってるのは手紙の方なんだよ。
じつは、前の日の帰りに席替えがあってボクの席が替わったから『誰か間違えたのかな』て思ったんだ。
それで手紙の宛名の所を見たの、そしたら・・・。
☆▲■◎ ◇△● ▼◇
なんてスタンプが押してあったんだ。
ボクぜんぜん意味が解らなかったけど、前ここに座ってた人の所に持って行く事にしたんだ。けれど『心当たり無い』て言われちゃった。
差出人の所にも『▼◆□○ ▼★▽』て宛名と同じ様にスタンプが押してあった。
悪いと思ったけど、封筒を開けて中をちょっと見てみたんだ。そしたら。
明日の放課後、体育館うらに来てください。
て、それだけ。少しそれを眺めていたら急に近くにいた女の子達が騒がしくなって・・・。
なんか、大騒ぎになっちゃった。
結局、犯人探しみたいな事がはじまって。
まだ座席表も出来てなくて、それを創ってる委員長しか席順を知らないからすぐに四人まで絞れちゃった。
笹岡皐月・・・・(ささおかさつき)
戸川時恵・・・(とがわときえ)
斉藤清香・・・・(さいとうさやか)
西条佐久間・・・(さいじょうさくま)
それでも誰だかわからなかった。
チャンスを見計らって、みんなをやめさせたけど・・・・ボクも少し気になる。
「チェキ!!衛姉チャマ。何してるデスか?」
ウァッ!!ビックリしたぁ。四葉ちゃん、脅かさないでよ。
彼女の名前は四葉って言うんだ。去年イギリスから来たボクのあにぃの妹。一応ボクの方が年上だからお姉ちゃんなんだ。
なんか『チェキ』って言うのが口癖みたい。
「チェキチェキ!!ムムッそのチョコは衛姉チャマから兄チャマへのチョコデスか?」
四葉ちゃんはいつも使ってる虫眼鏡で問題のチョコを観察してる。
「ち、ちがうよぉ・・・たぶん、ボクへのだよ」
「チェ・・・」
四葉ちゃんが、ボクの顔を見上げたまま固まってる。
なんかイヤな空気が漂ってる・・・。
どうしてボクを見て頷いてるの?
ゼッタイ、なんか勘違いしてる。
「ほ、ほら、去年も同じだったでしょ。毎年貰っちゃって困ってるんだ」
「衛姉チャマ、それ以上言わなくてもわかりマス。四葉がイギリスで通ってたスクールでも同じような子がいたデス」
「いや、だから!!」
「それより、衛姉チャマ、そっちは何デスか?」
四葉ちゃんは今度は手紙の方に興味を引かれたみたい。
ボクは封筒を四葉ちゃんに渡した。
「ムムムッ、何か書いてありマス。どうやら暗号みたいデス。中身は・・・入ってないみたいデスね」
「うん、入ってなかった」
これ見せたら確信に変わっちゃう・・・。
そうだ、四葉ちゃんなら何か解るかも。
「ねぇ、四葉ちゃん。その暗号、何て書いてあるか解る?」
「なるほど、これは衛姉チャマから四葉への挑戦状デスね」
「うん、そんな所。四葉ちゃん解るかな」
「ちょっと待ってくだサイ。この名探偵四葉に不可能は無いデス」
十分後・・・
「ギブアップ、降参、参ったデス」
「やっぱり分かんない?」
「分かんないデス。何かヒントはありませんか?」
「無いよ・・・」
う〜ん、四葉ちゃんでもダメかぁ。
もう解らないよぉ。
「お〜い、二人とも。何してるんだ?」
あ、あにぃだ!!そうだ、あにぃにも見せてみよ。あにぃはボクよりも頭良いはずだから解るかも。
「ねぇ、あにぃ。これ見てくれない?」
「どれどれ・・・」
ボクはあにぃに封筒を渡すと今までのことを全部話したんだ。(ただし、中身の手紙の事は伏せておいたけど)
あにぃは『ふ〜ん』て言うと、ボクにこんな質問をしてきたんだ。
「衛、お前のクラスに名前が『ま』もしくは『の』で始まるヤツいるか?」
「ちょっと待って・・・・・『ま』はボクだけ『の』はいないよ」
ボク、じつはクラスの子なら全員フルネームで憶えてるんだ。
この記憶力が勉強に役立てばいいのにって思ってるんだけど・・・。
「じゃあ、決まりだな。これは衛宛だ」
「え!どうして解るの?」
「簡単だよ宛名の所に『◇△●』と『▼◇』てあるだろう。後のヤツには『くん、さん、様、殿』のいずれかが入るんだよ」
「うん・・・」
「名前が『ん』で始まるのはまずいないから『▼◇』は様か殿になるんだ。つまり『◇』は『ま』か『の』。さっき確認したけど、『の』で始まるのが居なくて衛の他に『ま』で始まる人がいないから『◇△●=まもる』て事になるんだ」
「なるほど、こんなトリックが隠されていたんデスね。兄チャマ」
やっぱり、あにぃはすごいや。たったこれだけの時間でここまで解っちゃうなんで。
「それと差出人も解ったよ」
「ほ、本当!!」
「ああ、簡単だよ。差出人は・・・・・」
作者からの呼びかけ
皆さん、このチョコの差出人が誰か解りましたか?
この暗号はコツさえ掴めばすぐに解くことが出来ます。
皆さんはもうお解りですね。
解らない人はもう一度よく考えてみましょう。
さて、いよいよ解決編です。
いったい誰がこのチョコを衛に渡したのでしょうか。
呼び出した人物の目的は。
そして、呼び出された衛は・・・・・。
解決編
バレンタインデーの翌日、放課後ボクは体育館うらに向かった。
まだ2月の半ばだから肌寒い。
グラウンドの方からは運動部の人達の声が聞こえてくるのにそこは静まりかえっていた。
「待った・・・?」
「うぅん、今来たところ」
ボクはボクを呼びだした人物に声をかけた。
たわいもない答えが返ってくる。
「ねぇ、なんであんな事したの?・・・斉藤清香さん」
ボクは相手の名前を呼んだ。
斉藤さんは肩まで伸ばした髪を揺らして振り返った。
「解読してくれたんだ。あれ」
「解読したのはボクじゃないよ・・・」
「わかってる、お兄さんでしょ」
「うん・・・」
実際、ボクは斉藤さんとあまり話したことがない。
『成績優秀でいつも一人で本を読んでいる』そんな印象の人だった。
「良かった、あなたには頭の良さそうなお兄さんがいるんだもの。『絶対解読してくれる』て信じてたの」
実際、あにぃはすごかった。
あの時の事をボクは思い出していた。
『良いかい、差出人は『▼◆□○ ▼★△』だから字数の合わない戸川時恵さんは違う。それと西条佐久間くんも違うな』
『どうして西条くんも違うの?』
『佐久間の『ま』だよ。衛の『ま』とは記号が違うだろ。だから彼も違う。あとは笹岡さんと斉藤さんだけど・・・差出人は斉藤さんだな』
『どうして斉藤さんなんデスか?』
『最初の記号と二番目の記号が違うからだよ。笹岡さんなら二つとも同じになるはずだ』
クラスのみんながやって解けなかったのを、あにぃはボクの目の前でスラスラと解いてみせた。
やっぱり、あにぃはすごいと思う。
ボクは、気を取り直して一番気になり事を聞いてみた。
「それで、こんな所に呼び出してどうしたの?」
「じつはね、あなたに告白しようと思ったから」
「なにを・・・」
「『あなたのことが好きです』て」
「!」
その言葉を聞いた瞬間、ボクの顔が熱くなった。
まさか、こんな事女の子から言われるとは思わなかった。
でも・・・。
「し、知ってるでしょ。ボク・・・あにぃの事が・・・」
「わかってる。これ、ダメもとで言ってるんだもん。私、来月転校するの。だから、吹っ切りたくて」
「・・・・・」
「今ならわかる気がするな。あなたの『お兄さんの事が好き』て気持ち。でも、いつかは終わりが来るわ。今の私みたいに」
斉藤さんはボクの隣を通り過ぎる間際、そう言った。
ボク、あにぃの事が好き。
間違ってないよね。この気持ち。
一人取り残されたボクの胸が少し痛んだ。
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