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妹達のクリスマス 〜四葉編〜

作者 Ma.さん


12月21日

今日は他の作者の兄達が来る日だ。
だから俺が準備をする事になっている。
なんで俺が・・・。
『それは俺が立案者だからだ!』
「お前一人で作ればいいじゃないか!」
『だって正月SS俺一人で考えなきゃいけないんだもん。』
「あにぃ、何してるの。」
「おう、衛か。」
「お兄様、買い物につきあって欲しいんだけど。」
「咲耶、悪いけど今日は駄目だ。」
「えー!どうしてー!」
「今日の昼から5日間他の作者の兄達が来るからだ。」
「そう・・・、やっと復讐できるのね、私を暴走キャラにしたあの作者を!」
「だー!待て咲耶!ここは落ち着け!それに来るのはその作者が書いている兄だ!」
「そうね・・、ところで今回は衛ちゃんがメインじゃないの?」
「っていうか咲耶、何故衛が今回クレスに書かれる事を知っている?たしかこの事は作者達と兄達だけの秘密だったはずだ・・・。」
「(゚o゚;;ギク!)それは気にしない。」
「・・・覇!バキューン( ・・)σ ‥…---------- ・ 」
「甘い! |\(−_− )壁!」
(ガキン!)
「はぁ・・・はぁ・・・、咲耶、その壁どっから出した?」
「持っていた木の板だけど?」
「・・・。」
「ところであにぃ、他のあにぃ達はいつ来るの?」
「あと3時間後だな。」(現在午前9時)
「・・・兄くん。」
「千影か。」
「今日は・・・驚かないんだね・・。」
「いつもの事だからな。」
「ところで・・・今回はどの作者の兄くん達が来るんだい・・?」
「えーと、確かシャインさんの所の時渡さん、高機動型カメさんの所の三神さん、綾瀬 千影さんの兄の浅葱綾(あさぎりょう)さん等だけど。」
「そう・・・何か手伝える事は無いかい・・・?」
「千影は白雪と一緒に料理を作ってくれないか?」
「わかったよ・・・・兄くん・・。」
「あー!千影に良いとこ取らせないわよ!お兄様!私も手伝うわ!」
「ちょっと待ったー!!(ノ゚ο゚)ノ」
「何?お兄様。」
「咲耶はクリスマス用の衣装を買って来てくれないか?」
「ええ、わかったわ。」
「(咲耶が作ったらどうなるかわからないからな。)」
「ボクはどうすればいいの?」
「衛はクリスマスプレゼントを買って来てくれないか?」
「うん、わかった。」
「さてと、準備をするかな。」

「えーと、お兄様にはどの服がいいかしら?」
咲耶は兄に頼まれた通りに服を選んでいた。
と、そこに。
「君のお兄さんにはこの服がいいんじゃないか?」
「??? あの・・・どなたですか?」
「君のお兄さんの知り合いさ。」
高校一年生に見えるその人は兄を知っているかのようだった。
「(誰だろう・・?)」
「君の妹さんにはこれがいいだろう。」
「あなたはいったい・・・。」
「その答はまた後で。」
そういうとその人は去っていった。
「???」
その答は家に帰ってからすぐにわかった。

何故ならその人は家にいたから。
「あ、あなたは・・・。」
「よっ、また会ったね。」
「何、どうしたの?」
「衣服店で会ったんだ。」
「にいさま、皆さん、お昼御飯が出来ましたですの!」
「とりあえず飯を食うか。」
そして昼は過ぎていく・・・。

          ***

とにかくにぎやかな昼食会の催された21日から一夜明けて。

年末の一大イベント、クリスマスも押し迫った12月22日。街は普段よりも活気付き、華やいでいるようだった。
そこいらじゅうの木がイルミネーションで飾られ、建ち並ぶ店はどこもかしこもクリスマスセールで客を呼び込み、猫はコタツで丸くなる。
街並みを構成するもの全てが『クリスマス』というデコレートをされていた、そんな中の一風景。

やたらと賑わう大通りをおててつないでのんびり歩く、とある兄妹らしき二人連れがいた。
その片割れ。肩あたりまでの亜麻色の髪を頭の両脇でちょんと結わえ、暖かそうな上着を羽織った妹らしき女の子はほんのり赤い顔でもの珍しげにきょろきょろと辺りを見回し、はしゃいだ様子でどこかを指差しては兄らしき青年に何やらまくしたてる。
このばたばたといまいち落ち着きの足りない少女、名を四葉。
見たまんま隣にいる青年の妹だった。
…ではあるのだが、去年までは海よりも深い事情により兄とは別れイギリスの祖父のもとで育ってきたため、日本のクリスマスは今年が初めてだったりする。しかも今年は『大好きな兄チャマ』が一緒、ということで、四葉のテンションはいやが上にも高くなっていた。
四葉がはしゃぐのも、まあ無理はない。
兄はそんないつにも増して元気な妹の姿を微笑ましげに見守りながら、四葉の言葉にいちいち頷いたり『あれはね…』などと教えたり。
さても、仲良きことは美しき哉。

さて。
四葉の『兄チャマあれ何デスか』『兄チャマあれ綺麗デス』もいいかげんひと段落した頃。
兄が、ふと四葉に話題を振った。

「四葉、今年のクリスマスは何か予定とかあるのかい? …25日は昨日みんなで集まった時に言われた通り、妹たちとあとそのおまけ(失礼!)で集まってクリスマスパーティだけど、それまでの間でさ」

四葉はついと兄の方に向き直り、ぷるぷる首を振った。

「ううん、今年はせっかく初めての兄チャマと一緒のクリスマスなんだもん! 四葉、ずーっと兄チャマとだけ一緒のつもりデス! …あ、もしかして兄チャマはどこかにお出かけしちゃうデスか…?」

せりふの後半で少し不安げな顔になった可愛い妹に、兄はかるく笑いかけ、少しやれやれといった風に肩をすくめつつ言ってやる。

「いいや、僕は今年誰からもお誘いが来なくてさ。さみしいなって思ってたから、四葉がいてくれて嬉しいよ」

…それは、軽い方便だった。兄のもとには友人だの何だのからいくつかクリスマス絡みのお誘いもあったのだが、兄はそれら全て「忙しいから」とキャンセルしていた。その理由は、…まぁ言わずもがなということで。
ともあれ、その兄の言葉を聞いて、四葉の顔がぱっと輝く。

「ホント!? じゃあ、四葉ずーっと兄チャマと一緒なんデスね! わあ、嬉しいデス!」
「ははは、四葉は大げさだなぁ。兄妹なんだからいつも一緒じゃないか」

兄は相変わらずの鈍感っぷりを遺憾なく発揮している。
四葉はそんな兄に「ちっちっち」とばかりに一本立てた人差し指をふる。

「もー、兄チャマの野暮天! クリスマスに一緒だから特別嬉しいんデス! …その、あの、こ、こ、こ、こい、こい…」

せりふの後半、『恋人みたいじゃないデスか』という言葉がなかなか出ない四葉。
兄はそんな四葉の心情などさっぱり分からず、突然赤くなって俯いた四葉の顔を見当違いな心配をして覗きこんだ。

「…大丈夫かい? 具合悪いの? 少し寒いかなぁ…」
「…ああもう! そうじゃなくて! んも〜、兄チャマの朴念仁!」

とにもかくにも鈍感な兄に、四葉が多少キレた。
がばっ! と顔をあげ、(兄にしてみれば理不尽きわまる身に覚えの無い)罵声をあげはじめた。

「だいたい兄チャマはニブすぎなんデス! いつもいつも四葉たちの気持ちを分かってくれなくて、ていうかわざとデスか!? あ、でもとっても優しいんデスけど、ってそうじゃなくて! いつまでもそんな兄チャマだと、『自己啓発の意欲の足りない愚鈍な豚兄チャマ』って呼んじゃいますよ! 名札も付けちゃう! 今ならサービスで高枝切りバサミもお付けしマス! それからそれから…!」
「…あー、えーと、四葉? 僕何かいけないこと言ったかな? おーい。…ダメか。参ったなあ…」

ひたすらわめきたてる四葉と、その前で困り果てる顔をする兄。
道行く人もそんな二人に視線を寄越すが、ただの兄妹喧嘩だろうということでわざわざ足を止めることもない。
ざわめく雑踏のなか、その時、その二人だけのために世界が切り離されたようだった。『浮いていた』とも言うが。

…とりあえず、10分ばかり騒いだら気が済んだらしい。
四葉はけろりと普段通りの表情に戻って、何故だか疲れたような表情の兄に向かって言う。

「それはそうと、兄チャマ! 四葉、兄チャマに手伝ってもらいたいことがあるデス!」
「………そ、そう…。あぁ、やっと終わったか…。で、何かな? 僕で役に立てること?」

『助かった』という顔の兄。それまでの話題を継続する愚を犯さぬべく、細心の注意を払いつつ四葉様にお伺いを立てる。

「んふふー、それはデスねー、四葉、サンタさんをチェキするデス!」
「…は?」
「だからー、サンタさんをチェキするデス! 探偵としてははサンタさんなる謎の人物の正体をなんとしてでもチェキしないといけマセン!」

ぐぐっ、とかわいい握りこぶしまで作って言う四葉に、兄はひたすら当惑するのみ。

「…サンタさんはサンタさんじゃないの? 何か問題があるのかい?」
「大アリです! 『サンタ』というコードネームのほかは本名不明住所不明年齢不詳、こんなアヤしいヒトはそうそういないデス! イギリスのグランパに聞いてみても、『それだけは知ってはならんのだ!』って青筋立てて怒鳴られちゃいましたし。いつもは優しいグランパがそこまで反応するんデスから、これはかなりの重要人物に違いありマセン!」
「いや、コードネームって。しかしあのじいさん、何をそこまでムキになってるんだ…」

半ば呆れる兄に、四葉は続ける。

「しかもグランパったら、イヴの夜に四葉が頑張って遅くまで起きてサンタさんをチェキしようとしてたら麻酔銃で撃つんデスよ! …それで、翌朝目を覚ましたら枕元に四葉のお願いしたプレゼントが、っていうことが毎年続いてたんデス!」
「…へ、へぇ…。あのクソじじい、何考えてんだか…」

今度、イギリスの祖父とは少しばかり話をしなければならないようだ。兄はそう思った。
そんな兄の呟きや内心に構わず、四葉は更に続ける。

「だから! 日本に来て、邪魔なあんちくしょう(グランパ)もいないことデスし、今年こそサンタさんをチェキするのデス! …で、兄チャマにも協力してもらいたいなー、って」
「え〜と…」

兄は焦った。
なにせ日本でのサンタ役は兄当人だ。当然それは四葉の知るところではないが。
…自分をチェキするのに手を貸してくれ。四葉はそう言う。

(…どうしようか? まぁ、四葉が前から欲しがってたアレはもう買ってあるからいいんだけど…、この調子じゃバレずにあげるのがなかなか難しそうだなぁ…)

ちなみに『アレ』とは新型のデジカメのこと。四葉が兄に直接ねだることはなかったが、以前からぽつりぽつりと新しいデジカメが欲しい、ともらしていたのを兄は憶えていた。
…さて、どうしたものだろう。どう言いくるめようか。
と、兄がつくづく予想外の行動ばかりしてくれる妹への対処に悩んでいると。

「…兄チャマ、手伝ってくれないの…?」
「うっ…」

四葉がすこし哀しげな顔で兄を見つめる。
兄は妹にこんな顔をされるのに何より弱い。こんな顔でお願いされてはどうあがいても断り切れない。…まぁ、四葉自身はそういった効果を自覚しているわけではないが。

(…えぇい! 何とかなるだろ!)

兄はどんぶり勘定で心を決めた。

「…分かった、分かったよ! 僕も及ばずながら四葉の助手を務めさせてもらうよ!」
「わーい、ありがとデス兄チャマ! クフフ、やっぱり兄チャマは優しいデス! 一緒に頑張ろうねっ!」

満面の笑顔の四葉とやけくそ笑顔の兄。
似通っているのにどこか対照的な表情の二人がそこにいた。

「…でも、どうするのさ? 僕が手伝えることなんてたかが知れてるけどさ…」
「そーれはもうこの美少女迷探偵四葉ちゃんにお任せデス! もうばーっちり考えてるんだから!」
「迷探偵?」

微妙に妙なニュアンスを兄が聞きとがめる。が、四葉は何も聞こえなかったように言葉を続けた。

「イヴの夜にちょっと兄チャマにお手伝いしてもらうだけデスから、それまで二人で一緒に楽しみましょっ☆ …兄チャマ、いつも色々忙しくてあんまり四葉にかまってくれないんだから、もうメいっぱい兄チャマと遊ぶんだから!」

ほんの一瞬、四葉はさみしそうな表情を見せる。
兄は思わずそれまでつないでいた手をそっと離し、妹の肩に腕をまわして言った。

「…そうだね、僕もせっかく冬休みでバイトも休みを取ったんだ。いつも一人ぼっちにしちゃってた分、なるべく埋め合わせられるようにするよ」

それを聞いて、四葉がこれ以上ないほど顔を輝かせた。

「ありがとデス、兄チャマ! 四葉、世界一幸せデス!」

…その時の四葉の笑顔は、これまでに兄が見たどんな笑顔よりも綺麗に見えて。
まるで、天使が降りてきたような。

…さてさて。
それから24日のイヴの夜まで、この兄妹は宣言通りめいっぱり二人の時間を楽しんでいった。

時には四葉がテレビか何かで見たらしいクリスマスの定番デートスポットとやらに兄を引っ張って行き、周りの熱々ぶりに辟易する兄と、何やらとにかく楽しそうな四葉がいたり。
時には兄が知り合いから『面白い』と勧められた映画に四葉を連れて行き、かなりの人気でできた行列を眺めて多少げんなりする兄と、それでもそれすら楽しそうな四葉がいたり。
時には外出せずに、家のピアノでそれぞれ演奏者一人、聴衆一人の二人だけの演奏会を開いたり、一台のピアノを二人並んで弾いたり。

とにかく二人で一緒に、最近まで離れ離れになっていた分まで埋め合わせるかのように。
四葉はいつも以上にはしゃぎ、いつも以上に笑顔が多く、兄もそんな四葉にいつもよりも更に自然に笑いかけて。
兄と妹の夢のような時間は飛ぶように過ぎていき…、

問題の24日、クリスマスイヴの就寝時間になった。
兄は四葉の部屋に招かれ、作戦会議タイム。

「…で、どうするの? 何か考えてる、って言ってたけど」
「はいデス! …それでは、いよいよ! この四葉の考えたカンペキなプランを兄チャマに教えちゃうデス!」

四葉がやたらと胸を張り、一呼吸おいてから兄をびしっと指差した。

「それはズバリ! 兄チャマに、四葉の格好してもらって四葉のベッドで寝てもらうのです!!」
「ちょっと待て」
「そして! 四葉は見付からないように隠れて、サンタの野郎が四葉のフリした四葉の枕元にプレゼントを置きに来るところをチェキする! どーですか兄チャマ? カンペキでしょう!」

兄の抗議もどこ吹く風、きっぱりと言い切る。
四葉は自信満々だ。己の計画の正しさを微塵も疑っているフシはなく、またふざけている風にも見えない。いわんや新手のいやがらせという感じでもない。
つまり、本気で兄に自分の格好をさせるつもりらしい。

「…マジっすか?」

思わずそうつぶやく兄。
現実逃避一歩手前の兄をよそに四葉はいそいそと自分のパジャマを用意している。

「さ、兄チャマ! 早く着替えて下さいデス!」
「…ってちょっと待ていいから待ってくれっ! それだけはやめてお願い、っていうかほら僕は四葉とは体の大きさも違うし髪の長さも違うし! 無理だって絶対!」

兄はとりあえず必死の抵抗を試みてみた。いくら可愛い妹の頼みとは言っても変態野郎の烙印を背負いたくはない。まだ。
が、四葉はあくまで気楽だった。

「だーいじょうぶデスって! 気合さえ入れればなんとななるデス!」
「ああもう! …オーケー、四葉。君の言い分はよく分かった。しばらく考える時間をくれないかい? 一分でいいから」

そして兄はこれまでにないほど必死で考える。
どうしたら四葉を納得させてこの絶体絶命の危機を回避できるか。

(ええと、ええと…! ただ『嫌だ』じゃ納得してくれないし、『うん、いいよ』なんてもってのほかだ! …殴って気絶させるか? …ああ、何を言ってるんだ僕! あぁ、イギリスのじいさんの気持ちがほんのちょっとだけ分かったような…。…。…そうだ! これだ、これはいいぞ…ふふふ、あはははは!)

必死に考えるうち、突如兄は天啓を得た。あまりに素晴らしい考えに笑いすらこぼれる。この閃きはもしかしたら神様からのクリスマスプレゼントかも知れない、兄はそんなことすら思った。
そして、目の前でさんざ苦悶の形相で頭を抱えた後、いきなり笑い出した兄を不思議そうに見ている四葉に向き直り。

「四葉、いいこと考えたよ。別に僕は四葉の格好なんてしなくていいし、四葉はいつも通り自分のベッドで寝ればいいんだ」
「えー、でもそれだとサンタさんチェキできないデスー!」

当然ぶーたれる四葉。それに対して兄は。

「だからさ、役割を逆転させればいいんじゃないか。四葉はベッドで寝てて、僕がサンタさんをチェキする。簡単なことだろ?」
「えぇ〜! 四葉、自分でサンタさんチェキするデスチェキするデス〜!」

駄々をこねる四葉に、兄は更に言った。

「大丈夫、僕がちゃんとサンタさんをチェキするから。それとも、四葉は僕が信じられないかい?」
「うっ…。それはぁ、そのー、兄チャマは絶対信じてマスけどぉ…」
「ありがとう。なら、決まりだ。…だいたい、僕だけベッドで寝てるなんてできないしね」
「…うー」

四葉は眉をへの字にしてしばらくぶつぶつ言っていたが、やがて気を取り直した様子で表情をいつも通りに戻した。

「分かったデス! 四葉、兄チャマにお任せするデス。…兄チャマ、ばっちりチェキお願いするデス! 写真も忘れずに!」
「はいはい。任せといてよ」

兄はぽんと四葉の頭に手を置いて請け合う。何しろサンタ役は自分だ。チェキどうこうについては、明日の朝までにゆっくり言い訳を考えればいいだろう。
こうして、どうにか(兄にとっては)話も問題なくまとまり、『おやすみなさい』となった。

兄はいったん四葉の部屋を出て四葉の着替えを待つ間に、自分の部屋に戻り四葉へのプレゼントを持ってきた。
それを後ろ手に持ち、四葉の部屋をノック。

「もういいかい?」
「はいデス!」

四葉はもうベッドに入っており、パジャマ姿の上半身を起こしていた。

「寒いから、もう布団かぶっちゃいなよ。風邪なんてひいたら明日大変だよ。…で、僕はどこに隠れればいいのかな?」
「そうデスねー、クロゼットの中でお願いしますデス。ウォークインだから窮屈じゃないデスよ。あ、寒いデスから中のブランケット使って下さいデス、風邪ひかないでね」
「ありがと、了解。んじゃ、おやすみ…」

と、部屋の照明を落として小さな明かりのみにして、四葉に後ろに回した手を見られないように妙なカニ歩きでクロゼットに向かおうとした兄を、四葉が少しもじもじしつつ呼び止めた。

「あ、あの、兄チャマ…?」
「ん? なんだい?」
「あの…ね、せっかくだから、四葉が眠るまで、そのぉ…。て、手を! 握っててほしいんデスけどぉ…」

いつものように威勢よく、ではなく多分にはにかみつつ四葉はそんなことを言う。語尾は気を抜くと聞き逃してしまうほど小さな声になっていた。
兄は少しきょとんとしてからふっと笑い、四葉のベッドに歩み寄る。そしてその傍らにしゃがんで空いている片手で四葉の手をとった。

「まったく、四葉もまだまだ甘えん坊さんだな」
「いいんデス! …せっかくの、クリスマスなんデスから…。こういうの、ずっと憧れてたんデス…やっぱり、とっても安心できるデス。これじゃ四葉、すぐにスリーピン…」
「…四葉?」

言っているそばからもう寝入ったらしい。兄が控えめに声をかけても、返ってくるのは安らかな寝息のみ。
なんとなく、兄はその後もしばらく手を離さないまま、何とも言えない穏やかな気持ちで四葉の寝顔を眺めてから。
そっと手を離して布団の中に入れてやり、腰を上げた。

(…さて、と。これでプレゼントを置いておけば僕のサンタ役は完了だけど…。明日の朝になって僕が自分の部屋で寝てたりしたら四葉が承知しないだろうなぁ…。ま、毛布もあるってことだし僕はどこでも寝られるしね…)

などと考えながらクロゼットの方に向かおうとした兄は、四葉の枕元に何か妙なものを見付けた。
それは、大きめの靴下だった。

(…靴下? …あぁ、なるほど。サンタは靴下にプレゼントを入れるってことね…。んじゃ、この中にでも…)

とプレゼントを入れようとした兄は、靴下の中に紙が入っているのに気付いた。
何気なく取り出してみると、どうやらサンタ宛ての四葉の手紙らしい。
四葉がどのようなお願いをしているのか気になって、文面を見てみると。

『サンタさんへ 
 今年はプレゼントはいらないデスから、いい子にしてますから、これからもずっと大好きな兄チャマといっしょにいられるようにして下さい 四葉より』

(………。)

兄はその手紙をしばしじぃっと見つめていたが、やがてふっと笑って肩をすくめた。

(やれやれ、こんなに慕われて、何とも光栄なことだね…。四葉、気付いてるかい? 僕だって、四葉とずっと一緒にいたいんだよ…。二人とも同じことを願ってるなら、サンタなんかに頼らなくても一緒にいられるさ…)

そしてもう一度四葉の寝顔に視線を戻す。
安心しきったような寝顔がやはりあった。
兄は半ば無意識に、そんな四葉の寝顔に顔を近づけていって…、
…そのふっくらした頬に、軽く口づけを置いた。

兄が姿勢を戻すと、四葉はいい夢でも見ているのか何とも幸せそうな顔になっていた。

「…メリークリスマス。これからもよろしくね、四葉」

そう囁いて兄は腰を上げ、プレゼントを持っていったん自室に戻り、それをまた隠した。

(…これは、今度何かの機会にあげるとしようか…。あ、明日のクリスマスパーティの景品か何かにするのもいいかな…)

そして、四葉の部屋のクロゼットへと潜り込む。

…で、翌朝。
クロゼットの中で毛布にくるまり、何をどこでどう間違ったか『クリスマスプレゼント』と称して妹が突如60人に増える、という訳の分からない悪夢(?)に悩まされていた兄は、いち早く目を覚ました四葉によって叩き起こされた。

「あーにーチャーマー!! 何寝てるデスかー!」
「……はっ!?」

がばっ、と起きる兄。しばらく辺りをきょろきょろと見回していたが、すぐに目の前、つまりクロゼットの前に仁王立ちして「ぷんぷん」という擬音がよく似合いそうな雰囲気の四葉に気付いた。
半ば寝ぼけた頭で挨拶をしてみる。

「…あ、おはよう四葉」
「グッモーニン兄チャマ♪ …じゃなくて! サンタさん! チェキ!」

四葉は条件反射で笑顔の挨拶を返してくれるが、すぐにばたばたと腕など振りつつ昨夜の兄の使命を指摘する。
兄は、いまだ寝ぼけた頭ながらに昨夜あの後考えた言い訳を思い出しながら言う。

「ああ、あれね。…大丈夫、ちゃんとサンタさんはチェキしておいたよ。…でもね、名前とか住所とか、それは絶対秘密なんだって。知られちゃったらもう誰にもプレゼントあげられなくなるらしいんだ。勿論写真もダメだったよ」
「えぇ〜〜〜!! そんなぁ…」

絶望のあまりその場にがっくりとへたり込む四葉。
兄はそんな四葉の様子に多少罪悪感を感じつつも続ける。

「…ごめんね、だけどこれから先世界中の子供たちにサンタさんがプレゼント配れなくなったりしたら大変だろう?」
「うーー…。…そうデスね、残念だけど仕方ないデス。サンタさんがいなくなっちゃったら、みんなかわいそうデスし、四葉も困っちゃうデス。…あ、そういえばサンタさん、四葉のお願い叶えてくれたカナ…?」

渋々ながら納得した様子の四葉、最後に何やら不安げにぶつぶつとぼやいている。
兄はとっさに、

「…あ、そういえば、サンタさんが『四葉ちゃんを大事にしてあげなさい』とかって言ってたけど、どういうことなんだろうね?」

と多少白々しく言ってみた。ここからはアドリブだ。
ともあれ、それを聞いた四葉は心底安心したような顔をする。

「ホントですか!? やったぁ、四葉のお願い聞いてくれたんデスね! …あ、なんでもないデスよー? エヘヘ…」
「そうなの? まあいいや。ところで、四葉は何ももらえなかったのかい?」

あくまで白を切る兄。に対して四葉は、

「うん! でもいいんデス、四葉、今年はもう兄チャマにいっぱいいっぱいもらったもん! 四葉はね、兄チャマさえいれば何も欲しくないんデス!」

と、窓から差す晴れた朝の日差しの中、まっすぐに兄の目を見てきっぱりと言い切った。
兄はどう答えたものか一瞬戸惑った結果、

「…あ、ありがとう。僕の方こそ、四葉さえいれば…」

とか何とか。口の中でもごもご言うに留まった。
四葉はそんな兄ににこにこと満面の笑顔を向け、

「これからも、よろしくね! 兄チャマ!」

と言って、やおら兄の顔に顔を近づけて。
ちゅっ、と兄の頬に口づけをした。

「んなっ…!」

昨夜、自分も似たようなことをしたくせして動揺しまくる兄を尻目に、四葉は少し赤い顔のまま素早く立ち上がり、元気に言い放つ。

「さー、今日はみんなとパーティデス! 兄チャマも、早く準備しないと遅れちゃうデスよっ!」
「わ、わかったよ…」

そうして、兄妹は今日も今日とてばたばたしつつ準備して出発して。やがて皆の待つパーティ会場へと到着した。
さあ、パーティの始まりだ!


(本文終わり)

仮あとがき:

SS書いたのは実に3ヶ月ほどぶり!
お久しぶりです、Ma.です。
とりあえずエピローグもあります。そちらもご覧下さい。
兄+妹+作者、という形式らしいんで自分もすみっこにいるらしいです。
本文に関して、ギャグとほのぼのを混ぜようとしたのですがどういうわけか出来あがったのはギャグとラブという。
…これで絶対に読み返せない(推敲は別ですが)ブツがまたひとつ。
かなりムダに苦労しましたがどうにか書き上げることが出来ました。途中の展開やら構成に納得しかねる部分も多々ありますが…。
まあ、これをきっかけにまた書けるようになるといいのですが。
ともあれ、長ったらしく四葉萌えを詰め込んだ駄文にお付き合い頂きありがとうございました。
文句、苦情、誹謗中傷、ブーイングなど頂けると幸いです。


Ma.さんへの感想はこちら
kokechin@mac.com
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