|
前 戻る 次 |
|
|
FlyingHigh〜星の海へ〜
作 雄一さん
俺は夢を見ていたはずなのに・・いつの間にか忘れてしまった。
アメリカで勉強して・・・日本でアトリエ開いたけど・・・いまいちしっくりこなかった。
でも・・彼女と出会ってようやく思い出す事が出来た。
鈴凛・・・俺の最高のパートナー
鈴凛のアメリカ行きの日程を聞いたのは出発の前日だった。
あまりにも突然な話に俺はコーヒーを吹きだすところだった。
「アメリカへ・・か・・・」
「うん・・」
コーヒーカップをテーブルの上に置くと鈴凛はうなずいた。
「出発は?」
「卒業式の次の日」
「明後日か・・・早いな」
いつかは来ると思ってた・・アメリカへ留学する・・それが彼女の口癖だった。
アメリカに行って勉強して、メカ鈴凛を完成させて飛行機を作る・・それが彼女の夢だった。
俺は冷めたコーヒーを喉に流し込む、アメリカは成績がよければすぐに上の学年に進級できる。鈴凛ならすぐに大学に行けるかもしれない。
「何年ぐらい・・なんだ?」
「五年・・ううん・・十年かな?」
「・・・長いな・・」
「うん、でもメカ鈴凛を完成させるためだもん」
「そっか」
「でさ・・・お願いがあるんだけど・・」
「ん?」
「明日・・・ずっとアニキのそばにいてもいい?」
「ああ・・かまわないぜ」
両親との挨拶は既に済ませたらしい、明日俺と鈴凛は日本での最後の思い出を作る事にした。
「やっほ〜アニキ〜」
鈴凛がアトリエにきたのはお昼近くだった、手には卒業証書と大きなトランクが握られてる。俺たちはまず昼食を済ませ、車に乗ると当てもなく走り出した。
留学さえなければこのまま鈴凛と駆け落ちしたかもしれない。
俺はそんな事を考えながら車を走らせた。
「どこ行くの?」
「鈴凛が望むならどこでも・・ただし日帰りでね」
「うーん・・どこがいいんだろ・・」
「あ・・ただし三時までにあるところに行かなきゃいけないんだ・・その辺を考えてよろしく」
「うん、じゃあ電気街」
「・・・をいをい」
しかし鈴凛の望みなので俺は車を電気街に向けた。
電気街・・よく鈴凛と一緒にパーツを買いにいったっけ、そのたびに援助援助ってうるさかったけど。もうその声も聞こえなくなるのか・・ちょっと寂しいな。
「着いたけど・・欲しいものでも?」
「ううん・・・当分ここにはこれないなあって・・だから目に焼き付けておこうかなって」
「ほほう、じゃあ援助はいいんだな」
「え?してくれるの?」
「やっぱやめた」
「ええ〜ひどーい」
そういえば俺・・いくら位鈴凛に援助したんだろ・・まあいいや。
それから俺たちは行きつけのジャンクショップの店主に挨拶したり、最新のPCの展示品をいじったり、いつも寄っていた喫茶店でお茶をしたりした。
「本当に・・アニキと会えてよかった」
「ん?」
鈴凛はフルーツパフェを頬張りながら俺の顔をじっと見ていた。
「なんだよ・・もう二度と会えないっていうような言い方は・・」
「本当に会えなくなっちゃうかもしれないんだよ」
「大丈夫だろ、メールに、電話に、チャットもあるし」
「そうだけどね・・でもアメリカと日本は遠すぎるよ・・飛行機に乗るもん」
「飛行機か、あの自家用機もそう頻繁に飛ばせるわけにも行かないからな・・燃料代とか・・」
以前バカンスで使ったあの自家用機はその後、フロートを取り付けてパワーアップさせてる。もう二度と無人島にはたどり着きたくないという鈴凛の要望で・・今でも友人のところに預かってもらっている。
「私の事を思ってるならそれぐらい安いって」
「安いか・・」
「安いよ」
「はは・・・もう四年か・・」
「うん、私とアニキが出会って四年か・・」
「小さかったもんな・・」
「アニキだって・・まだ若かったよ」
鈴凛が十一歳、俺が十八歳の時俺たちは出会った。
アメリカ留学から戻り、アメリカで稼いだ資金を元に発明専門のアトリエを開こうと考えていたところ、飛行場の金網にしっかりとしがみ付いて空を飛んでいく飛行機を見つめる一人の少女と出会った。
「おい、がきんちょ飛行機好きなのか?」
「わっ!!お兄さん誰?」
「ははは・・びっくりさせたな・・いや熱心に飛行機を見ていたから」
「ふ〜ん・・・飛行機って・・凄いんだね・・」
「ああ・・あんな大きな機体が空を自由に飛ぶんだからな」
「私も・・作って見たいな」
「は?作る?普通は乗りたいんじゃないのか?」
「うん、作ってみたい。作って大空を自由に飛びたい」
「珍しい・・本当に作れるのか?」
「作れるよ!!!私こう見えても発明家なんだから」
「へえ・・・」
「なに?その疑いの目は」
「いや・・冗談にしてはあまり面白くないなぁって」
「ひっど〜い、じゃあ家に来てよ!!凄い物を見せてあげるんだから!!」
そこから俺達の関係は始まった。
彼女のおかげで、いい土地が見つかったし、何より退屈はしなかった。
誰から見ても外見は怪しげなお店、お客なんて滅多にこなかった。
ただ一人、鈴凛を除いては・・・彼女が唯一の常連客だった。
それから資金も乏しくなり、俺は企業への売込みを始めた。
やがて契約が成立、見事請け負ったプロジェクトの試作品を完成させ、多額の資金を調達する事が出来た。
その頃だったか・・メカ鈴凛の基本構造を見せてもらったのは。
何故作ったかと聞いても「内緒」であしらわれていた。
「私・・アメリカに留学するのが夢なんだ」
そこで俺は鈴凛にアメリカへ留学を考えてる事を初めて聞いた。
その時は、近所の子がアメリカに行くんだという感覚だったけど・・
今では身近な人が遠くに行ってしまうという喪失感で溢れていた。
それからしばらくした頃だった、メカ鈴凛がアメリカに行った自分の身代わりに俺のそばに置くという話を聞いたのは。
でも・・俺は止められない、彼女にはその夢をかなえて欲しい・・そう思った。
「夢か・・」
「アニキ・・聞いていい?」
「ん?」
「アニキの夢って・・何?」
「夢・・か・・・」
なんだったんだろう・・俺の夢・・・
鈴凛と同じ年のころ留学して、一生懸命に勉強して・・弱冠十五歳で大学に入った。
日本でも少しは話題になったらしいけど・・もう遠い国のおとぎ話みたいだ。
そして年の離れた親友とともに、発明会社を作ってそこでがむしゃらに色々な物を作りつづけた。でも・・何かが足りなかった・・いつの間にか大学を卒業して・・日本に戻って、同じ発明会社を作っていた。
夢・・俺の夢は・・・
「忘れた・・何かあったかもしれないけど・・」
「ふーん」
「・・・まだ時間があるな・・・どうする?」
「あのさ・・プラネタリウム行かない?」
「いいぜ・・行こうか」
確か初デートと言えるのがそこだったと思う。
俺がよく行った小さなプラネタリウム。
電気街の隠れたスポット・・・そこで星を眺めていた・・。
星?・・なんでプラネタリウムに行ったんだろ?
俺の心の奥底で・・何かが引っ掛かった。
「綺麗だね・・」
「ああ・・」
電気街の奥にある小さなプラネタリウム・・・お客もほとんどいない。
まさに貸しきり状態だった。
大きなところとは違い、ここは解説も映像もない。
ただ星を眺めるだけ。
昔の俺は・・何を思ってここに鈴凛を連れてきたんだろ。
「ねえ・・火星に生き物いるのかな?」
「いないさ・・でも・・行ってみたいよな」
「うん・・火星なら誰にも邪魔されずに発明できるし」
「でも生活が大変だぞ」
「アニキと一緒なら平気だもん」
「そっか・・なら外宇宙に出ても大丈夫だな」
「そうだね・・アニキと一緒ならどこにでも行けそうな気がする」
「どこにでも・・・」
昔・・その言葉を聞いたような気がする・・・それもここで・・星を眺めて・・
そして俺は・・なんでアメリカに留学したんだろ・・
勉強したいから?作りたい物があったから?それとも・・夢があったから。
(星・・夢・・・宇宙・・・)
「・・・そうだ・・そうだった・・俺は・・」
思い出した・・俺の夢を・・・
「うわああああ〜」
鈴凛が喜びの声を上げる。
「町があんなに小さく見える」
「当たり前だろ・・空を飛んでるんだから」
プラネタリウムを出た俺たちはある場所に向かった。
時間はその場所についたのは三時、友人と約束した時間だ。
今日に備えて、俺は友人に熱気球を用意してもらった。
この日の最後に鈴凛を気球に乗せたかった。
「・・鈴凛・・」
「アニキ・・ありがとう」
「・・・・・」
俺は無言で鈴凛を抱きしめた、その行動に戸惑う鈴凛。
「あ・・アニキ?」
「・・アメリカ行って・・・夢かなえろよ」
「うん・・・」
「十年・・・早くても八年か・・鈴凛なら五年でもいけそうだ」
「ふふふ・・その頃には・・アニキ好みの大人の女になってるかな?」
「たぶんな・・」
「もう・・絶対になるんだから」
「・・はいはい」
「・・・・当分は・・アニキに抱き締めてもらえないのかな?」
「かもな」
「・・・じゃあいっぱい抱き締めて・・壊れるぐらいに」
「ああ・・・」
しばらく俺たちはそのまま抱き合っていた。
「・・このまま気球がどこかに飛んじゃえばいいのに・・・」
鈴凛は・・もう飛行機の中か・・・
出発の日、俺は空港には行かなかった。
鈴凛が「アニキに見送られると・・決意が鈍りそうだから・・」と言ったからだ。
それもあるが・・・俺にはもう一つ理由があった。
俺は受話器を取ると国際電話をかける。
「もしもし・・・お久しぶりです・・・実は・・・」
「はあ・・・」
私は鞄を放り投げ、ベッドの上に寝転がった。
アメリカ留学一週間・・・アニキにあえないなんてこんなに辛いものなんて思わなかった。
今私は、学校で高校二年に進級するための勉強をしている。
早く次の学年に上がればアニキに早く会えると思ったから。
辛いけど・・夢をかなえるため、アニキと再会するために・・でも・・こんなに辛いなんて。
アニキとはあれから連絡を取っていない。
また新しい仕事が入って忙しいみたい。
アニキはアニキで頑張ってるんだし・・私も頑張らなきゃ。
『ガタガタ』
「ん?何の音かな?」
隣の部屋で何か物音がする・・・確か隣は空き部屋だったような・・誰か引っ越してきたのかな?
しばらくボーっとその音を聞いている・・やがて引越しが済んだのか物音がしなくなる。
そして・・・
『トントン』
「はい」
ドアがノックされた・・・隣の人が挨拶にきたのかな?
「どなた・・・・あ・・・」
「よぉ・・鈴凛・・」
「ああ・・・あ・・・あ・・・」
アニキ・・・アニキ・・アニキだ・・
「アニキいいいいい!!!!」
私は何故アニキがここにいるのかを聞かずに抱きついていた。
だって・・一番会いたかった人だから・・
「アニキ・・アニキ・・」
「寂しかったのか?それとも、援助してくれる人が出来て嬉しいのか?」
「その両方だよぉ・・・どうしてアニキがアメリカに?」
私は一番聞きたかったことをアニキに聞いてみる。
「・・俺は・・我慢強くないんだ・・五年や十年・・・待つのは嫌だからね」
「アニキ・・」
「それに・・夢をかなえるためにもう一度アメリカで勉強したいんだ」
「夢?」
「なあ鈴凛・・俺の夢・・・いっしょに見てくれないか?」
「え?アニキの夢・・」
「プラネタリウム見て思い出した・・なんで昔鈴凛をあそこに連れて行ったのか・・思い出した」
「?どういうこと?」
「その前に答えてくれ、俺と一緒に夢を見てくれるか?」
「それって・・プロポーズ?」
「ああ・・今すぐ結婚したい・・さすがに今すぐは無理か・・鈴凛が夢をかなえたらでいい・・・答えてくれ」
アニキのプロポーズを断るなんて・・・答えは決まってる。
「・・・うん・・・いいよ・・私もアニキの夢・・いっしょに見たい」
「よっしゃ!!!」
アニキは子供のように喜んで私を抱き締めて・・キスをする。
「ねえ・・夢って?」
「俺の夢はな・・・・」
そう言うとアニキは私の手を引っ張りアパートの屋上に連れてきた。
そして空を指差し私にこう言った
「あの青の上に、俺の夢がある」
二十年後・・・テレビのニュースはある話題でもちきりだった。
『まもなく人類初、有人火星探査団が出発しようとしています。このプロジェクトには日本人の技術者の天眞悠さんそして妻の鈴凛さんそして鈴凛さんが作り出した人類初のアンドロイドが搭乗し・・』
「いよいよだな」
「うん・・いよいよだね」
「いよいよです」←これはメカ鈴凛
俺たちはシャトルの中で最終チェックをしていた。
ようやく夢がかなう・・俺の夢・・火星に・・そして宇宙に行く事。
シャトルは打ち上げられた後、軌道衛星上にある宇宙ステーションとドッキング、探査ユニットを人類初の恒星間宇宙船「ノア」に積み込み、火星に向かって出発する事になる。
「帰ったら、私の夢の最終段階に入らなきゃ」
「ああ・・悠治も鈴奈も首を長くして待ってるからな」
俺と鈴凛の胸にかけてある「FlyingHeart」のロケットには大切な家族の写真が入っている。
鈴凛の作った飛行機をバックに俺たちの宝物が笑顔で写ってる。
その写真を胸に、俺はシャトル打ち上げのカウントダウンを聞いていた。
『7・6・5・4・3・2・1・0!!!』
そして俺たちは・・・宇宙へ・・・・
雄一さんへの感想はこちら
yuuiti53@hotmail.com
前 戻る 次