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雛子とジェミニの鏡  (後編)

作 雄一さん


「雛子・・どこにその大切なもの落としたんだ?」
雛子が大切な物を落としたって言うからついてきたけど・・ジュース買いに行く時この森を通ったのか?確かこの奥って崖になって危ないんじゃあ。
「・・・雛子?」
気がつけば、雛子の姿がなくなっていた・・まさか・・崖から落ちたんじゃあ。
「雛子!!!どこ行った・・おーい!!」
俺は雛子の姿を探してあちこち探し回った。
でも・・・どこにもいない・・どこいったんだ雛子?
「おにいたま・・・」
「雛子・・そこに・・」
あれ?何か・・・違和感が・・・
「おにいたま・・こっち」
「雛子!!そっちは!!」
雛子が突然森の奥に走り出した・・この方向は・・崖!!!
俺は雛子を追って森の奥に走った、しかし雛子に追いつけない・・なんでだ?
「雛子!!おい雛・・・うわああああああああああ!!!!」
その時、森が開け・・・俺の体は重力の法則に従い落下していった。
『ドサ!!!』
「がっ・・・」
体中に激痛が走り、意識が闇の中に消えていった。

「おにいたま?おにいたま〜」
「あれ?雛子くん・・どうしたんだい?」
「あ・・千影おねえたま・・あのね・・おにいたまが消えちゃったの・・」
「消えた?」
「うん・・千影おねえたまはどうしてここにいるの?」
「ああ・・薬草を探しにね・・・兄くん・・何かあったのか」
家を出る前に兄くんの運命を占っていたら・・死神のカードが出た。
兄くんのことだから死ぬことはまず無いと思うけど・・何かあったに違いない。
「千影お姉ちゃま!!」
「ねえさま〜」
「アネキ!!」
「千影さん!!」
「やあ・・花穂くん、鈴凛くん、春歌くん、白雪くん・・」
「おねえたま〜おにいたまがいないの〜」
「いったい・・どうしたんだい?」
「実は・・」
春歌くんから詳しい話を聞く・・雛子くんが二人?
まさか・・いや一つだけ心当たりが・・でも・・
あの鏡には魔力を全然感じなかった・・・でも・・何かを見落としてるのか?
あまりにも普通な鏡だったから詳しくは調べなかったけど。
「雛子くん・・この前あげた鏡・・持ってるかい?」
「うん・・ええっと・・はい・・あり?」
「あ・・」×5
雛子くんが取り出した鏡は・・鏡面が墨で塗り尽くしたように真っ黒だった。
「どうなってるの?これ・・」
「ちょっと待って・・」
鏡を手に取り、渕を調べてみる。
お店で売ってるような平凡な鏡だけど・・・・あ・・やっぱり・・
「何かわかったの?千影お姉ちゃま?」
「・・しまった・・見落としていた・・だとしたら・・鈴凛くん、三日前の月の形・・・調べられるかい?」
「ちょっと待って・・ええっと・・」
鈴凛くんはバックからノートパソコンを取り出し調べ出した。
そしてすぐに鈴凛くんから答えが帰ってきた。
「満月だよアネキ」
「やっぱり・・月の力で魔力が発動する仕組みか・・」
「???なにがなんだかさっぱりですの」
「ああ・・説明不足だったね・・この鏡は・・」
この鏡はジェミニの鏡、鏡に映った者の姿と同じ姿をした分身を作り出せることのできる鏡だ。分身は自ら意志を持ち行動することができるが、何故か自分勝手であったり悪さばかりをする。
魔力を感じなかったのはこの鏡の効果の発動条件にある。月の満ち欠けだ・・この鏡が効果を発動するには月の光が必要なのだ。特に満月はその効果を発動させるのに絶好の条件なのだ。
「月の光・・見落としていたのはこれか」
「悪さをする・・じゃあ先ほどの雛子さんは・・」
「間違いなく分身だ・・その分身は今でもどこかにいる・・その証拠に鏡がこうなってるからね」
「・・アニキ・・まさかその分身と・・」
「そんな・・お兄ちゃま・・」
「急いで探さないと・・・風の精霊たちよ!!!」
私は印を結び風の精霊を召喚する。
地面に魔法陣が広がり美しい風の精霊が姿をあらわす。
「主人よ・・命令を・・」
「兄くんを探してくれ」
「承知・・」
風の精霊の姿が消え、あたりに風が吹き荒れる。
兄くんを探すためにあちこちに散ったのだ・・・兄くん・・・無事でいてくれ。

「・・・う・・」
どれくらい気を失ってたんだろう・・・体中が痛い・・確か崖から落ちて・・
雛子・・そうだ!!雛子は!!
「おにいたま・・」
「雛子・・そこにいたのか・・」
俺のすぐ横に雛子が立っていた。
やっぱり・・何かが違う・・言葉で言い表せないけど・・ここにいる雛子は雛子じゃない。
その証拠に、服の模様がまるで鏡に写したように反対だった。
「・・・なあ・・」
「なあに?おにいたま・・・」
「雛子の姿をしている君は誰だ?」
「え?」
「教えてくれ・・君は・・」
「ヒナはヒナだよ・・」
「いや・・・違う・・誰だ?」
その時、風がふいた・・ふき止むと同時に遠くから千影の声が聞こえた。
「・・・兄くん!!」
「兄君様!!この化け物!!」
春歌がどこから出したのか薙刀を構え刃先を雛子に向ける。
「お兄ちゃま!!しっかりして!!」
「にいさま!!」
「アニキ!!」
「おにいたま!!!」
「・・花穂、白雪、鈴凛・・雛子!!っていてて」
起き上がろうとしたが体に激痛が走り再び地面に倒れてしまう。
「大丈夫?お兄ちゃま?」
「ああ・・どう言う事なんだ?これは?」
「説明は後で・・・雛子くん、鏡を」
「うん」
雛子は手に持っていた鏡をもう一人の雛子に向ける。
「消えちゃえ!!!」
「きゃああああああ!!!」
鏡が輝きだしその光がもう一人の雛子を包み込む。
光はやがて球体になり、鏡に吸い込まれていく。
「これは・・」
光は完全に鏡に吸い込まれ、もう一人の雛子は消えてしまった。


「ジェミニの鏡・・か・・」
あれから俺はみんなに支えられ家に戻った。
それから・・・千影が変な色をした薬を飲ませたり、春歌や咲耶が看病すると言い争ってたり・・結局は雛子がすることになったけど。
そして体の痛みも治まり落ち着いた頃、俺は千影から鏡の事を聞いた。
「月の光か・・じゃあ俺があの時見たのは・・」
「それは・・きっと鏡が雛子くんの姿を取り込もうとしたところじゃないかな?」
「魔力も感じなかったのに?」
「姿を取り込むのにそんな強い魔力は必要ないよ・・・だからあの時魔力を感じなかったんだ。兄くんは・・私よりも魔力強いからそういった小さい魔力でも感じることができるんだ」
「そうなのか?」
「・・・そうだよ・・・さあ兄くん・・休んだ方がいいよ・・薬が効く頃だ」
「何が起きるんだ?」
「さあ・・まあ命に別状は無いから・・世話は雛子くんに任せるよ・・じゃあ」
「ああ・・鏡はどうするんだ?」
「鏡だけを変えておいたから・・もうこういうことは無いよ・・お休み」
「お休み・・」
千影が部屋を出て行く、そのすれ違いに雛子が自分の枕を持って部屋に入ってきた。
「雛子?」
「おにいたま・・・もう一人のヒナのせいで・・いたいいたいになっちゃってごめんね」
「いいよ・・もう」
「ねえ・・おわびに・・ヒナがいっしょにねてあげる・・いい?」
「ああ・・おいで・・」
俺は蒲団の中に雛子を招き入れる。
雛子は俺に抱きつくと包帯が巻いてある所に手をあて「イタイイタイの飛んでいけ〜」を何回もやっていた。
その可愛らしい姿を見ながら、俺は眠りについた。


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