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姉来る (後編)

作 雄一さん


リビングが殺気で包まれる・・・俺の隣には美咲お姉ちゃん、目の前には二十四の瞳が彼女をジーっとみつめている。うーん空気が重苦しい・・・露骨に殺気を出してるのが咲耶と春歌、その殺気に怯え可憐にしがみついている雛子と亞里亞。
「・・・・・あの・・美咲さん」
「あら・・・一応家族なんだからお姉ちゃんってよんで咲耶ちゃん」
「じゃあ遠慮なく・・美咲お姉さま・・・お兄様とどういうご関係で?」
「関係って・・・姉弟よ・・聞かなかった」
「再会の挨拶がキスなんて・・・ちょっと変じゃありません?」
「あら・・アメリカじゃあ当たり前よ・・」
「そう・・なんですか?」
「そうなの・・だったらあなたたちも・・」
「遠慮しておきます」
うーん・・・今にも火花が散りそうな視線のぶつかりあい・・こわいっす・・マジで。
何とか場を和ませないと・・うーんうーん・・・だじゃれは失敗すると一気に場が寒くなるし・・ん?
「皆さんケーキはいかがですの?」
をを!!!ないす白雪!!いいタイミングでケーキを持ってきた。
「じゃあ紅茶でも入れてこようか・・可憐、手伝ってくれ」
「うん」
俺と可憐は台所に入り、紅茶の準備をはじめる。
「ふう・・なんか重苦しい空気だったね・・」
「ああ・・・」
「ねえお兄ちゃん・・どういう人なの美咲さんって」
「うん・・・」
俺がまだ小さかった頃・・まだ可憐達が生まれてない頃、わずかな間だったけど一緒に暮していた女の子がいた。俺より一つ年上で・・いつもお姉ちゃんと呼んでいた。初めてあった日、その日は近所の子供からみなしごと虐められていて・・・それをかばってくれたのが美咲お姉ちゃんだった。
「みなしご?どうして・・」
「親父が家にいなかったからさ・・・いつも一人で家にいたからそう思われたんだろ・・」
「そうなんだ・・」
「ああ・・その日から美咲お姉ちゃんは俺の傍にいてくれたんだ」
「傍に・・」
「ああ・・・いつも俺の傍にいてくれた・・咲耶たちの目の前では言えない時でもね」
「優しかったんだ・・」
「うん・・お姉ちゃんというよりもお母さんって感じだった」
「お母さん・・か・・」
「でもある日・・突然いなくなったんだ・・置き手紙があって・・「さようなら」って。」
「そうだったんだ・・」
「うん・・美咲お姉ちゃんは優しい・・それだけは言えるよ・・」
「わかった・・あ・・お湯が沸いたよ」
紅茶を人数分注ぎリビングへ可憐と一緒に運ぶ。
リビングでは・・あうううまだ重苦しい空気が・・・
「さあ・・食べようか?」
「うん・・そうね・・」
美咲お姉ちゃんが白雪の作ったケーキを一口・・・
「おいしい・・・白雪ちゃんこれおいしい・・」
ふう・・・どうやらからしとかワサビは入っていないようだ・・・。うちの妹達は一部を除いてそういうことをしかねないからな。
「ありがとうございますですの」
「いいわね・・悠は・・こんな可愛い妹をもって」
「別に・・・」
「照れないの・・もう・・」
「でもにいさまのほうがもっとおいしいですの」
「うん、おにいたまの作るケーキはとーってもおいしいんだよ」
「兄やのケーキ・・おいしい」
「へえ・・昔は泣き虫だった悠がそんな事できるなんて・・」
「え?兄チャマ泣き虫だったんデスか?その話を詳しく・・」
何とか場が和んできたな・・・この調子ならみんなともうまくいくかな?
・・・あいやまだ一部から殺気が・・・
「咲耶・・春歌・・そう睨むなよ・・」
「別に睨んでなんか・・ねえ春歌」
「ええ・・別になんとも思っていませんわ」
「・・・・はあ・・いい加減にしてくれよ・・」
「・・まあお兄様がそういうのなら・・」
「兄君様がそうおっしゃるのなら・・・」
「そうじゃなくて・・・ほら他のみんなはもう仲良くなってるぞ」
既に二人以外の妹達は美咲お姉ちゃんと楽しくおしゃべりをしていた。
「ねえアネキ、アニキが全然援助してくれないんだ、だから・・・」
「だめよ、我慢しなさい」
「・・・姉くん・・今度実験に付き合ってくれないか?」
「命の保証があるならね・・」
「姉上様はいったいどのような本をお読みになるのですか?」
「恋愛小説かな?」
「お姉ちゃまは何か頑張ってる?」
「あねぇは何かスポーツしている?」
美咲お姉ちゃん・・質問攻めにあってる。美咲お姉ちゃんは嫌な顔しないでちゃんと答えている。やっぱりお姉ちゃんなんだな・・・。
「ねえ咲耶ちゃん春歌ちゃん」
「なんですか?」
「なんでしょう?」
「私が悠を取ると思ってるでしょう?」
「別に・・」
「そんなことは・・」
「・・まあ仕方がないか・・初対面だし・・あんな事したし・・」
「・・・・」
「大丈夫よ、私・・・みんなのこと好きになるように努力するから」
「努力・・ですか?」
「うん・・だって家族だもん」
「・・・・」
あ・・・春歌と咲耶の殺気が薄れてきた・・・これなら何とかいけそうか?
「・・・そうですわね・・家族ですもの・・」
「そうよね・・・でも・・お兄様は絶対に渡さないんだから」
「あら・・いいわよ、私だって負けないわよ」
いまだ殺気は残るものの・・・修羅場にはならないようだ。
その後、みんなで色々なことを話してすごした、特に四葉が美咲お姉ちゃんに俺の過去のことばかり聞いて困らせていたけど。それから美咲お姉ちゃんのお部屋もみんなで用意した。空き部屋になっていた部屋をみんなで掃除して、カーテンも・・咲耶と白雪が色についてかなり議論していたけど、結局美咲お姉ちゃんの一言で両方採用することになった。家具の方は明日来ることになってるし・・・問題は今日の寝床だった。
「いいわよ、ベットがなくたって私寝られるから」
「じゃあ予備の蒲団持ってくるよ」
「悠」
「ん?」
「・・・私ね、別にみんなからあなたを取ろうとなんて思ってないわよ」
「・・・何言ってるんだか」
「ふふふ・・・」
「・・なあ・・どうしてあの時・・いなくなったんだい?」
「・・・さあ・・」
「さあって・・」
「忘れちゃった・・・いいじゃない、今一緒にいるんだから・・」
「はいはい・・」
結局はぐらかされてしまった・・・ドアを締めて一階の押入れに向かう。
「本当は・・引き取り手が見つかったからなんて言えないしね・・・私もあの子と同じ孤児だったし・・」
そのつぶやきはドアが閉まるときの音でかき消されてしまった。
明日から十四人での生活が始まる・・・きっといつもより賑やかになるんだろうなぁ・・


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yuuiti53@hotmail.com
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