雛子の高校生活
第3話 「同類」後編
作 雄一さん
山頂につき昼ご飯になった。
みんなグループを作って持ってきたお弁当を広げる。
俺はもちろん、雛子と一緒だ。ついでに辻も・・・
「じゃーん今日のお弁当は雛子特製五色そぼろご飯デース!!」
「五色?」
中身を見ると・・・なるほど・・・確かに五色だ・・・卵に豚のそぼろ、黒ごまに、しらす、鮭・・・確かに五色だ・・。
「で?おかずは?」
「ちゃんと作ってきたよ、ハンバーグに、海老シューマイ、タコさんウインナーに卵焼きそれに厚揚げに、きゅうりの浅漬け、凄いでしょ」
「すごいな・・」
「ヒナちゃん凄い・・・おいしそう・・」
「凄いでしょ美奈ちゃん、さ召し上がれ先生」
「おう・・いただきます」
「どうぞ・・・・あ、咲耶先生」
ちょうど弁当を持って近くを通った咲耶先生を雛子が呼び止める。
「あら辻本さん、辻本先生」
「これからお昼ですか?」
「ええ・・」
「一緒にどうですか?いいでしょ?お兄ちゃん」
「ああ、先生の都合がいいなら」
「それじゃあお言葉に甘えて」
咲耶先生も混ざって賑やかな昼食がはじまった。
女の子同士の食事らしく、話し声がたえない。
初めは辻がいるせいか、芸能界の話題で盛り上がっていた。
スタップの木本と歌手の大柳が付き合ってるとか、超有名俳優のAが実は若い愛人を囲っているとか、お笑い芸人の岡本が有名女優の告白を蹴ったとか・・・そのうち話題は恋愛になっていった。
「でさ・・やっぱり青道館高校の生徒会長と三年の三崎さん付き合ってるよ」
「マジで?」
「うん・・だって昨日腕組んでるところ私見ちゃったもん・・いいなぁ・・私もかっこいい彼氏欲しい・・」
「私も・・・ヒナちゃんはどう?」
「え?私?」
「ヒナちゃん可愛いからすぐに彼氏とかできるんじゃないの?」
「そんなこと無いよぉ・・・」
「無理だよ貴子・・・だってほら、すぐ目の前に保護者がいるじゃない」
「あ・・そうか・・・残念だねヒナちゃん」
「うん・・・残念・・だね・・・」
保護者って・・俺のことか・・・まあ実際にそのとおりなんだが・・。
実際、こんな関係じゃなかったとして雛子が彼氏を連れてくるとなると・・・場合によっては殴ってるかな・・。
「咲耶先生は付き合ってる人とかいるんですか?」
「私?」
「はい・・先生綺麗だからもてるんじゃないですか?」
「ええもてたわよ・・ファン倶楽部もあったわよ」
「本当?」
そういえばそんな話聞いたことがある。大学の時も学園祭のミスコンで優勝してたっけ・・。確かに綾本咲耶は綺麗だ・・・でも・・・誰かと付き合ったという話は聞いたことがない。いろんな噂があったな・・・レズだとか・・実は男だとか。
「で、今はどうなんですか?」
「全然・・フリーよ・・」
「ええっ!!うそ!どうして?」
「そういう出会いが少ないからよ・・・今は仕事が恋人かな?」
出会いが少ない?そんなことは無かったと思うが・・・友人に誘われて何度か彼女と一緒に合コンに行った事があるけど・・・相手からかなりのアプローチを受けていたのを覚えてる。中にはホストとかもいたなぁ・・あれ全部蹴ったのか?
「悠ちゃんは彼女とかいる?」
「いないぞ・・・欲しいけど・・・今は手のかかる妹がいるからな・・」
「ちょっと手のかかる妹って私のこと?」
「お前しかいないだろ、悔しかったらもうちょっと勉強しろ」
「ええ〜」
昼が終り、片づけを終ったら近くの湖を回り、下山することになっている。幸いなことに雛子の足はそんなにひどくは無いらしく、おんぶの必要は無くなった。当の雛子は残念そうな顔をしていたが・・。
「あーあ・・・帰りは楽だなって思っていたのに・・」
「世の中そんなに甘くは無いさ・・・足大丈夫か?」
「うん」
生徒たちも行きの元気よさはどこに行ったのか、帰りは黙々と歩いてる。
引率の先生達も寡黙になっている。
「でも・・・不思議だよね・・」
「ん?」
「咲耶先生・・・付き合ってる人いないんだって」
「らしいな」
「お兄ちゃんのことが好きだったりして」
「まさか・・・そしたらお前はどうするんだ?」
「取られないようにしっかりと捕まえてる」
「あっそ・・」
「返事に愛がない!!」
雛子はそう言うと俺に抱きついてくる。
「おいおい・・俺をクビにするつもりか」
「いいじゃないの・・可愛い妹のちょっとした悪戯なんだから」
「仲いいんですね」
「あ・・咲耶先生・・」
「どうも・・」
ビックリした・・・教頭だったら一瞬でクビだぞ・・・
「まるで恋人みたいね」
「いや〜手のかかる妹で」
「こらこら・・・」
「いいわねぇ・・・」
「あ・・咲耶先生もしかしてヤキモチ?」
「まさか・・・確かに辻本先生はいい人だけど・・・」
「そんなこといってるから恋人がいないんじゃないんですか?」
「こら雛子」
「いるわよ・・」
「え?」×2
やっぱりいたか・・・あれだけもてたのに恋人が一人もいないなんておかしいと思ったぜ。
「だってさっきはいないって・・」
「うふふ・・・変な噂立てられたらたまらないもん・・」
「そんなものかなぁ・・・?・・で誰?どんな人?」
「うーん・・・かっこよくて・・・頭よくて・・・」
「それでそれで?」
「一言で言うなら・・・あなたと辻本先生かな?」
「え?」
「うふふふ・・・よかった・・同類がいて」
俺たち?どういう意味だろ・・・同類って。
まさか・・・な・・・
ちょっとした疑問を残しつつ、俺たちは無事に下山することが出来た。
「さよなら先生」
「さよなら〜」
「明日よく休めよ!!」
バスが学校に到着し、帰りの連絡を終え生徒たちが帰っていく。
ふう・・・疲れた・・・明日はゆっくり家で読書としゃれこもうかな?
「おにいちゃああああん・・・・」
「どした?」
「つかれたぁ〜・・おんぶ・・」
「高校生だろ・・・しっかりしろ・・」
「ふぃいいいい・・・・・」
「仕方がないな・・」
俺は雛子を背中におぶってやる。ふう・・甘やかしすぎかなこれは・・・。
まあ・・・足のこともあるしな・・・。
「あ・・・咲耶先生・・・」
「ん?本当だ?」
雛子の指す方向を見ると、男性と腕を組んで歩いている咲耶先生の姿があった。
ほう・・・あれが咲耶先生の彼氏か・・・
「ねえ・・後つけてみようよ・・」
「いいねぇ・・だったら背中から降りろ・・」
「うう・・」
雛子を背中から下ろすと俺たちは尾行を開始した。
教師たる者なんということを・・・って思ったけど今はプライベートの時間だからな・・・。
俺たちは一定の距離を保ちながら咲耶先生の後を追った。
「何はなしてるのかな?」
「さあ・・・・」
しばらく後をつけていると二人は公園の中に入っていった。
俺たちも姿を見失わないように後をつける。
やがて二人は噴水前のベンチに座った。
俺たちは話し声が聞こえる程度に接近する。
「ふう・・疲れた・・・」
「大丈夫か?」
「うん・・・でもわざわざ迎えにこなくても・・」
「たまにはいいだろ・・・これからどうしようか?」
「とりあえず家に帰ってシャワー浴びたいなぁ・・ねえ一緒に入る?お兄様?」
ん・・・なんだって?
「お兄様?」×2
まさか同類って・・・・・
「世の中って意外と狭いのね・・」
「ん?」
「今日ね、私たちの同類を見つけたの」
「??」
「お兄ちゃんっ子て私だけかと思った・・」
「その子も・・・自分の兄のことを?」
「たぶんね・・・」
「ふーんいるんだ俺たち以外にも」
「しかも先生と生徒・・・これは面白くなるわよ・・」
まさか・・・ばれたか?
いや・・・話から推測するにまだ確信をもってないみたいだ。
しかし、咲耶先生も俺と同じだとは・・・だから同類か・・・本当に世の中って狭いな。
だから、合コンの時男達のアプローチを蹴っていたのか・・。
その後二人は明日の過ごし方について話し合い、仲良く公園を出て行った。
俺たちもその公園にいる理由はない、また雛子を背負い家路につくことにした。
「・・同類って・・・」
「こういうことか・・」
「本当・・・世の中って狭いね」
「ああ・・・」
「仲・・・よかったね・・」
「ああ・・」
「私たちも将来・・・あんな風になれるかな?」
「知らん・・」
「もう・・・お兄ちゃんたら・・」
やがて背中で寝息を立て始める雛子・・・
あの時は知らないって言ったけど・・俺と雛子・・きっと時がたってもあんな風に仲良くしていられるよ。疲れた体と雛子を背負い、俺は黙々と家を目指し歩いていった。
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