雛子の高校生活
第3話 「同類」前編
作 雄一さん
「あなただけのシャイニングスタ〜♪」
バスの中に歌声が響く。今日は遠足、生徒たちがはしゃいでいる。
みんな元気いいな・・・俺なんか昨日夜遅くまで遠足の準備していたから眠くて眠くて・・・雛子も俺と同じ状況だったのに元気いっぱいに歌っている。いいねぇ・・若いって・・(←おやじ)目的地までまだ時間があるし・・・一眠りしようかな?
「先生!!何か歌ってよ!!」
生徒の一人が俺の目の前にマイクを突き出す。
「いや俺最近の曲に疎いし・・」
「いいからいいから・・何か歌ってよ・・・」
「うーん」
「私歌おうか?」
そこに名乗りをあげたのが綾本咲耶先生だった。いやー助かる・・。
咲耶先生は早速マイクを持つと曲を選び始める。やがて曲が流れ始める。
この曲って・・・
「綾本咲耶、Love Destiny歌いまーす!!」
うわ・・のりにのっている・・・
こりゃ眠れそうに無いな・・・・雛子ものりにのってるし・・・
女の子の声ってうるさいからなぁ・・・眠れそうにもないや・・
ふう・・・コーヒーでも飲もうかな?確かポットの中に・・・
「先生、どうぞ・・」
「・・・辻・・」
あれから辻の様子が変わった、以前はマスコミのことを考えていたのかあまり目立った行動は無かったがあの事件以来、お昼を一緒に食べようというわ、一緒に帰ろうというわ、テレビに出てくれませんか?というわ、カメラの前で腕組もうとするわ(そのときは雛子が阻止して未遂に終ったが)それでもマスコミに追われないのはまさに奇跡に近いだろ。
「・・ありがとう・・」
「クッキーでもいかがですか?今日、朝早く起きて作りましたの」
「あ・・・どうも・・」
「私がもらう!!」
横からいつの間に来たのか雛子が辻のクッキーを無造作につかんだ。
「ヒナちゃん・・・(怒)」
「まあおいしいクッキーですこと」
雛子・・目が笑ってないぞ・・・
頼むから仲良くしてくれよ・・・・俺・・胃が痛い・・・。
「いえ〜いどうもありがとう!!」
お・・・咲耶先生の歌が終ったか・・・これで少しは静かに・・・
「次!!悠ちゃん歌って!!」
おいおい・・・しょうがないな・・・
「うっし・・・じゃあ先生がとてもレトロな歌を歌ってやろう!!」
「おお〜」×ALL
結局・・・長淵剛の「乾杯」や坂本九の「明日があるさ」を熱唱した・・・。
「先生〜まだつかないの?」
生徒の一人が文句を言い始めた・・・体力無いなぁ・・
「もう少しだぞ・・頑張れ」
実際あとどれぐらいでつくかはわからないが・・・
しかし・・・山登りかぁ・・・何年ぶりかな?
大学の時、山岳部で鍛えたからな。こんなの山のうちに入らないぜ。
そんなことを考えてる時だった、後ろのほうで何かが倒れる音が聞こえた。
「先生!!雛ちゃんが」
「え?」
雛子に何か遭ったのか?俺は急いで山道を駆け下り雛子の元に駆け寄る。
ジャージのいたるところに土がついている。
「どうしたんだ?」
「木の根に足を引っ掛けちゃった・・・」
「大丈夫か?」
「うん・・・だいじょう・・・いた・・」
捻挫してるのか・・・俺は雛子の足首を調べる。
あやや・・・完全に捻挫してる・・・この状態で山道はきついな。
雛子は平気な顔してるけど、絶対に無理してる。
「これぐらい大丈夫だよ先生・・」
「本当に大丈夫?ヒナちゃん?」
「うん、ほら・・・いた・・・」
「無理するな・・ほら・・」
俺は雛子をおこすとそのまま背負う。
「せ・・先生・・」
「もう少しだからな・・・山頂についたら保健の先生に見てもらうんだぞ」
「うん・・・」
他の生徒たち(特に辻)は羨ましそうにその光景を見ている。それにしても雛子・・・成長したなぁ・・昔は軽々とおんぶできたのに。まあ・・背中に二つの柔らかい何かが当たっているからいいけど。本当に成長したなあ・・・。
「お兄ちゃん・・重い?」
「いいや」
「久しぶりだな・・・お兄ちゃんにおんぶしてもらったなんて・・」
「そうだな」
「お兄ちゃんの匂いがする・・・」
「汗臭いか?」
「ううん・・そんな事無いよ・・」
「もう少しだからな・・」
それから約三十分、背中でうとうと眠りはじめた雛子を背負い山頂まで登った。
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