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雛子の高校生活
〜プロローグ〜

作 雄一さん


ある晴れた春の日、「聖刻女学院」では入学式が行われていた。
今年で着任二年目になる俺にとってはもう慣れてしまった行事だ。
校長の長いスピーチを聞きながら俺は大きなあくびをした。
この聖刻女学院は偏差値はそこそこに高く、芸能人も卒業していたりする。
校則もあまり厳しくはない、制服も可愛いと評判だ。
しかも女学院だから周りは美少女だらけ、はたから見てユートピアに見えてそうだが実際はそんなに甘いものじゃあない。男を近くで見る機会が少ないのか校内を歩くだけでじろじろ見られる。初めてここにきたときはその視線にびくびくしていたもんだ。
今ではすっかり慣れてしまい、生徒からの評判も良く「悠ちゃん」と呼ばれている。
「・・・・そろそろ終わりか・・・」
校長のスピーチが終り、新入生が講堂から退場していく。
これであとは教室で新入生に挨拶をして終わりだ。
今年はどんな子が入ってくるかな・・・・そんなことを考えながら俺は職員室に戻った。

 

職員室に戻り、服装を整える。第一印象が肝心だからな・・・ここはしゃきっとしないと。ネクタイ曲がってないよな・・・よし。
準備万端、いよいよ新入生と顔合わせだ。
職員室を出て担任を務める1の3に向かう。
「さーて・・・・」
教室のドアを開けると中では新入生がずらっと座っていた。うーんやはり緊張するなあ・・。
「起立」
俺が号令をかけると新入生が一斉に立ち上がる。
「礼、着席」
新入生が座るのを見計らい俺は黒板に自分名前を書く。
「初めまして、今日からこのクラスの担任を担当する辻本悠ですよろしく」
立ち上がりは順調だ、担当教科と学校のことを簡単に説明、そして出席確認をはじめる。
「では・・・秋元聖子」
名簿を見ながら生徒の名前を呼んでいく。返事をした生徒の顔をしっかりと覚えていく。まあ一回じゃあ覚えられないけどな。次々と生徒の名前を読み上げていく。どの子も個性のある生徒ばっかりだ。生徒たちを見ていると俺はある一人の少女のことを思い出す。雛子・・・お前も今ごろどこかの高校で入学式をやっているのかな・・・受験でEメールや電話でしか話せないけど・・・元気かな?帰りに久々に雛子に会いに行こうかな?きっと喜ぶだろうなぁ・・・会ったらどうしよう・・・デートして・・・それから・・・
(ん?)
名簿を読んでいくとある生徒の名前が目に付く。見覚えのある名前であり、今一番会いたい人・・。
「辻本雛子」
「はい」
雛子?・・・まさかな・・・そう思いながら俺は返事をした生徒の顔を見る。
「あ・・・・」
そのまさかだった・・・・名前を呼ばれた少女・・雛子は意味ありげに笑みを浮かべると席につく。その笑みを見て思わず名簿を落としそうになる・・・・・
「雛・・・子・・・」
夢かと思った・・・そういえばどこの高校行くか聞いてなかったな・・。聞こうとするといつもはぐらかされてしまう。まさかここを受けるとは思わなかった・・。

 

 

「信じられないなぁ・・・お兄ちゃんがヒナの先生だなんて・・」
「それはこっちの台詞だ、ビックリしたぞ」
職員控え室を訪ねてきた雛子はニヤニヤしながら俺に寄り添ってくる。俺は給湯室から持ってきたポットと急須でお茶を入れる。幸いなことに他の職員は職員室で雑務に追われてれており控え室には俺と雛子だけだった。
「ヒナ・・嬉しいなぁ・・・これからずっとお兄ちゃんと一緒なんだもん」
「・・・俺はちょっと複雑だな・・・」
「ええ!!どうして?嬉しくないの?」
雛子がものすごい勢いで詰め寄ってくる。
「嬉しいけどさぁ・・一応は先生と生徒なんだし・・・」
「いいじゃないの気にしない気にしない」
「そう言う訳にも行かないだろ・・・とにかく、学校では俺のことを先生と呼ぶように」
「はーい・・・・・ねえお兄ちゃん・・」
「こらこら・・・ちゃんと先生と呼べ・・・」
「はい・・先生・・・実はものすごく重大なお願いがあるんだけど・・・」
「なんだ?テストの問題を教えろって言うのは無しだからな」
「うん・・・あのね・・・ヒナ・・・お兄ちゃんと一緒に暮らしていいかな?」
ぶ!!!
思わずお茶を吹き出してしまう。
なっ!!い・・・一緒に暮らす!!
「お兄ちゃん・・・汚い」
「わりい・・・でも一緒に暮らすって・・・」
「お父さんとお母さんには許可取ったよ・・・それにお兄ちゃんの家なら学校通うのも少し楽になるし・・・ダメ?」
「・・・・・うーん・・」
まあ一応兄妹だしそんな変な噂が立つことはないけど・・・先生と生徒だし・・・でもなぁ・・・
「だめ?」
「そんな事ないぞ・・・まあいいけど・・」
「やったぁ!!!!じゃあ早くお兄ちゃんの家に行こう!!」
「あ・・・ああ・・・」
「えへへへお兄ちゃんと一緒だぁ・・」
「一緒に暮らすのはいいけど・・・着替えとか家具はどうするんだよ」
「大丈夫、必要な物は明日家から持ってくるから」
それから俺と雛子は学校を出ると家の近くのスーパーで買い物を済ませる。雛子の熱い要望により、今日の夕食は雛子が作ることになった。家に戻ると早速雛子はスーパーで買ったエプロンをつけ台所に立ち料理をはじめた。その姿を見ながら俺は買ってきた刺身とビールで一杯やっていた。制服にエプロンかぁ・・なんかいいよなぁこういうのって(←オヤジ)。やがて台所からいい匂いが漂ってくる。いつの間に料理の腕を上げたんだろ雛子・・・中学生の頃はものすごい料理食わされたからなぁ・・・・・炭寸前のさんまの塩焼きとか、しんがあるご飯とか、だし入れ忘れた味噌汁とか・・・
「はい、お待ちどうさま」
テーブルの上に乗ったのは野菜炒め、鮭の塩焼き、味噌汁、ご飯と純和風の食事だった。味の方もなかなかのものだ・・・。
「えへへへへ・・どう?おいしい?」
「ああ・・おいしい・・」
「良かったぁ・・・これならいつお兄ちゃんのお嫁さんになってもいいよね」
「おいおい早いぞ・・・」
「いいじゃない・・・あ、私もビール飲もうっと」
「こら!!未成年者が酒を飲むんじゃない!!しかも先生の目の前で!!」
「いいじゃないの・・こういうときだけ先生ぶらないでよ」
そういうと雛子はまだあけてない缶ビールを開け、一気に喉に流し込んでいく。
「かぁああ!!うまい!!」
「・・・お前・・いける口だな・・・」
「そうでしょぉ!!ほらほらお兄ちゃんも」
そう言いながら雛子はどんどんビールを流し込んでいく。そういえば昔親父が良く幼い雛子にビールを少し飲ませていたっけ・・・。甘酒だってがぶ飲みしていたし・・・。あっという間に缶ビールが三本カラになる。おいおいそんなペースで飲んでいると・・・・。
「ひっく・・おにいちゃあああん飲んでるぅ・・・」
「・・・・・・」
どうやらかなり酔っているらしい、このまま飲みつづけていたら明日は確実に二日酔いだろう・・・。とにかくここらへんで止めさせなければ。
「雛子・・もういいだろ・・・」
「ええぇ!!まだこれからよぉ!!」
「もう夜も遅いし・・・ほら」
「・・・はーい」
酔いを覚ませるために雛子に水を飲ませる。
「ねえ・・お兄ちゃん・・」
「ん?」
「一緒に寝ていい?」
「ああ・・・」
「えへへへ・・」
俺のTシャツを貸してやりパジャマ代わりにさせる。・・・これもこれでこうぐっとくるなぁ・・。制服をハンガーに掛け、俺たちは蒲団の中に入る。
「お兄ちゃん・・・・」
「ん?」
「ヒナ・・・今とっても幸せだよ・・」
「・・・・」
「ねえ昔みたいにぎゅっとして・・」
「ああ・・」
俺は雛子を抱きしめる、昔の小さな体とはだいぶ違う・・・俺の腕の中には大人の雛子がいた。
「・・・・やっぱりいいなぁ・・お兄ちゃんの腕の中・・」
「そうか?」
「うん・・・胸がどきどきしてとっても幸せになる・・」
「俺も・・」
「キス・・・いい?」
「ああ・・」
雛子の唇が俺の唇の触れる。
「おやすみ・・・」
「おやすみ・・」
しばらくすると俺の腕の中で雛子が寝息を立て始めた。
まさか・・雛子がうちの高校に来るとはな・・・全然考えていなかった。
しかも一緒に暮らすなんて・・・。
でも悪くないな・・・今まで一緒にいられなかった分ここで取り戻せばいい・・。
俺はこれから雛子とおくる甘い生活を夢見ながら眠りについた。


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