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いつかあなたと・・・・
作 雄一さん
「ここにしましょうか兄君様」
「そうだね・・」
晴れた日曜日・・・・僕と春歌はピクニックにきていた。
義父も義母も旅行で出かけてしまってる。僕はというと・・・大学が休講なので家でボーとしていた。
しかし春歌に「外にでも行きませんか?」と誘われ妹の春歌と一緒に出かけたのだ。
「今日は腕によりにかけて作りましたわ」
春歌が持ってきた弁当箱の蓋を開ける。
中身は形のいい御握りに、タコの形をしたウインナー、から揚げに卵焼きが詰まっていた。
「・・・これみんな春歌が?」
「はい、朝6時に起きて作りました。」
僕は卵焼きを一つつまむ。
「おいしい・・・春歌はいいお嫁さんになるね」
「ありがとうございます」
春歌は笑顔で答えると水筒からお茶を出して僕に渡す。
そのお茶を飲みながら僕はある疑問を春歌に問い掛ける。
「・・・・どうして・・」
「え?」
「どうして僕と出かけようと思ったんだ?」
「どうしてそんなことお聞きになるんですか?」
「春歌ぐらいの年頃なら同年代の友達と一緒に遊んでることが多いのに・・・・何で僕と?」
「それは兄君様にお仕えするためですわ・・・」
「・・・本当にそれだけ・・?」
「はい」
春歌は笑顔で答える。それでも僕の心は晴れなかった。なぜ僕と一緒にいるのか・・?
幼いころ、僕は父から虐待を受けていた。
母親が泣きながら止めていたが酒に酔っていた父は聞く耳を持たなかった。
ところが突然・・・・両親が死んだ・・・。原因は無理心中・・。
ギャンブルで持っていた財産を全て失い・・・
父は寝ていた母親と僕を無理やり車に乗せそして車ごと海の中に・・・・・・。
今でも夢にでる。あの時の息苦しさ・・・水の冷たさ・・・両親の死に顔・・・。
奇跡的の僕は一命を取り留めたが次に待っていたのは親戚の冷たい目だった。
・・・・あの男の子供・・・
・・嫌よ・・引き取るの・・・
・・・うちの子供も今受験で・・・
・・施設に放り込んでおけ・・・・
・・・・なっ・・・保険金?1億?
・・おっ俺が引き取るよ・・・さっきあんた嫌だっていってたから・・
・・それとこれは話が違うわ・・・私が引き取る・・・
・・・・それよりも・・・金だけを貰ってあいつは施設に・・・
母親が残した最後の財産・・・・保険金をめぐって醜い争いを繰り返す親戚。
僕の心はすっかり閉じてしまった。
そんな心の扉を開いてくれたのは春歌の父・・・今の義父であった。
彼は旧家の当主で日本舞踊や剣道など教えていた。
「いい加減にしたまえ!!この子は私が引き取る!!」
親戚の醜い争いから彼は僕を助け出してくれた。
それから彼は僕を本当の息子のように育ててくれた。今でもその事には感謝している。
お陰で昔から好きだった絵の勉強をさせてもらってる。
でも時々不安になる・・・彼もまた金目当てではないかと・・・しかしそんな不安を打ち消してくれたの
は春歌の存在だった。
「春歌はね兄君様にお仕えするの」
幼いころの春歌の口癖だった。それは今でも続いてる・・・・。
彼女の笑顔のお陰で何度救われたことか。弁当をつまみながら春歌の顔をじっと見つめる。
「兄君様・・・私の顔に何か・・・」
「ん?いや・・・・別に・・・」
僕はお茶をすする・・・・・、僕にとって春歌は妹以上の存在になっていた。
このまま一緒にいたらいつかはこの関係を崩してしまいそうで・・・・自分が怖かった・・・。
僕は以前から考えていたことを春歌に話そうと思った。丁度いい機会だし・・・・
「なあ春歌・・・・」
「なんですか兄君様?」
「話がある」
「なんですか?」
「僕・・家を出ようと思うんだ・・・・」
「え?」
「このままこの家にもお世話になるわけにも行かないし・・・・それに・・・一人でゆっくり絵の勉強をしたいんだ・・」
僕の突然の話に春歌は少し戸惑ったようだが意を決したように僕を見る。
「私も一緒に行きますわ・・」
「え?」
春歌の答えに僕は驚く。
「いいよ・・・一人で充分だよ」
「兄君様が良くても私は良くありませんわ、私は兄君様にお仕えするのですから」
「でも学校は・・・・」
「もちろん通いますわ」
「剣道や日本舞踊は?まさか僕の部屋から通うって言うんじゃ・・・・」
「ええ、もちろん」
「・・どうして・・・・僕なんかと、僕は君の想像しているようないい兄貴じゃない・・・どっちかと言えば離れた方がいいと思う・・。」
「そんなことありませんわ・・・・私から見ればすばらしい兄君様ですわ。父親がどんな方であろうとも兄君様は兄君様です。」
僕はじっと春歌の顔を見る。春歌の顔には迷いがなかった。
とても澄み切った目・・・まるで吸い込まれそうだった。
僕は目をそらす、あのまま見つめられていたら抱きしめてしまいそうな気がした。
それだけ・・・僕の心の中で春歌の存在が大きくなっているのだ。
「春歌・・・・・・僕たちは離れた方がいいと思う・・・」
「どうしてそういうことをおっしゃるんですか?」
「・・・・・理由はない・・・」
「え?」
「春歌だってまだ中学生だ・・・・いずれは好きな人が出来て結婚するだろ・・・・僕みたいな兄が近くにいたら・・・きっと邪魔になる・・・ましてや・・・血の繋がりのない兄なんて・・・・・」
「私は構いませんわ・・・」
「え?」
「兄君様と一緒にいられるなら・・・・」
「でも・・・・どうしてそこまで僕に仕えるんだ・・・そんなこと受ける価値もない僕に」
「価値なんて関係ありませんわ」
「春歌・・・?」
「好きな人にお仕えするのに価値なんて・・・」
「え?」
春歌の答えに僕は驚いた。
「好きな・・・・人・・・」
「・・・・・・はい・・」
春歌は顔を赤らめてうつむく。
「今日・・・そのことをお伝えしようと、お誘いしました・・・」
「春歌・・・・」
「知っていました・・・兄君様が一人暮らしを決心したことも・・・そして・・・私への思いも・・・」
「・・・・・・」
「昔はただ純粋に兄君様が好きで・・・兄君様にふさわしい大和撫子になろうと思い日本舞踊や剣道を習い始めました。でも・・・血の繋がりのない兄だと知った時・・・その思いは兄から一人の男性への思いに変わりました・・・」
「・・・・・」
「いけないことだと知っていました・・・たとえそれが血の繋がりのない兄だとしても」
「それは僕も同じだよ・・・血の繋がりのない妹を・・・春歌を好きになってしまった」
「兄君様・・・・」
しばらく沈黙が続く・・・・、何と言えばいいのかわからなかった。
こんな自分を春歌は好きだといってくれた。
でも・・・・僕は素直にそれを受け止めることは出来なかった。
将来・・自分があんな父親みたいにならないとは限らない。
もしそうなれば・・・春歌を傷つけてしまいそうで・・・。
「春歌・・・・やっぱり僕は・・・」
「兄君様、何もいわないで」
「え?」
「兄君様がなんと言おうと・・・私は兄君様にお仕えします。」
「春歌・・・本当にいいのか・・・?」
「はい・・」
「ギャンブルに狂って春歌を傷つけそうになっても」
「あら・・・そのときにはきつーいお灸を据えてその曲がった根性を叩き直しますわ」
「な・・・・・・・・ぷっ」
「くすっ・・・・」
「あはははははは」
「ふふふふふ・・・」
思わず笑ってしまう。確かに・・・春歌が一緒にいれば何とかなるかもしれない。
ホント・・・いい奥さんになりそうだ。
「本当にいいんだね・・・」
「はい・・・」
「じゃあ僕は我慢するのを止める・・・・。自分の気持ちに正直に・・・」
「私も・・・」
僕は春歌の手を取る。
「僕は春歌のことが好きだ」
「私も兄君様のことをお慕いしていました。大好きです」
僕は春歌を抱きしめる。胸の中にいる春歌がとても愛しく思えた。
こんなにも僕を思っているのに・・・僕は・・・。でも・・・それも今日で終わりだ。
これからは隣に春歌がいてくれる。愛する人が・・隣に。
気が付けば自然とお互いの顔が近づき、唇を重ねていた。
「・・・・なんか恥ずかしいな」
「はい・・・・」
「・・・・・・・・春歌」
「はい・・・・何でしょう」
「・・・・こうして幸せになったわけだし・・・兄君様ってのはちょっと・・・」
「そうですね・・・」
「義父さんにも言わなくちゃいけないし」
「まだいいじゃないですか・・・今はそのままで・・」
「そうだね・・そうだ・・・せめて二人っきりの時くらい名前で・・・」
「はい、悠様」
名前で呼ばれ・・・僕は照れてしまった。これから先、僕たちはどうなるのだろう・・。
幸せでいられるのか・・・それとも・・・・・・・・やめた、そんなことを考えてもしょうがない。
今は・・・胸の中の幸せを守ることだけを考えよう。
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yuuiti53@hotmail.com
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