アンジェのキス
〜春歌〜
作者 雄一さん
時は江戸末期、日本は尊皇攘夷の風が吹き荒れる、長州のとある町で時代は動こうとしていた。
「貴様ら幕府の犬とは違うぞ!!!!」
「けっ!!高杉に骨を抜かれたか・・」
人だかりの真中で、三人の男達がいい争いをしている、そのうち二人は刀を抜いていた。
「高杉の居場所を言ってもらうぜ・・」
「誰が言うものか!!!」
「では死ね!!」
一触即発、まさにその時だった
「やれやれ・・正気乃沙汰ではないな・・」
一人の浪人風の侍が三人の間に割り込んだ、その後ろには袴姿の少女が立っている。
侍は独り言のように言葉を続ける。
「いまや軍艦、鉄砲の時代というのに・・時代遅れもはなただしい」
「なにぃ・・貴様!!誰に口を利いている!!切り捨ててくれるわ!!!」
男は刀を振り上げ、浪人風の侍に向かって刀を振り下ろす、誰もが惨劇を予感していた、しかし・・侍はそれを片手で受け止める。
「な…」
「ふん!!」
刀をつかんだ手を横に振ると刀は木の枝のように折れてしまう、その光景に色めきたつ町民達。
「あ・・」
「さぁ今のうちですわ、お逃げになって」
少女は追い詰められていた男に声をかける、男は「かたじけない」と礼を言うとその場から脱兎のことく逃げ出した。そして侍と少女も人ごみの中へまぎれていった。
「あ・・しまった!!」
「やめろ!!」
追いかけようとした仲間を男は止める。
「・・相手が悪い・・ここは引き上げるぞ・・」
「あの男も志士ですか・・?」
「いや・・しかし油断できぬ男じゃ・・佐久間殿に連絡を・・」
町外れの道場、この道場には男と少女が住んでいる、二人は兄妹である。
幼いころに両親を無くし、今は二人で道場を切り盛りしている毎日である。
しかし、門下生は一人もいなく、道場もさびれてしまい、今では両親の残した財産と毎日の内職で食いつないでいる毎日である。しかし二人はそんな毎日を幸せに暮らしている。
その道場の縁側で侍は昼寝をしていた、その男の下へ少女が木刀を構えて現れる、そして大きく振りかぶり、まっすぐ振り下ろす・・が、男は寝返りをうってそれをかわす。
「まだまだ・・だな春歌」
「兄君さま・・」
「まったく、それでは俺を超えることは出来ないぞ」
男は起き上がり大きく背伸びをする、そして枕もとにおいていた湯飲みをつかみ庭の草むらに投げつける、湯飲みは草むらの中に吸い込まれる・・そして「ぽか」という鈍い音が響き一人の男が草むらから立ち上がった。
「おい、親友に向かって何を投げつけるんじゃ!!」
「だったら、正々堂々門から入れ晋作」
晋作と呼ばれた散切り頭の男は草むらから出るとそのまま縁側にどしっと腰掛ける。
「なにゆうとるんじゃ、わしゃ追われとる身ぜよ、そんな堂々としていられるか」
「わかったわかった、春歌・・茶を頼む・・」
「茶じゃない、酒じゃ酒!!まったく・・祐之介、相変わらず昼寝が好きじゃの」
「まぁな、晋作こそ尊皇攘夷か・・命を粗末にするなよ・・」
「わしゃそう簡単に死にはせんわ、この日本を変えるまで・・まだまだ生きなければならん!!」
彼の名は高杉晋作、幕末に生きた若き革命家であり維新回天の仕掛け人でもある。
二人は幼いころからの親友であり、家族同然の存在でもあった。
「なら酒を控えろ・・顔色が悪いぞ・・」
「兄君さまの言うとおりですわ」
そこに春歌が茶を運んできた、晋作はあからさまに嫌な顔をし、祐之助を睨みつける。
「そんな露骨に嫌な顔するな晋作、茶は体にいいんだぞ」
「・・そーかいそーかい・・まったく・・いい知らせを持ってきてやったのに・・」
「・・すると・・」
祐之助ははやる気持ちを抑え、晋作の言葉に耳を傾ける。
「話はすべて通った、あとは…」
「そうか・・」
祐之介は安心したようなちょっと複雑な表情をすると茶を一口すする、そしてしばらく考え込み・・そして深く深呼吸をする。
「日時は?」
「明日だ・・」
「…わかった、手はずは整っているな」
「ぬかりない、だが…」
晋作は春歌をチラッと見ると声を潜め、祐之介に耳打ちする。
「春歌殿には話したのか・・彼女にとって重大なことぜよ」
「いや話してない・・ここで話すとこちらの決心が鈍るからな・・」
「お主という奴は…」
「俺にとっても重大なことだ、準備が出来次第出発する」
「わかった、じゃ・・わしはいくぜよ・・春歌殿、またいつか会おうぜよ」
「あ・・晋作様・・」
晋作は茶を飲み干し、立ち上がると玄関から出ずに庭の壁を攀じ登って出て行った。
祐之介は空を見上げながらしばらく考え込む、そして大きくため息をついた
「あいつ・・病で苦しいはずなのに・・」
「だったらなぜ止めなかったのですか?」
「止めたって無駄さ、あいつはそういう男だ・・それよりも春歌、外に出るぞ・・準備を」
「あ・・はい」
祐之介は立ち上がると、出かける準備をはじめるために、部屋に戻っていった。
「ここからよく出島が見える・・」
「はい・・すばらしい眺めです・・」
春歌と祐之は出島が見える丘に立っていた、空は既に夕闇に包まれている。
なぜここにつれてこられたか春歌はしらない、ただここは二人が小さいころよく遊びにきた場所であった。
何も言わない祐之介を春歌はじっと見つめる、やがて祐之介は口を開いた。
「春歌・・昔言っていたな・・外国に行きたいと」
「はい、もうしていました」
小さいころ、ここでよく二人は出島を出向する外国船を見ていた、そして出港する船を見るたびに春歌は「あの船に乗って外国に行ってみたい・・」と呟いていたのだ、春歌はなぜその時の事とをという表情で祐之介を見つめる。
「今・・出島に一隻の船が入港している・・オランダへ行く船だ・・」
「え・・」
「その船はオランダに着くと新しい商売を求めて他の国へ行く・・日本が知らない国へな」
兄の突然の言葉に戸惑う春歌。
「兄君さま?いったいなんの・・」
「晋作に頼んでな・・その船に乗せてもらえるように手配してもらった・・春歌、お前はその船に乗って外国へ行くんだ」
「・・どういうことですか?」
「明日・・俺は晋作と一緒に決起する・・いずれは日本は戦火に包まれるだろう・・」
「まさか…内乱を・・」
「その通りだ、晋作と一緒に決起する・・志士の身内とわかればお前もただでは済まぬだろ・・だから外国へ逃げろ」
兄の重大発言に言葉を失う春歌、突然の別れの言葉に春歌はただ呆然とするだけであった。
「嫌です!!私も兄君さまと一緒に・・」
「ならん!!!」
祐之介は春歌を強く抱きしめる、その目には大粒の涙がたまっていた。
その涙を見せまいと、祐之介は強く春歌を抱きしめる。
両親を亡くし、二人で暮らす日々の中、祐之介は血の繋がりを忘れ、一人の女性として愛してしまった。彼はその思いを決して表に出そうとはしなかった、ただ春歌が傍にいてくれればそれで幸せだった・・だが、これから始まる内乱に彼女を巻き込みたくは無かった、だから祐之介は幕府の力が及ばない外国へ逃がそうと考えたのだ。
「兄君さま・・」
「春歌・・これは俺からの最後の贈り物だ…受け取ってくれ・・」
「嫌です・・別れなんて・・」
春歌は泣きながら祐之介にすがりつく。
「俺だって・・だが、お前に死んで欲しくないのだ・・」
「命をかける覚悟なら・・」
「命は・・たった一つだ、それを無駄にするな・・」
「…兄君さま・・」
「春歌・・遠き国へ行って冷たい風に当たれ、そして強くなれ・・お前にこの国は狭すぎる」
そして祐之介は春歌の顔を見つめ、そのまま唇を重ねる。
その行為を春歌は何も言わずに受け入れる、そして春歌は悟った・・兄は本気だと、例えここに残るとごねても、無理やり外国船に乗せるだろうと。
「もう二度と生きて会えないだろ・・」
「はい・・」
「次に会うときは・・また別に時代に・・」
「はい・・必ずワタクシは兄君さまと・・」
「俺も・・春歌と・・」
早朝、出島から出港する船に一人の日本人女性の姿があった。その船を遠くから見つめる一人の男、やがて船が見えなくなると男は姿を消した。
そして時は流れ…日本のとある町
「兄君さま、急がないと遅刻ですわ!!」
「わかっている!!行くぞ春歌!!」
「はい!!」
遅刻寸前の学校への道を全力疾走で走る二人の兄妹の姿がそこにあった。
あとがきというか・・ゴメン!!!
えっと・・何かが違うと思った方、笑って許してやってください。
え?ちょっと短いんでない?ジェットコースターな展開でないか?と思った方
ごめんなさい(汗
やっぱいつもと違うSSを書くと調子狂う(言い訳デス
というわけでそのうちにお詫び的なBDSSを書きます、期待しててくださいな。
では!!!!!
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yuuiti53@hotmail.com
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