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ALIVE 
第2話 『どんな時も一人じゃない・・・』

作 雄一さん


思えば・・・鞠絵とこんな生活を送るまでにはさまざまな事があった・・。
今の暮らしをはじめる半年前・・彼女は生きる希望をなくしひどい状態だった・・。


「鞠絵!!!」
俺は病室の彼女を見て驚いた・・。
彼女の顔には生気という物が感じられなく、まるでうつ病者のようになっていた。
生きてるのか死んでるのかわからない・・・大げさだけど・・そんな状態に見えた。
いつもなら俺の姿を見るなりとびっきりの笑顔で迎えてくれるのに・・。
ベットの傍らに置いてある毛糸と編みかけのセーターも全然進んでいない。
彼女は空を見ていた・・・食事にも手をつけていないらしい・・かなりやせ細って見えた。素人から見てもかなりやばい状態だっていうことは一目瞭然だ・・・。
「鞠絵!!大丈夫か?」
彼女の下に駆け寄り、肩をつかむ・・・反応はない・・・俺の心に絶望感がはしる・・。
「鞠絵!!!!!」
「・・・あ・・・兄上様・・」
気がついたようだ・・鞠絵は俺の顔を見ると顔に笑顔をつくる・・・無理やりに作った者だということは一目瞭然だ、何でこうなってしまったんだろう・・。
「来て下さったんですね・・・」
「ああ・・・どうしたんだ・・どこか悪いのか?」
「いいえ・・そんなことは・・・」
話し方にも生気というものが感じられない・・・機械的というか・・・
「こんなにやせ細って・・・」
彼女の手を取る・・・!!冷たい・・・何でこんなに冷たいんだ・・まるで死人の手じゃないか・・。
「鞠絵・・・」
「兄上様・・・私の病気・・治るのでしょうか・・?」
「治る・・・きっと治るよ・・」
「・・・それはいつでしょう・・?」
「いつかはわからない・・・でもきっと・・・」
「・・・私は・・何のために生きてるのでしょうか?」
「・・鞠絵?」
「みなさんに迷惑をかけて・・兄上様を心配させて・・鞠絵は生きてる価値などあるのでしょうか・・」
「・・・・」
「もう・・生きてる意味がわからなくなってきました・・」
「そんな・・どうして・・」
「指も動かなくなって・・セーターも編めない・・発作の回数も多くなって・・・発作のたびに薬を服用・・その繰り返し・・」
「・・・・・・」
「ああ・・いっそうのこと死んでしまいたい・・・」
死ぬ・・何てこというんだ鞠絵・・・この間まで早く病気を治した言っていってたじゃないか・・なんで・・なんで死ぬなんていうんだ・・。どうして・・・どうして・・・・
「兄上様・・・私はもう・・・」
「生きろ・・生きろよ・・どうして・・」
「もう・・疲れました・・・・・」
鞠絵はそういうと再び窓の外を見る・・・鞠絵・・鞠絵・・・。
「生きるのが辛い・・・もう・・・」
「じゃあ・・俺が楽にしてあげるよ・・」
「え・・・」
俺は鞠絵の首に手をかける・・・
「俺がこのまま力を入れれば・・君は楽になれる・・・」
「兄上様・・・」
「死にたいんだろ・・・じゃあ俺が楽にしてやるよ・・・」
「どうして・・」
「こんな鞠絵なんても生みたくない・・俺の知ってる鞠絵は・・」
「や・・やめて・・・兄上様・・こんなこと・・」
「こんなこと?・・君が望んだことじゃないか・・・」
「でも・・う・・うう・・・」
「君を殺して・・俺も死ぬ・・」
手に力を入れていく・・・鞠絵が苦しみ出した・・・。
「う・・あ・・兄・・上様・・」
「もう少しだよ・・・もう少しで・・・楽になれる・・・」
「・・・・う・・う・・・う・・・・・・」
「さあ・・・これで鞠絵は楽になる・・」
「や・・やめ・・うう・・ぐうう・・」
苦しむ鞠絵の表情が俺の心を切り刻む・・・
「う・・ううう・・・鞠絵・・鞠絵・・」
手に力が入らない・・・心が反発してる・・生きて欲しい・・生きて欲しい・・。
俺は鞠絵の首から手を離す・・・本当は殺す気なんてないのに・・何やってるんだ俺。
「兄上様・・・」
「・・・・・死にたいと思ってるなら・・なんで自分で死のうとしないんだ」
「え・・」
「薬を飲まないでいれば・・そのうち死ぬ・・ペーパーナイフで手首を切ったり・・・下を噛み切ればそれで死ねる・・でも・・どうして・・どうして・・今日まで生きてるんだい?」
「・・・・・」
「さっきあんなことをしたけど・・・俺は鞠絵に生きて欲しい・・・生きて欲しいんだ・・」
「兄上様・・・」
「鞠絵・・・俺を独りぼっちにしないでくれよ・・・お父さんとお義母さんが死んで・・家族は君一人なのに・・・」
「・・・・・」
「寂しいよ・・・鞠絵と一緒にいたいよ・・・生きて欲しい・・」
「兄上様・・・」
俺は鞠絵を抱きしめた・・・
「生きる価値がない生き物なんていないよ・・・みんな必死に生きようとしてるんだ」
「・・・・」
「なあ・・俺のために生きてくれないか・・・」
「え・・・」
「俺は・・鞠絵の傍にいる・・・これからもずっと・・・死ぬまで傍にいてあげる・・」
「・・・兄上様・・」
「俺が鞠絵の・・・生きる意味になってあげる・・だから・・生きて・・」
「あ・・・」
「鞠絵・・・感じるかい・・・」
彼女の手を俺の胸に当てる・・・鞠絵の手に俺の体温と心臓の鼓動が伝わっていく。
「はい・・感じます・・兄上様の温もりと・・力強い鼓動が・・・」
「生命って・・凄いんだ・・神様が与えてくれた・・・最高の宝物なんだ」
「・・・兄上様・」
「みんなが平等に持ってる命・・・神様が与えてくれた命・・・これを無駄にしちゃいけない・・」
「・・・・」
「生きてるから喧嘩もできるし、笑うこともできるし・・悩むことも・・苦しむことも・・・・愛し合うこともできる・・全ては生きてるからこそなんだ・・」
「生きる・・・」
「鞠絵は一人じゃない・・俺がいる・・・どんな時でも君はひとりじゃない」
「ああ・・・」
彼女の顔に・・・生気が・・・少しづつだけど戻ってきてる・・。
「鞠絵・・・生きて・・・君が生きてくれるなら・・・俺は何もいらない・・」
「・・・・生きる・・命・・・」
彼女の手を取る・・・冷たい・・でも・・・
「生きていれば・・お互いを暖めあうこともできる・・」
彼女の手を握り暖めていく・・・無駄なことかもしれない・・でもやらずにはいられなかった・・彼女の全てを暖めたい・・彼女の身も心も・・・小さくなった生命の炎も・・・
「たとえこの手が動かなくなっても・・俺が君の手になってあげる・・」
「・・・・・」
「歩けなくなったって・・俺が鞠絵の足になる・・」
「兄上様・・・私・・」
「鞠絵・・生きてくれ・・俺のために・・・・」
「あ・・・兄上様・・・私・・私・・」
彼女の目から涙が流れてくる・・・俺はそれを指で拭ってやる。
・・暖かい・・・涙ってこんなに暖かいっけ・・・
「鞠絵・・さわってごらん・・涙・・こんなに暖かい・・」
「はい・・・」
鞠絵は目元から流れる涙に触れてみる。
「暖かい・・」
「まだ鞠絵は生きれる・・こんなに暖かいんだ・・・」
「はい・・」
「鞠絵・・・気分は?」
「さっきまで死にたいと思ってたのに・・・・なんか心が・・・温かい」
「・・・・よかった・・・」
「兄上様・・生命って・・すばらしいんですね・・」
「ああ・・・」
完全とはいかないが、鞠絵の顔には生気が戻ってきた・・笑顔も・・今まで見た笑顔の中で最高の笑顔だ・・この笑顔を見ていると・・こっちまで元気が出てくる。
「鞠絵・・・俺も君と一緒に戦うよ・・・病気とね・・」
「兄上様・・・」
「生きる道に迷ったら・・俺に言って欲しい・・・どんなときでも一人じゃない・・そうだろ・・」
「はい・・・」
「よし・・・俺、先生呼んでくる・・ちゃんと見てもらわなくちゃ・・な・・」
「はい・・」
その後、先生の診断が終り、鞠絵に適切な処置が施された・・・話によれば今まで無理していた分、病気がかなり侵攻していたらしく後少し遅ければ手遅れになっていたという。そして・・彼女と会えない日が二週間も続いた・・・そして・・ある日、久々に彼女からメールが届いた。
「親愛なる兄上様・・・、あの時は、私を励ましてくれてありがとうございます。あれから発作が少なくなり、順調に回復に向かってると先生が言ってくれました。実は昨日、先生にお願いして妊婦さんの出産に立ち合わせていただきました・・。なかなか生まれないので心配になっていましたが・・・赤ちゃんの泣き声を聞いたとたん・・その心配は霧消しました。そして・・その子を抱かせともらったのです・・・生まれたての赤ちゃんはとても暖かく・・元気がいい子でした。そして心臓も・・激しく・・。本当に生命ってすばらしいんですね。」
どうやら・・・完全に立ち直ったようだ・・・
その次の日、俺は学校を休み鞠絵の元に向かった。どうしても鞠絵に会いたかったからだ・・・。鞠絵に会いたい・・・彼女を抱きしめたい・・彼女の温もりを感じたい。俺はそんな思いを秘めながら電車に飛び乗った。


「あら・・・」
「どうも・・」
鞠絵の病室の前に顔馴染の看護婦さんが立っていた。
「鞠絵ちゃんの・・・今日は学校の・・」
「休みました・・鞠絵・・大丈夫ですか?」
「ええ・・・今検温を済ませたところ」
「そうですか・・」
「お兄さん・・」
「はい・・」
「鞠絵ちゃんを幸せにしてね・・」
「(真っ赤)・・・はい」
俺は病室のドアのノブをそっと回し、中に入る。
鞠絵は・・読書に夢中になっている。
彼女に気がつかれないようにそっと近づき・・・
「鞠絵・・」
「きゃ!!・・あ・・・兄上様」
「元気・・だな・・」
以前とは違い顔に生気が満ち溢れている・・・セーターもかなり完成に近づいている。
よかった・・・もう・・死ぬってことは考えないようだ・・。
「どうして・・・学校・・」
「鞠絵にどうしても会いたくて・・・サボってきた」
「そんな・・」
「元気になった鞠絵を・・どうしても見たかった・・」
「ああ・・ありがとうございます・・兄上様・・」
その後、先生から外出許可をもらい、俺と鞠絵は近くの湖に向かった。
雲ひとつない快晴・・・そして心地よい風が吹いている・・・気持ちいいや・・。
鞠絵の足取りも心なしか軽い、かなり回復してきたようだ。
表情も・・この世の幸せを一人占めしたというほどの笑顔・・・やっぱり鞠絵には笑顔が似合うよ。
「いい天気・・・」
「ああ・・・まるで鞠絵の未来を祝福しているみたいだ・・」
「ええ・・あの・・兄上様・・」
「ん?」
「腕・・組んでいいですか?」
「ああ・・遠慮しないでいいぞ・・」
「はい・・・じゃあ・・」
俺の出した腕に鞠絵は自分の腕を絡ませる、彼女の腕から体温が伝わる・・暖かい・・この前まで冷たかったのに。
「・・・・鞠絵・・・本当によかった・・」
「ご心配・・おかけしました・・」
「もういいよ・・・鞠絵・・君が元気なら・・俺は何も要らない・・」
「・・・」
「どうなんだ・・病気・・」
「先生びっくりしていました・・・こんなに早く治る患者はじめてだって・・」
「へえ・・そうなんだ・・」
「はい・・・もう少しで退院できると・・」
「そうか・・・よかった・・」
「まだ全快とまでには行きませんが・・・家で普通の生活ができるとおっしゃってくれましたので。」
「じゃあ・・一緒に暮らせるのか・・」
「はい・・」
「よかった・・」
しばらく歩き、湖畔に到着する・・・車の騒音もなく、聞こえてくるのは風の音と鳥のさえずり、そして小さなせせらぎが流れる音・・都会では味わえない安らぎを感じることができる。
「これで・・・家族揃って暮らせるのか・・」
「はい・・でも・・」
「?」
「私は・・兄上様の本当の妹ではありません・・」
「そりゃあ・・俺だって知ってるよ・・でも・・鞠絵は俺の妹じゃないか・・俺の大切な・・」
「いいえ・・・私は・・兄上様の本当の家族になりたいのです・・」
「本当の家族・・?」
「私は・・・兄上様が好きです・・・」
「鞠絵・・」
「これからは・・・私を一人の女性としてみてください・・」
「・・・・・・」
本当の家族・・・そうか・・そういうことか・・。
「私は・・・確かに血の繋がりのない妹です・・でも・・妹でなくなれば兄上様の本当の家族になれます・・兄上様・・・答えて・・私を・・一人の女としてみてくれますか?」
彼女の告白を俺はじっと聞いていた・・・俺の答えは・・・決まっていた。
「鞠絵・・・・・何言ってるんだ・・・」
「え・・」
そう・・答えは決まっている・・・あの時・・・鞠絵を励ました時・・俺は言った・・彼女と一緒に病気と闘うと・・・どんな時でも一人じゃないと。
「当たり前のこと・・聞くんじゃいよ・・・・・・」
「あ・・それじゃあ・・」
「鞠絵・・・一緒に暮らそう・・俺が君のことを守る・・」
「ああ・・・兄上様・・・」
「まだ俺たちは若い・・でも・・・俺は待つよ・・鞠絵の病気が全快して俺の隣に立ってくれる時を・・・白いウエディングドレスをまとった鞠絵が俺の隣に立つ時まで・・」
「兄上様・・・・・私・・私・・」
「鞠絵・・俺と・・結婚してくれますか?」
「はい・・喜んで・・・」
俺は鞠絵を抱きしめる・・・もう離さないよ・・・鞠絵・・・
これから・・・一緒に生きていこう・・・これからもずっと・・ずっと・・。


「兄上様、おはようございます」
「おは・・・いいいいい!!!!」
「あ・・兄上様?」
「な・・なんで鞠絵が・・・って・・昨日一緒に寝たんだっけ・・」
「うふふ・・兄上様ったら・・」
「・・・・ごめん・・・」
そうだった・・・一緒に寝ていたんだっけ・・・ああびっくりした・・
「兄上様?」
「あ・・いや・・・鞠絵・・生きてるよな・・」
「はい・・ほら・・」
鞠絵は俺の手を取るとそれを胸に当てる・・・暖かいし・・・心臓の鼓動も感じる。何より鞠絵の手が暖かい・・。
「ね・・」
「本当だ・・・・鞠絵・・」
「あ・・」
鞠絵を抱き寄せ、そのままキスをする・・・
「・・・・兄上様・・・」
「・・・・鞠絵・・・・」
「・・・・・・遅刻・・・でしょうか?」
「へ?」
時計を見る・・・・ああああ!!!!!!!
「遅刻だ!!!急げ鞠絵!!」
「はい!!」
今日も新しい一日が始まる・・・彼女と過ごす一日が・・。


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yuuiti53@hotmail.com
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