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プラスチック・ラブ ‐love note‐
嵐はまた始まる。

作 牙風=姫里さん


「終わったな」 
 と、喜びに打ちひしがれている航。
「終わったわね」
 悲しさで涙する咲耶。
「終わっちゃったわ…」
 悔しげな母。
「終わってしまったな…」 
 父は眉間にしわだった。
 とまあ、色々と言いたい事はあるようだが、その心の内を探ってみるとしよう。
(これで! これでやっと…母さん父さんに茶化されたりなじられたりいじめられたり咲耶に涙目で責められたりウソ泣きではめられたり脅されたり父母の前でラブラブを矯正されたりしないですむっ!)
 彼の中にはこれまで生きてきた中で、いや生きてゆく中でも一番となりえるほどの喜びが駆け巡っていた。それは今の心の声が一息で言った事から分かる。
(お兄様とラブラブできなくなるのね…)
 一方、こちらは号泣寸前の咲耶。いつもならそこで航が無言で抱き締めるところなのだろうが、今の航にそんな事を考える余裕はない。
 …そしてその横で一人の女性が心のうちでこう叫んでいた。
(もっと航で遊べばよかった…!)
 彼女は逆に悔しさで泣きそうである。これが今度三児の母となる女性の言葉なのかは疑問だ。
(あ゛――っ! 口惜しいわっ!)
 これを聞いたらまた航が大騒ぎするだろう。まあ、今の航が聞いたら「もうそんな事されないんだ」と嬉しさに号泣するだろうが。
 そして…もう一人、
(何故、オレがいい役を演じて終わるんだ! 第二回人気投票はどうした! いい役を演じたんだから人気が出るに決まってるのに!!)
 と、全然違う論点で苛立つ彼は置いておく事にしよう。
「あっ! あっちで祝いがあるってよ」
 こちらの世界に戻ってきた航が指差す先に用意完了済みのパーティー会場があった。シャンパンやふんだんの料理が振舞われている。
「…一体誰がいつの間に…?」
 いつもの調子に戻った航が呆れ顔で呟く。
「…酒…?」
「…お酒…」
「酒…だと?」
 全員がそれに気が付いた。

 キケン キケン キケン……

 その場全体に無音のアラームが鳴り響く。
 三人の視線が交錯した。
「咲耶、飲むなよ」
 航のギロリと視線が咲耶を仕留めた。
「え? ダメなの?」
 すでに手を伸ばしかけていた咲耶を一家全員で止める。
「絶対飲むなよ」
「お子様はジュースでも飲みなさい」
「飲酒禁止」
 怒涛の言葉の羅列が咲耶に押し寄せて、咲耶は渋々ワイングラスを置いた。
 と、急に航は肩を叩かれた。振り向くと一枚の紙を手渡される。
「あれ? えっと……綾…ちゃん?」
 手渡したのは綾だった。何度か面識がある程度だが、一応顔は覚えている。
「お久しぶりです。お兄さん」
 綾は軽くお辞儀する。
「綾!」
 酒を取り上げられた咲耶は友人の登場にはしゃぐ。
「フフッ…咲耶は変わらないみたいね」
 クスリと笑われる。咲耶はそれに対して弁解を始めた。
「変わらないって、毎日会ってるじゃない」
「…読者様から『咲耶は高校へ行っていないんですか?』って質問がいっぱい来たらしいわよ」
「ウソ!?」
 たわいもない会話に両親が参入する。
「確かに『彼女の気持ち×彼の気持ち=×××!』以来高校に言ってるところは見てないな…」
「そ、それは冬休みだったり、土日だったりしただけよ!」
「まるで主婦みたいな行動しかしてないものね」
 この母の言葉はかなりのインパクトがあった。
「しゅっ、主婦…」
 赤くなって少し俯き、指をもてあそぶ。
「…意外な反応ね」
 きょとんと咲耶を見る。
「確かにそうですね。『きゃー! 分かってるわねっ、お母様!』ってくるかと思ったんですけど…」
 綾の言葉は正確に的を得ていた。
「こっ、言葉に出されると…ちょっと…照れる…」
 赤くなる咲耶の額にコツリと一撃加えると、航は手紙を差し出した。
「んで、これは?」
「プラ・ラブ製作委員会にお手紙らしいです。差出人の名前はないけど読むべきでしょう?」
 プラ・ラブ製作委員会とはもちろんプラ・ラブキャストの事である。
「オレ宛…?」
 大体の言葉はメールや電話で伝えられてしまう現在では手紙はめずらしい。
「爆弾入りだったり…しないよね?」
 その言葉にピクリとその場にいた全員が反応した。両親や咲耶までが視線を航に集める。
「さあ? 流石にそれはないんじゃないですか?」
 と言いつつ、二歩ほど後ろに下がる。
「…何故下がる?」
「気のせいだろう」
 と、父が即答。その声は全く説得力がなかった。何故なら下がるどころか倒したテーブルの影からその場を窺っているからだ。
「ってか、こういうのは絶対殺しても死にそうにない母さんがやるべきだろ!」
 航の叫びに父親が寄り大きな声を上げる。
「身重の母親にそんな危ない事させるつもりか!」
「オレならいいのかよ!!」
 正論のはずなのだが、彼らには通じない。それどころかこんな答えが返って来る有様である。
「お前だったら爆発したってギャグで終わるだろうが!」
「ああ?」
 苛立った声を上げた。
「はい、わかったらちゃっちゃと開け」
 そう言って、テープルの影に隠れる。入れ替わりに咲耶がひょっこり顔を出す。
「あ、咲耶。お前も適任は―――」
「お兄様なら大丈夫よ」
 言い切る前に軽く咲耶の声に遮られた。
「…」
 彼に救いと言う言葉はないらしい。彼女はそれだけ呟くと、再びテーブルの影に身を隠してしまった。先ほどの父の事といい、もはや人形劇のようである。
 綾は綾で「それではさようなら」と言う言葉と共に駆け足で帰ってしまった。
「…はいはい! わかりましたよ!!」
 航はもはやヤケになったらしく、躊躇なく手紙を開いた。
 航以外のその場にいた人物が次に起こる惨劇を予想して堅く目を瞑った。
「…」
「…」
「…」
 しかし何も起きない。
「ま、まあ、このプラ・ラブキャストに爆弾メールを送ってくるような人がいるわけないわね」
 どもりながら母がテーブルの影からひょっこりと姿を見せる。それに咲耶と父も続いた。
「お兄様、手紙の内容…って、何してるの?」
 確かにその情景は「何してるの?」に相当するだろう。何度も目をこすり、額にしわを寄せて手紙を覗き込み続けている。
「そんな衝撃的な内容だったのか? 見せてみろ」
「…」
 航は無言で手紙を綺麗に閉じ、封筒にしまう。何もなかったかのように折り目を戻し、止めてあったセロハンテープを張り直す。
「え? な、何してるの?」
 二度目の「何してるの?」は芸がないが、確かにそれしか言いようがない。
「…なかった事にする」
「は?」
 確かに航にしては珍しく、かなり唐突な言葉だった。まるで咲耶のお株をかったかのようである。
「オレは何も見なかった、何も受け取らなかった」
「え? お、お兄様? 何言ってるの?」
 咲耶の言葉が正解である。
「オレは何も見なかった! こんな手紙なんか知らん!」
 今度は窓の外へと投げ捨てた。
「ああ! まだ読んでないのに!」
 父の手の先で手紙が飛んでいった。風に乗って遠くの彼方へと飛んでゆく。
「ちょっ、何してるのよ! 航!」
「なかった事にする!」
 航はいまだそんな言葉を叫んでいた。
「お兄様、ちゃんと説明…」
「なかった事にするんだぁ――!」
 そう叫んで航は走って逃げた。
「ちょっと? お兄様!?」
 咲耶の静止も聞かずにその場から姿を消してしまった。
「お兄様が…壊れた…」
「何…だったんだ?」
「…内容が気になる…」
 その後、航に相手にされなかった咲耶がヤケ酒を煽って色々と大変だった事を追記しておく。




 風に乗った手紙がある少女の頭に当たった。
「? 何これ?」
 宛先はない。差出人の名前以前に、消印すらない。ただ真っ白なだけの封筒だ。
 興味に惹かれて開けてみる。それに宛先がない以上、中に何か書いてあるのかもしれない。

 何か物凄い「やめるなコール」が来たからもうちょっと続くよ。
 題名はプラスチック・ラブ‐love note-に変わるが、内容は変わらんと思う。
 みんな、頑張ってね。 

 と、書かれていた。
「オレは何も見なかった――!」
 その横でそう叫んだ青年がいた。
(この人のかな…?)
 少女は風で飛ばされないように上に小石を置いて、再び歩き出した。

 …この後、真実を知った三人が大爆発したのは言うまでもない。 

 



あとがき

…始まりました、プラスチック・ラブ‐love note-!!
作者の意見を簡単に簡潔に端的に言えば、皆さんは姫里に騙されすぎです。(ぉ
絶対来ないと思ったら、物凄い量の続けろコールが…
むしろ『命令』に近いのまである始末…


…とりあえず、プララブノートは外伝集で出すので、その辺で勘弁して…下さい。
あの本編の続きは………続きは…(以下省略っ!)
The odd wingsは…(以下省略っ!!)

…それでは。

注:第二回人気投票は行っていません。

4/29 Himesato


牙風=姫里さんへの感想はこちら
ga_to_dabun@hotmail.com
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